あらすじ
電通、三菱電機だけじゃない! あなたの会社もそのままだと送検されて、ブラック企業と呼ばれてしまいますよ!
◆労基署は常に会社をチェックしている
電通社員の自殺問題で一躍注目を集めた労働基準監督署。2017年には三菱電機も書類送検された。
税務署と並んで、会社にとってできればお付き合いしたくない相手、それが労基署だ。過重労働や賃金不払いなど労使間のトラブルや労災事故が起これば、必ず労働基準監督官が監督に入る。しかし、普段、監督官たちは何をしているのか?
実は、管轄の区域にある事業場の情報を幅広く集めながら、法令違反はないか、規定に不備はないかをチェックしている。時には「2ちゃんねる」もチェックするなど、会社の裏側に関する噂話も、ほとんど把握しているのだ。
◆意外と知られていない監督官の実態
□労基署内には、問題企業リストが存在する。
□監督官は予告なしに訪問する。
□警察の実況見分は拒否できても監督署の臨検監督は拒否できない。
□監督官には、年間監督指導件数という事実上のノルマが課せられている。
□監督官は原則すべての案件を1人で処理する「一匹狼」である。
これらは、すべて事実だ。本書は、意外と知られていない労働基準監督官の仕事を、著者自身が経験した笑えないエピソードとともに解説。労基署との賢い付き合い方もわかる一冊。
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Posted by ブクログ
企業名は避けながらも具体例、臨場感あるやりとり含めてできる限りのことを記載しようという気概を感じる。そして、それゆえに読みやすい。
ところどころ自分は意識高くやってきたと言いたげな記述や、全国組(キャリア組?)を蔑むようなところもあり気になるが、それもかえって現場組のプライドと意気を感じるようでちょっと好き。
建設業に対するケースを含めて労働監督の見方が窺えてとても参考になった。労基署ってなに?労働監督って何を見ているの?何のために?…という方にはおすすめできる、貴重な入門書だと思った。
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p27 原則予告なく訪問(いまの状態を確認)
p38 労基監督官は司法警察官。裁判所から逮捕や強制捜査などの許可証をもらって直接捜査可能。
p84 増員はやはり必要。3千人にも満たない監督官で全国の企業の労働条件を担うことになっているのが現状(監督官が少ないというニュアンス)。
p86 監督署内の連携はいまひとつ。監督業務は監督官。安全衛生業務は技官。労災補償業務は事務官と。さらに労災補償業務は班ごとに縦割り。
p95 フォークリフト等の車両系荷役運搬機械を用いて作業を行うときはあらかじめ作業に係る場所の広さ及び地形、機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ当該計画により作業を行わなければならない。(労働安全衛生規則151条の3)←これがあれば経路とか定めていて荷台の上での作業などもなかったのではと捜索。
p106 こういう死亡事故が少なくとも自分の関わった現場で起きてはならないという思い。建設業の事故は年間の死亡者数の約三分の一の件数。1日に一人亡くなっている計算。常に現場には緊張感を持たせないといけない。そういう気持ちをすべての会社の責任者にも浸透させないと。
p116 高所恐怖症と戦う、監督官プライド。
p153 行政運営方針が参考になる。各労働局が公表、項目の順番で優先順位がわかる、重点的に業務量が割かれているとわかる。
p185 労災かくしは、国をだまそうとした悪いやつだよね(検事のことば)。賃金不払いは単なる債務不履行ともいわれ起訴猶予になることも多いのに対し、労災かくしは起訴率高い。監督官の事件を担当するのは外事・公安事件を担当する検事が多いし。それに、今も行われている。労働安全衛生法100条に基づく報告命令を検討。
p205 労基監督官は主役ではなく、あくまで労働契約の主役は労働者(働く人)と使用者(使う人)。この意識が変わらないと結局意味がない。
Posted by ブクログ
元労働基準監督官による労基署の仕事に関する話。監督官は、各事業所に監督に行き、労働時間などの労務管理や安全管理について調査(監督)し、指導や状況によっては検察庁へ送致するわけであるが、その考え方や手順について詳細に書かれている。基本的に監督官一人一人が、一つ一つの監督に対し責任を持っており、大掛かりな現場監督(強制的な立入調査)以外は、グループでは行動しないことがわかった。また、監督官の能力には差があり、その育成にも課題があることがわかった。全く知らなかった世界であり、参考になった。
「各監督官には、1年間で1人1件は捜査を行って検察庁に送致するようノルマを設定している」p39
「残念ながら、監督官は能力の差が大きい」p78
Posted by ブクログ
元労働基準監督官の著者が監督官業務を事例を交えて記述している。
タイトルからは労基署対策の要点が分かるような内容かと推測していたが、そうではなく労基署の仕事の内情中心だった。とはいえ世間にあまり知られていない労基署内部のことが少し分かる貴重な一冊と思う。
改めて感じたが、働き方改革を進めたり、ブラック企業を減らすには、監督官の人数が絶対的に足りないので一部業務を社労士に外注するなどの手を打つ必要があるだろう。
Posted by ブクログ
元労働基準監督官が書いた本。
その仕事にとてもやりがいを感じていたと思うけど、どうして辞めてしまったのか。
最後の大手ゼネコンとのやりとりの中で、相手が虚偽の話をしたことは、とても残念だが、怒りが込み上げてきた、事務所内で怒鳴り付けたというのは、個人的には違和感を覚えた。
ただ、結局のところ、監督官も会社側の担当者、労働者も人間なんだと思う。いろいろお互いを理解することは、難しいこともあるだろうけど、法令違反は駄目だし、事故が起こらないような環境は作るべきだし、万が一、事故が起こってしまったときは、誠実に対応する必要があると感じた。
Posted by ブクログ
電通事件で注目されたが、無いよりはいいのかもしれないと思うが労基署の存在感は薄い。労基署の仕事内容が書いてあり、地道な
職務がわかるが、インパクトが薄い。著者がなぜ労基署を辞めた理由をもっと詳細に書いてあるといいと思った。