あらすじ
「おはなしこんにちは」というNHKの幼児向けの人気番組があったのを覚えているでしょうか。そこで朗読された童話が、本書に収められた、別役実氏の書き下ろし童話でした。表題作の「淋しいおさかな」をはじめ、「煙突のある電車」「猫貸し屋」「穴のある町」「可愛そうな市長さん」など、22作に共通するのは、穏やかな始まりと、虚をつくような結末、あるいは哀愁漂う結末など、いわゆるハッピーエンドで終るような童話ではなく、大人の鑑賞にたえ得る童話という点でした。それは、この作品集が単行本として刊行された当時、大人の支持を受け、版を重ね、復刊を望む声が多かったことでもわかると思います。まさに、本書は「大人のための童話集」の走りだったのです。かつて自分が子供だった頃を、本書を読んで思い出してみてはいかがでしょう。
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Posted by ブクログ
淋しいおさかなだけ読みました。
悲しくて、綺麗な物語。
ひとりぼっちの少女が、淋しいおさかなに会うために沢山の冒険や苦しい思いをして海まで行ったのに、淋しいおさかなは少女が来ないからどこかへ行ってしまった。
結局、おさかなは淋しいまま。
少女はひとりぼっちのときには淋しいを知らなかったのに、おさかなと出会い、おさかなに会えなかったことでやっと淋しさが分かった。
淋しさが分かったことは、良かったのか、悪かったのかは判断できない。
とても悲しくて、それと同じだけ綺麗な物語だと思いました。
Posted by ブクログ
40年前からの愛読書(三一書房刊行のもの)
不条理をしみじみと味わうような物語と思っていたのだが、3.11原発震災以降、これらの物語群の描く不条理が他人ごとではなくなってきている感じがします。
街中の人たちが何年も何年もかけて掘ってきた巨大な穴、その大工事の目的が実は何もなくて、無為に暮らしていると街に諍いが絶えないから始まった工事だった、次は何年もかけてそれをみんなで埋めていく。
あるいは、何の役に立つのかわからない巨大な機械が街の中心に据えられていて、それを撤去しようとすると機械が作動して妨害する。そうやってそこにあることだけが目的の黒々とした機械。
親があちこちの街でお星様を売りつけるという詐欺をやり、その結果困窮してしまった街が随所にあり、その息子がその後始末に、お星様の行商を…
これらの不条理と、我々が現在抱え込んでしまっている原発に代表される不条理を重ねると…ぞっとする。この本の肌合いが、全く変わって迫ってくるのです。