【感想・ネタバレ】忘れられた日本人のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月19日

忘れられているが、忘れてはいけない日本人の姿。戦前から戦後まもなく日本全国の民間伝承を調査した民族学の名著。
長崎の対馬を先祖に持つ関係で読んでみました。初めの章にこの地方のしきたりや伝承が載っていました。
この本に登場する日本人は、司馬遼太郎さんが、理想としているような鎌倉武士の起源を原形とする姿...続きを読むではないかと思い浮かびました。
特に宮本常一の祖父の宮本市五郎の話は胸を打つ。…仕事(百姓)を終えると神様、仏様を拝んでねた。とにかくよくつづくものだと思われるほど働いたのである。しかし、そういう生活に不平も持たず疑問も持たず、一日一日を無事にすごされることを感謝していた。市五郎の楽しみは仕事をしているときに歌をうたうことであった…
この祖父と幼期期に一緒に寝て、おびただしい数の昔話や伝承を聞いて育った宮本さんが、大人になり古老から多くの伝承を集めることを仕事にしたのも頷けます。

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Posted by ブクログ 2023年08月14日

・面白い!
・西日本が記述の中心であることが、なんとも嬉しい。
・もとは「年寄たち」という総題が想定されていたのだとか……「忘れられた日本人」は同じ意味だが、より大上段に構えた表現であって、もとの素朴な想定のほうが内容にフィットしている。
・寄合とか地域会とかめんどくせぇと肌で嫌悪するシティボーイな...続きを読むので、興味を持ったのは多くの人と同じく「土佐源氏」が、結構作者による創作なのだという事情を聴いてから。
・が、むしろ冒頭の「対馬にて」「村の寄りあい」あたりで、記述内容と、地の文の文体と、差し挟まれる聞き取り引用会話文の面白さが、「女の世間」を経て「土佐源氏」で大爆発する、という構成の妙に強烈に引き込まれた。
・その頂点が、148p「(略)つい手がふれて、わしが手をにぎったらふりはなしもしなかった。/秋じゃったのう。/わしはどうしてもその嫁さんとねてみとうなって、(略)」。
・「人のぬくみ」を思い出す「私の祖父」や、「非農民の粋」を語る「世間師」、そして貴重な取材源を疎かにしない「文字をもつ伝承者」が後半にくる、やはり構成の妙味。
・隙のない連作短編集の構成だ。
・奥さんをないがしろにして「助手」を伴って取材旅行に出ていた自身の「いろざんげ」を、「土佐源氏」に代弁させたのだ、という読み解きも、実に文学的でぐっとくる。
・ちくま日本文学022の文庫解説では石牟礼道子が解説を寄せているのだとか。確かに、石牟礼道子、森崎和江、上野英信、谷川雁らサークル村の活動と、近接する研究だ、とは思う。が、敢えて露悪的に言えば、根本に左翼思想を置いて、日本の原郷を目的として探る、という活動と、宮本常一の活動は、因果が逆なのだと感じた。宮本の左右政治思想は知らない、が、この本を読むと、思想より人への興味が先行しているように思えるのだ。
・また、被差別部落に生まれ落ちたことを根拠に文筆活動を組み立てんとする中上健次に対して、「中上健次の同和理解は暗くて浅い、私の理解ではもっと明るくて深いものだ」と言ったという。勝手な推測だが、路地出身とはいえボンボンのインテリに過ぎなかった中上の近代性を、むしろ前近代性から批判し得る見聞をたくさん仕入れている、ということなのだろう。「山に生きる人々」にて、ある種の作家(三角寛とか?)のサンカ幻想を意に介さない記述があるらしいが、うーんたとえば吉本隆明に「どういうことですか」と質問を繰り返した岸田秀のごとき、カラッとした鷹揚さが感じられるのだ。
・左翼ー日本探求という点では、宮崎駿も同じ文脈に入れるべき。文芸や表現が、左翼的心情を出発点にしたりモチベーションの源にしたりするのはありうべきことだが、主張の道具に、作品や研究が使われてしまう可能性もあるのだな、とここ数年の石牟礼ー森崎読書で知った。いやむしろ石牟礼ー森崎は、谷川ー上野のその傾向に抗しているのかもしれない……今のところは想像するばかり。そこに思春期に熱中した中上や大江も加わってきたり、いずれ読みたい柳田国男や折口信夫や南方熊楠もきっと関わってくるんだろうと想像されるが、何かしらのストッパーとして、宮本常一を憶えておきたい。



柳田国男・渋沢敬三の指導下に,生涯旅する人として,日本各地の民間伝承を克明に調査した著者(一九〇七―八一)が,文字を持つ人々の作る歴史から忘れ去られた日本人の暮しを掘り起し,「民話」を生み出し伝承する共同体の有様を愛情深く描きだす.「土佐源氏」「女の世間」等十三篇からなる宮本民俗学の代表作. (解説 網野善彦)

目次

凡例

対馬にて
村の寄りあい
名倉談義
子供をさがす
女の世間
土佐源氏
土佐寺川夜話
梶田富五郎翁
私の祖父
世間師(一)
世間師(二)
文字をもつ伝承者(一)
文字をもつ伝承者(二)

あとがき

解説(網野善彦)
注(田村善次郎)

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Posted by ブクログ 2023年07月07日

「この学問は私のようなものを勇気づけます。自分らの生活を卑下しなくてもいいことを教えてくれるのですから」

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Posted by ブクログ 2023年03月13日

東京中心・今の時代を最善と考える傾向のある私にとって、民俗学はその意義がよくわからない学問であった。しかし、この本を読むと、各地方特有の生活の合理性、世間的には有名でない人がそれぞれの立場で懸命に生きてきたことが追体験でき、民俗学の意義を少し理解できたと思う。
また、西洋の法を継受し作り上げられた現...続きを読む代の法体系ではうまく解決できない事象について、紛争解決のためのヒントが得られそうな本でもある。

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Posted by ブクログ 2022年11月05日

いまでは通信技術などが発達し、電話ひとつあれば離島を含む日本の隅々まで容易につながることができる。地方の誰かに話を聞きたければ、自分のいる場所から電話の一本入れたらすむ。だが本書の時代は電話などない。筆者はそのような環境のなかでこの物語を自らの足でかき集めたのだ。当時は道路網も十分ではなかっただろう...続きを読む。彼の行くような地方では尚更だ。まずその点に感銘をうける。
 本作のいえば「土佐源氏」である。面白さはいうまでもない。筆者が取り上げなければこの物語は世界のどこかの砂粒のように一生誰かの心に留まることのなかっただろうと思う。しかしながら、土佐源氏の物語には少し引っかかる点がいくつかある。内容そのものを批判する訳では全くないが、まずここまでのことをこれほど詳細に覚えておくことがはたして可能なのかという点。録音技術は当然ないし、筆者がメモの達人だったとしても土佐源氏の話を一言一句記録できるものだろうかということは疑問に思う。また雰囲気がとても小説のようで、創作のように見えないこともなかった。このような点で本作が現実にあったのかという点を疑問に思う瞬間があった。
 といっても、本書に対して言えることは完全に一読の価値がある本だということしかない。この本の価値に比べれば、土佐源氏の物語が本当か本当でないかは全く問題ではない。本書に登場する人々とその暮らしぶりは、いまとなっては失われた日本の景色を私たちに教えてくれる。このタイトルの通り私たちは彼らを「忘れていたこと」を教えられるのだ。
これからもたまに読み返して自分が生まれる前の日本に想いを馳せたいと思った。
 

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Posted by ブクログ 2022年06月12日

書店で手に取るまで、恥ずかしながらこの本のことを知りませんでした。不朽の名著!岩波文庫70刷です! 司馬遼太郎や近代日本史の本を読んで、戦前の日本がわっかたように思っていたことが恥ずかしい。
古老のひとつ一つの話が、短編小説のようでもあります。著者の宮本常一氏が只者ではないことがすぐにわかります。

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Posted by ブクログ 2021年08月17日

世に名を残した偉人だけでなく、一生懸命生きた普通の人達のおかげで今の豊かな暮らしがある。そのことが、地道な取材を方言を交えた臨場感溢れる描写で描かれていて、白黒の昔の映像が鮮やかに蘇るような感覚になった。なんとなく知識としてはあったけど、現実に落とし込むとこういう感じか!とか、えっそうだったの!!と...続きを読むいう事実までが生き生きと見えてくる。
『土佐源氏』については映画や小説のような読みごたえがあって印象的

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年04月18日

辺境の地で黙々と生きる日本人の知恵。
村では、寄合制度が形成され、そこでは表面的には村の取り決めや自治が行われていたが、本質的には村の人々との知識の共有がメインだった。
今から120.130年前は、読み書きができない人の方が多く、読み書きができるひとの役割が非常に大きかった。そのような人々は、正確に...続きを読む村で起きていることを記録し、伝承し、のちの世代を発展させることを目的としていた。今の時代で考えてみると、文字は溢れんばかりに存在していて、その存在意義を考える暇もない。のちの時代へと伝えていくという文字の一面を考えてみると、もう少し責任を持たないといけないかもしれない。
今、日本にある村は絶滅しつつあるが、昔はそのコミュニティで人々が生活を営み、生きた知識を繋いで行ったという事実をこれからの時代にも伝えていかなければならない。

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Posted by ブクログ 2021年02月11日

人々がまだ世界とつながっていなかった頃のエピソード

日本各地における特有の文化、風習などが生き生きと書き留められている良書

人々が混ざらないことによって産まれた凝縮された営みはとても豊かで、健気で、セクシャルだったりする。

一言でいうと「おおらか」といった感じか。

ものすごい勢いで変わってい...続きを読むく世の中で、少し立ち止まって読んでみたい本。

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Posted by ブクログ 2019年09月20日

幕末から明治にかけての古老のお話し。貨幣経済が浸透したなかにも、村落共同体のしきたりや明らかな身分差など中世的、封建的な匂いを感じる話しが多い。文明開化を中心とした教科書的な歴史との同時代に、パラレルに存在した民俗学的な景色である。
近代の価値観では会議は結論が大事であり、性は秘匿し慎むものと相場が...続きを読む決まっている。しかし、対馬の会議はプロセスに重きを置くため結論がでるまで何日も続き、土佐における性の交わりは単調な暮らしにおける最も身近な娯楽である。
私が手にとったのは61刷である。岩波文庫のなかでも人気の一冊であることがわかるが、その理由は近現代に欠けたものに想いをはせるノスタルジックな感覚だけでないと思う。冷静になって自省したとき、曽祖父母の時代にまであった感性がどこか自分のなかにも息づいている直感を残すからであろう。

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Posted by ブクログ 2024年04月21日

何度も読み直したくなる一流のドキュメンタリー
前半は文字を読み書きできない老人たちを語り部とした、村における風俗史といっても差し支えない内容。口語調であるが故に容易に情景が浮かび上がります。中盤は氏の祖父の歴史、世間師、大工といった村と外部をつないだ人々の話から、いかに外部と交流することで変化してい...続きを読むったか、が描かれる。
終盤は村におけるインテリ農民による記録から村の隆盛の過程を紐解いていく。。

それぞれが非常に面白く、想像力が掻き立てられます。

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Posted by ブクログ 2024年03月20日

石鎚山は天狗の巣で、その天狗が時々山をわたりあるく事があった。風もないのに木々の梢が大風の吹いているようにざわめくのである。また夜半に山がさけるような大きな音がしたり、木のたおれりするがあった。これを天狗の倒し木と言った。さて夜が明けて見ると何のこともないのである。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月31日

もともと為政者の歴史より庶民の歴史に興味があるので面白く読めた。宮本常一の最高傑作と言われる本作だが、雑誌掲載のものをまとめた作品だからなせいか、一つの研究成果を起承転結でまとめた研究書ではなく、長年聞き書きしてきたトピックをオムニバス的にまとめたものだったことがわかった。
昭和の初めごろの老人とい...続きを読むうと幕末明治大正昭和と激動の時代を生きてきた人々。よくぞこの時期に聞き書きをして記録を残してくれたと感謝したい。
私たちが教科書で知っている長州征伐や西南戦争の時の話も田舎ではどう見聞きされていたのかが、よく知ることができた。
また直接慶喜公が大阪から船で江戸へ落ちのびる時の舟渡をした古老の話などもあった。
昔は今より性に関しておおらかで結婚前の夜這いはどの地域でもあり、未婚同士ではない場合もあったようだ。
車が普及する前は物流は主に馬や海川に頼っていたので、職業として博労の仕事に就いている人もおおかったようだ。
職業の変遷も伺える。
旅芸人は旅先で芸さえ披露できれば、宿代や船賃は無料でできたということも初めて知った。
昔は今より気安く世間を知るために旅もしていたらしい。
ともかく、庶民は常に為政者から抑圧され苦しい生活を強いられていたというステレオタイプなイメージが払しょくされた。
また、昭和初年代では60歳をすぎると隠居するのだが、隠居しても暇を持て余すのではなく、村社会での役割があったことを知り、今のシニア層の人の生き方のヒントにもなりそうに思えた。
今なら宮本常一はどんな聞き書きをするのだろうか。
とくに都市での聞き書きに興味があるのだが。
満足度★★★★+0.5

忘れられた日本人 (岩波文庫)
宮本 常一(著)
目次
凡  例
対馬にて
村の寄りあい
名倉談義
子供をさがす
女の世間
土佐源氏
土佐寺川夜話
梶田富五郎翁
私の祖父
世間師 ㈠
世間師 ㈡
文字をもつ伝承者 ㈠
文字をもつ伝承者 ㈡
あとがき
解  説(網野善彦)
注(田村善次郎)

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Posted by ブクログ 2023年07月31日

民俗学の巨人・宮本常一の代表作。方言が心地よく、今でも通読に耐える名文。

「名倉談義」や「村の寄りあい」のように、聴き書きに宮本氏の解釈がバランス良く織り交ぜられた話も勉強になるが、個人的なサビは何と言っても「土佐源氏」。老人の紡ぐ言葉はあまりに美しく、一つの短編小説として完成されている。

総じ...続きを読むて学問的な分析は少なく、知識を吸収するというよりはただ読んで味わう本という感じがした。
宮本氏の他の著作も読みたくなるというほどではないが、どれか一冊読むならまずこれだろう。とにかく「土佐源氏」だけでも一読されたい。

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Posted by ブクログ 2023年01月25日

江戸末期から昭和初期くらいのかつての日本人の暮らしが書かれている。寄り合い、村の意思決定、女性の役割、娯楽としての歌や踊りや性など、そもそも人の暮らしとはこうだろうなと思えて、視野が広がった感じ。あるがままに生きることが良いことだと感じる。

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Posted by ブクログ 2022年10月05日

民俗学者、宮本常一の代表作。
まるで小説?と勘違いするほどの描写の連続で、現実に日本でこんな生活が行われていたのかと驚くはず。
しかもほんの100年前、すぐそこにあったはずの20世紀で。
100年前の日本人と比べて私たちは進歩・発展しているのだろうか?と思う。
こんなにもできないことが増えた我々を、...続きを読む祖父よりも少し上の代の方々が生きていれば笑うだろうか?
それとも便利さを羨ましがるだろうか?

あとがきには自叙伝(民俗学の結び)が引用されている。

「進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めていくことこそ、われわれに課されているもっとも重要な課題ではないかと思う」

と。
単純な昔の面白話では終われない、そういう重大な事実を示唆する一冊である。

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Posted by ブクログ 2022年07月17日

江戸や明治の頃の田舎(主に四国や九州)の庶民の暮らしというと、貧しく虐げられたものというステレオタイプなイメージしか持っていなかった。
そこに住む生き字引のような翁や婆のいきいきとした実話はどれも興味深い。

■女の世間
世間を知るために、女性でも山口から四国まで旅をする慣わしがあった。下半身に下...続きを読む着をつけずに歌を歌いながら田植えをして観音様と呼ばれた農婦の話。下世話でおもしろい。

■土佐源氏
盲目で80歳過ぎのヤクザな翁の話。ばくろうというちょっと悪い牛をいい牛にとりかえる仕事をして、社会コミュニティに属せず、貧しくもフリーな立場だった。あちこちの女性に親切にして手を出した話など、下衆すぎておもしろい。

■梶田富五郎翁
対馬を開拓した翁が語る密かに朝鮮までにんじんを買い付けに行った者の話、船幽霊の話、風の話、大型魚の釣りの話。おもしろい。

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Posted by ブクログ 2022年06月23日

今の私たちの生活からは、想像できない明治から昭和初期のごく一般的な片田舎に住む庶民の人生、日常がテーマの本書。こういう何者でもない人の何でもないことがおもしろかったりする。正に人の数だけドラマがある。

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Posted by ブクログ 2021年09月12日

1955年あたりから、村々の年寄りから、聞き集めた伝承をまとめたものです。幕末から、戦後まぎわあたりの話で、まさに忘れられた日本人の姿が、老人たちの口から語られています。

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Posted by ブクログ 2021年07月31日

あとがきより
「一つの時代にあっても、地域によっていろいろの差があり、それをまた先進と後進という形で簡単に割り切ってはいけないのではなかろうか。」
「私の一ばん知りたいことは今日の文化をきずきあげて来た生産者のエネルギーというものが、どういう人間関係や環境の中から生れ出て来たかということである。」

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Posted by ブクログ 2021年06月20日

こういう民俗学的な話はやはり「エロばなし」が面白い。ある地方では男女共に誰と寝ても良かった!めちゃオープン。

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Posted by ブクログ 2021年06月13日

ほんの100年前の日本人の暮らしが垣間見れる、とても貴重な本だった。

改めて現代の移り変わりの速さに愕然とする。

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Posted by ブクログ 2021年01月31日

難しい…
文字の読める人と読めない人とで伝承に差が出てくるって所はさすが、民俗学の権威だなと思った
話が本物であろうがなかろうが、その話から文化を見出すだけでなく、地域、日本とファイリングすることによって見えてくるものもある
それは全国を渡り歩いた宮本常一だからこそのことだし、具体にとらわれていない...続きを読むところにすごさがあると思う

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Posted by ブクログ 2021年01月30日

民俗学者である宮本常一の著作。民俗学に触れるのは初めてだったが、本書で江戸時代末期から昭和にかけての地方での生活を知ることができた。当然ではあるが自分の生きている時代との違いが大きく衝撃を受けた。現在の方が桁違いに便利で豊かではあるが、精神面では昔と比べてむしろ乏しくなっているんじゃないかと感じたし...続きを読む、今の時代の生き方を考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2020年07月22日

すべてを手放しに称賛することはできないけど、善悪で判断しない、法律で線引きしない世界には、現代にはない豊かさがあると思った。教育や開墾が何をもたらし、何を失くしてしまったのか、考えるきっかけになる本。

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Posted by ブクログ 2020年07月12日

昔の日本人の庶民の生活を垣間見る事が出来る。昔の人は真面目で慎ましくしているイメージがあったがひっくり返された。特に性に関するあけっぴろげなところはイメージが全然違った。貧しくも幸せに足る事を知っていた日本人。時間も緩やかであったろうと思う。現代のギスギスとした時間に追われる生活は人間らしい生き方な...続きを読むのか。考えさせられる。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

著者が、日本各地の村を訪ねて、そこでの見聞をまとめた説話集のようなもの。こういうのを読むと、民俗学というのは面白いものだと思う。
今から百年ぐらいしか経っていない時代のだけれど、現代から考えてみると随分と違っているもので、その、開放性と閉鎖性を両方持った「村」という共同体の極端さと奇妙さは、驚くこと...続きを読むばかりだった。
日本という国について、とても愛着が深まったし、面白い国だとも思った。

この本が書かれた時代よりも昔になってしまうと、「日本むかしばなし」のように、現実とは一線を画した別の世界の話しになってしまうし、それよりも後の、戦後の時代になれば日本中で一気に画一化が進んだのであろうから、この、明治の終わりぐらいの時期が一番「日本らしい」村の風景が残っていた時なんじゃないかという気がする。

特に面白いと思ったのは、「土佐源氏」という話しで、橋の下に小屋をかけて住む盲目の乞食に聞いた回顧録は、その人生がそのままとても素朴な物語になっていて、小説以上の味わい深さがあった。この話しなどは、一人の人間の中に人知られず眠っていた数々の体験が、宮本常一氏という聞き手を得て、見事な物語として引き出されたもので、その芸術的な手腕に惚れ惚れとする。

著者が伝え聞いた話しのまとめ方も、話し手の個性や愛嬌といった雰囲気までが表現されているようで、とても上手い。
こういう、そのままにしておけば、一人の記憶の中に閉じ込められたまま消えてなくなってしまうはずだった話しが、このようにして後世にも読める形で残されているというのは、ものすごく貴重なことだと思う。

こういう世話役は人の行為を単に善悪のみでみるのではなく、人間性の上にたち、人間と人間との関係を大切に見ていく者でなければならない。そしてそういう役割はすでに家督を子供にゆずって第一線から退き、隠居の身になって、世間的な責任をおわされることのなくなった老人にして初めて可能なことであった。(p.42)

ほんにかわりましたのう。夜ばいもこの頃はうわさもきかん。はァ、わしら若い時はええ娘があるときいたらどこまでもいきましたのう。はァ、女と仲ようなるのは何でもない事で、通りあわせて娘に声をかけて、冗談の二つ三つも言うて、相手がうけ答えをすれば気のある証拠で、夜になれば押かけていけばよい。闇の中で娘と男を見わけるのは何でもない事で、男は坊主頭だが女はびんをつけて髪をゆうている。匂をかげば女はすぐわかります。そりゃア時に悲劇というようなものもおこりますよの、しかしそれは昔も今もかわりのない事で・・。(p.79)

しかし、わしはあんたのような物好きにあうのははじめてじゃ、八十にもなってのう、八十じじいの話をききたいというてやって来る人にあうとは思わだった。しかしのう、わしは八十年何にもしておらん。人をだますことと、おなごをかまう事ですぎてしまうた。(p.133)

秋のいそがしい時でのう、小松の間から見える谷の田の方では、みな稲刈りにいそがしそうにしておる。そういうときにわしはよその嫁さんをぬすもうとしておる。何ともいえん気持ちじゃった。このままにげて帰ろうかとも思ったが、やっぱりまたれてのう。
もう小半ときも待ったろうか。夕方じゃった。夕日が小松を通してさしておったが、下の方から嫁さんがあがって来る。絣の着物を着ていて、前掛けで手をふきふき、ゆっくりと上がって来なさるのよ。わしは上からじっと見ておった。なんぼか決心の要ったことじゃろう。わしはほんとにすまん事をする、と思うたが・・。(p.148)

はァ、おもしろいこともかなしいこともえっとありましたわい。しかし能も何もない人間じゃけに、おもしろいということも漁のおもしろみぐらいのもの、かなしみというても、家内に不幸のあったとき位で、まァばァさんと五十年も一緒にくらせたのは何よりのしあわせでごいした。
だいぶはなしましたのう。一ぷくしましょうかい。(p.192)

公職を退いてからは全く晴耕雨読の生活に入り、いつも懐に手帳を入れていて、田を耕しているときも、気がつく事があると田を打つ手をやめて畔に出て腰をおろし、これを書きとめた。
「鉛筆をなめましてな、あれはああだった、これはこうだったと、考えながら、土を見、空を見あげて書いておりますと、空にぽっかり白い雲なんどが浮かんでおりまして、今度は一句つくりたくなる」というような日々をおくった。(p.274)

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Posted by ブクログ 2023年12月01日

名もない人々の日常を聞き書き。
人びとの生きた記録が、文学作品のような読み応えになる。
土佐源氏は読んでしばらく噛み締めちゃった。それから94pからの、和さんのエピソードがとても好き。

他の方も感想に書いてるけど、昔の日本人の意識って「女の子は慎み深く」「嫁いり前なんだから不用意に男の人とお話しし...続きを読むちゃいけません」みたいなものだと思ってたけど、思った以上に強くておおらか(?)で意外だった。思えば民謡の歌詞とか聴くとわりと大らかで下ネタも満載だから、まあ、そういうものなのか。この辺のことは地域や時代、社会的立場も関係するのかな。

聞き書きの良さを感じたものの、同時に思うのは、どの程度、開示されるのだろうか、という事。姑のイビリはそんなに無いという話のところでふと思ったんだけど、他所者にどの程度、自分たちの事情を話してたんだろう。
嫁イビリがそんなに発生しない理由は読み進めるとちゃんと説明されてるので、まあ、そうかもね、と思うものの。レアケースな割には世に嫁イビリの話や唄があるのはなんでなんだろう。

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Posted by ブクログ 2023年06月06日

庶民の生活を描き出すことで、今日の文化を築き上げてきた生産者のエネルギーはどういう人間関係や環境の中から生まれて出てきたのかを探る。『忘れられた日本人』1960

✳︎性に奔放な庶民の女性たち。cf. ルイス・フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』1585

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Posted by ブクログ 2022年09月16日

宮本常一という民俗学者が日本全国を旅しながら、その土地のお年寄りから聴いた話をまとめたもの。

明治、大正を生き抜いたある意味自分の祖父母の若い時代はちゃんとしっかり若者で、自分の足で様々な所に旅したり、出稼ぎに出たり、ずっとアクティブだったんだと実感。

性に関しても現代よりもずっと奔放な感じでそ...続きを読むんなエロ話が田植え中の奥様たちがとても健康的に語る姿にクスッと笑ってしまいました^_^

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