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Posted by ブクログ
とっても不思議な構成の長編小説。
人によって、場合によって”時間は伸びたり縮んだりする”。ということが、読後に「なるほどー!」と腑に落ちる感じです。
一日がすごく長く感じたり、短く感じたり、一瞬で目覚めたと思ったのに「もう朝!?」と思ったり、たっぷり寝たと思ったのに1時間だったり。誰にでも経験があると思う。
「学校」という場所では、どんな子供も学齢に合わせて一律に、同じことを同じようにさせようとするけれど、一人一人「自分の時間」を生きている子供たちにとって、特に発達障害を抱える子供たちにとっては、それは苦痛でしかないし、そもそもついていけないだろう。それは私も実感としてわかる。
小説では、教職とは関係のないキャリアウーマンの「霧子」が小学校の教員の林太郎に出会い、林太郎の特殊な能力に気づき、子供の虐待や発達障害の問題にも興味を抱くようになっていく。しかしそれはあくまでも小説の中の「もう一つの流れ」で、中心はやっぱり「林太郎と霧子の間にあるものは果たして”愛”なのか?」ということが、読者にとっても中心的命題かなーと思った。林太郎はその特殊な能力で、「この女性を見守らないと、不幸な死が迫っている」と感じて結婚したのだ。霧子はそれに気づいたとき、やはり自分たちは愛しあって結婚したといえるのか?と深く思い悩む。
最後にそれが明らかに・・・・なるような、ならないような。
白石一文らしい、「運命」とは何か、人には決まった「運命」があるのか、考えさせられる一冊でした。