あらすじ
都庁と都議会の癒着、意思決定のブラックボックス、巨額財政と巨大利権、無責任な歴代都知事、そしてドンなる影の権力者……。長年見過ごされてきた「東京都の闇」に今こそ光を当てなくてはいけない。「豊洲問題はなぜ起きたのか」「ドンはそんなに怖いのか」「利権や特権は本当にあるのか」「知事の権限とは」「東京五輪はうまくいくのか」など率直な疑問に現役議員が赤裸々に答え、都政の「不都合な真実」に迫る。
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Posted by ブクログ
【感想】
都議会のドンがいかにして生まれるのか。そこには地方議会ならではの構造的な問題が潜んでおり、単に内田氏が去ったからといって、解決する問題ではないことがわかった。
また、東京都の潤沢な財政状況が改革への問題意識と危機感を生み出さないというのは納得できた。
【インプット】
1 自民党都連・都議会のドンはなぜこれほど力を持っているのか。
・都連幹事長ののポジションには、都議会議員が就く。
・幹事長は、政治家たちの人事権・公認権を持つ。中選挙区制の都議会選挙では、自民党の公認を得られるかどうかが選挙の当落を左右する。
・財政状況が豊かである東京都では、政策実現力が高い。支援者の陳情・要請は国会議員よりも都議会議員へと集中していく。
・選挙によってコロコロ代わる知事が「思いつき」で大なたを振るう場合にも、都職員から都議会のドンに頼むことで議会の力を用いてある種の暴走を止めることができていた。その結果、知事以上に長年わたり影響力を堅持することとなった。
2 選挙に必要な「3バン」
「地盤」…地元での人脈や強い後援組織
「看板」…政党からの公認
「鞄」…どれだけ資金をつぎこめるか
3 都政の変革可能性の高さについて
・日本で最も若者が多い街である。
・トータル13兆円もの予算があり、政策実現可能性が高い。
4 広域自治体と基礎自治体の役割分担について
・行政サービスの「利用者の存在範囲」によって、役割を分担する。
・「道路・上下水道、建設物などのインフラ」…大きな範囲で計画建設した方が合理的
・「コンサートホールや大型の商業施設」…利用者が近隣住民だけとは限らない。
・「警察・消防」…範囲を広くとって、情報共有をした方が効率的。
・「小中学校・保育所」…「通える範囲」が決まっているサービスは、住民との距離が近い基礎自治体が担う。
5 都議会の後進性の理由
・「改革先進都市」ほど、長期にわたる厳しい財政状況にある。財政が苦しくなって初めて、行政改革(情報公開・無駄の削減)が進む。
・東京都は財政危機ではなく、「うまくいっている」。結果あぐらをかき、余計な情報が外に漏れることを嫌う。
6 都庁の縦割りについて
・「ホームページ運営」について。通常、普通の企業であれば、会社のHPは一元管理されており、営業部とマーケティング部が違うHPを運営していることはありえない。都庁は局ごとにHPを作っており、その仕様もデザインもバラバラ。それぞれが別のサーバーと契約し製作も別々のクライアントに発注している(経費の無駄)。
7 予算の執行率について
・予算がどれほど使われたかを表す数値。執行率が低ければ、「なぜ余ったのか」、「予算設定が甘かったのか」等強く責められる。その結果、次年度からは予算を減らそうということになる。この結果、公務員組織には支出削減へのインセンティブが一切働かなくなる。(「年末の道路工事」に象徴される。)
8 知事の二つの顔について
・選挙で選ばれた「政治家」としての顔。「民意」を用いて、行財政改革を断行し、税金の無駄遣いをチェックし、諫めていかなければならない。(パフォーマンスになりがち)
・「行政府の長」としての顔。職員たちのリーダーとしてビジョンを示し、規律を守りながらモチベーションを高く維持し、組織運営をしていく必要がある。
・二つの顔は相反する。このバランスをとることが難しい。これが知事の力量を決める。