【感想・ネタバレ】評伝・河野裕子:たつぷりと真水を抱きてのレビュー

あらすじ

平成の与謝野晶子とも譬えられ、恋や家族を高らかに歌い上げた歌人が他界したのは2010年8月。だが没後「河野裕子短歌賞」が創設されるなど、その評価はますます高まっている。
夫の永田和宏や娘の永田紅などによって、家族の肖像は多く明らかになっているが、今回その息子が初めて母の生涯を丹念に描いた。
誕生から幼少期を過ごした熊本時代、精神を病みながら作歌に目覚めた青春時代、永田和宏との出会いと結婚、多くの引っ越しを重ねながら子育てに勤しみ、短歌にも磨きがかかった時代、アメリカでの生活や晩年の闘病、そして最期……。
これまで未発表だった日記や、関係者への取材を通して明らかになる歌人の日々から、著者は新たな作家像を浮かび上がらせる。精神を病みながらも、同姓だった無二の親友と築いた文学的信頼関係。しかも彼女の自死。また最期を看取りながら病床で一首一首を口述筆記した様子は、読む者を深い感動へと導いていく。
対象への距離感と親子の親密感とがみごとに融合した、評伝文学の傑作である。

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Posted by ブクログ

著者が生まれる前のご両親の話の時は、少し堅苦しくこ慣れない文章を読まされている感じが拭えなかったけれど、家族としての母の話となってきたところから、俄然面白くなってきた。子供の目を通して母としての河野裕子の人間像が強烈に浮かび上がってきた。そして最期はやはり涙が止まらなかった。

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2024年07月15日

Posted by ブクログ

読み進めるうちに、確かにこれは評伝というタイトルが正しい、と思うようになった。
有名な大学教授や評論家などではなく、息子さんに評伝を書いてもらえるなんて、河野さんはなんて幸せな人だろう。おそらく天国ですごく喜んでおられるように思う。
息子さんにしか書けなかった、河野さんの素顔。妻として、母として、精一杯生きた一人の歌人。惜しみない愛を与え、そして愛された、素晴らしい人生を全うされたと感じた。

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2016年03月11日

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