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Posted by ブクログ
面白かったです。
薬丸岳さんの作品は3作目。『友罪』『Aではない君と』は少年犯罪についての話でした。今作は過去に犯した罪についての話でした。
顔に醜い痣を持って生まれ、家族にも恵まれず、社会を恨み罪を重ねた男。新しい戸籍を手に入れて生まれ変わったように幸せに暮らしていたが、ある日突然過去に犯した罪が自分の幸せを壊し始める。。。
被害者からすれば、刑期を終えたからといって加害者が今は幸せに暮らしていると知ったら心穏やかではいられないだろう。
罪を償うということはどういうことなのか。犯した罪は永遠に赦されることはないのか。。贖罪とは、更生とは。色々なことを考えさせられた。
難しい表現は少なく、ストーリー展開もうまいので読みやすい。
Posted by ブクログ
久々の薬丸岳さん。やっぱり面白くて(面白いってちょっと、語弊があるんだけど)、夢中になって一気読みしてしまいました。
薬丸岳さんは犯罪を犯した人の心の変化(人間的成長)を描くことが多いように思う。
この小説では、過去に犯罪を犯して逃げ回り、素性を隠して結婚し子どももいるバーテンダーの主人公が、過去に自分が犯した罪と向き合わなくてはならなくなる、という設定。
正体不明の何者かから、「あの約束を履行せよ」と迫られ、殺人を犯さなければならなくなる…。
15年前、新しい戸籍と顔を手に入れるためお金が必要だった。犯罪被害に遭い、犯人を激しく憎む女性から、復讐を果たす約束と引き換えにお金をもらった。その女性は死んだはずなのに、犯人が刑務所から出てきたから約束を果たせと要求されるのだ。いったい誰が、あの約束を知り、そんな要求をしてくるのだろう…?
読みながら、けっこう身近な人のはずだと考えていたが、一番信頼し、身近にいた共同経営者だった。実は、主人公が過去に悪いことばかりしていたとき、強盗に入った家の女性の恋人だったのだ。彼女はその事件がきっかけで自殺した。自殺したのは主人公が彼女を強姦したせいだと誤解していたのだが、そこには深い事情が隠されていて(実は強姦していたのは実の父親、強盗に入った主人公は、それを目撃していた)、彼女は忌まわしい事実(息子は実の父との間の子ども)を隠すために、強盗が自分を犯したことにしていた。共同経営者はゆえに、彼を憎しみ続け、復讐の機会を15年も待っていたのだ。
途中まですごく面白かったのだが、この最後のネタバラしが、ページ数が足りなくなって大急ぎで書いたのかな?って感じでした。
だけど、一緒に店をやってきて、主人公が本当に生まれ変わり、悪人ではなくなったと感じて許そうかと思ったこともあったのに、小さなきっかけで「やっぱり更生なんかしてない、強盗に入った日(つまり彼女が深く傷つきその後自殺するきっかけになった日)を覚えていないじゃないか」と思って許せなくなった、というくだりが、薬丸岳さんらしいしかけだと思った。
「悪い人間」が「本当に反省」して「善良な人間」になる、というのは、どういうことなのか、はたして他人に(または本人に)判断できるものなのか、心から反省するとは、どういうことなのか、人は生まれ変われるのか、過去に犯した罪は許される可能性があるのか、そういう問いが、これまでの作品にも散りばめられていたので…。