【感想・ネタバレ】植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫のレビュー

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Posted by ブクログ

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 植物には、月下美人、オオオニバス、セコイアなど目立つすごさもありますが、本書では秘められたすごさが紹介されています。田中修「植物はすごい」、2012.7発行。①成長力(生産能力)がすごい(光合成)。キャベツ、5㎎のタネが4ヶ月で1200gに(24万倍)。植物は自分たちの食料だけでなく地球上の全ての動物の食料を賄っている ②栗の実の防御:鋭いイガ、硬い鬼皮、渋皮 ③病原菌の退治:ネバネバ(ムチン):山芋、オクラ、モロヘイヤ ④有毒物質で守る:アジサイの葉(青酸)、チョウセンアサガオ(アトロピン) ⑤紫外線の活性酸素と闘うために、抗酸化物質であるビタミンC、Eを体内に ⑥夏の暑さと乾燥に負けないよう、葉っぱは水を蒸発させてからだを冷やしている。また、冬に向かって、葉っぱに中に凍らないための物質(糖分)を増やして寒さをしのいでいる(凝固点降下)。

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2023年07月21日

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植物はすごい
生き残りをかけたしくみと工夫

著者 田中 修
中公新書2174″
2012年7月25日発行

植物の仕組みについて、種の保存の観点から分かりやすく解説した本。物語性があってとても楽しく読めるし、読んでいると植物はすごい、えらい、と思えてくる。なかなかの人気本らしい。

自分の身を守るため、トゲを備えたり、実や体に毒を含ませたり、まずい味にしたりと、植物は工夫する。しかし、子孫を同じ場所ではなく、他の広いエリアで繁殖させるためには、動物や虫の機動性を利用するしかない。そこで、柿のようにまだ種が出来ていないうちは渋く、種が出来たら食べてもらえるように甘くなる。食べてもらって、食べて貰うときに種を落としてもらったり、未消化のまま糞でまき散らしてもらったり。そんな工夫がある。
食べ尽くされたくはないが、ある程度は食べてもいいよ、という植物が多いようだ。

ところで、近年、日光は人の体に悪い面があると強調されている。一つは、紫外線が体内に活性酸素をつくりだし、体を老化させること。そこで、ビタミンなど抗酸化物質を摂って健康を保とうとする。それは植物から摂る。では、どうして植物には抗酸化物質があるのか?実は、植物も人と同じ悩みを持っている。植物は太陽光の3分の1程度以下の強さの光しか光合成に使いこなせない。強い太陽光は植物にとっても有害な活性酸素を生み出す。そこで植物はそれを消去するため、ビタミンCやEなどの抗酸化物質をつくり出したとのことである。それが、人間様にも役立っているとは。

杉や松、ツバキなどのなどの常緑樹は、どうして冬にも葉っぱがかれないのかという仕組みも興味深かった。例えば、冬に氷点下になれば水は氷る、水分を含んだ葉っぱも氷るはず、だが氷らないのは氷らないような物質を冬になる前にためこんでいるからだという。それは、例えば糖分。糖分の濃度が高ければ高いほど、凝固点降下で氷る温度が低くなっていく。
で、これと同じ理屈が冬を通り越した大根や白菜、キャベツなどの甘みだという。ほうれん草や小松菜は、温室で栽培し、最後の1週間は寒風を入れて冷やすのだという。それで甘みが増す。
もしかすると、白菜や大根を雪に埋めて保存するのも、その理屈かもしれないと思った。

種なしの果物はどうして実が成るのか、そして、どうして増やすのか?
みかん(温州みかん)は種がないが、時々入っていることがあるのは何故か?
その仕組み解説も楽しかった。
江戸時代前期、当時の薩摩で栽培されていたときに、ミカンに突然変異がおこり、「温州ミカン」が生まれた。花粉がメシベについてタネをつくる能力をなくす」性質と、「タネができなくても、子房が肥大する」性質を併せもつミカンが生まれたのである。
果物は、花粉がなくてもオーキシンという物質を与えると実が大きくなるそうだ。
しかし、温州ミカンも違う種類のミカンの花粉がつくと、メシベには生殖能力があるため種ができるそうだ。虫によってそれが起きるらしい。
やはりメスは強い。

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2021年03月17日

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