あらすじ
恐竜がまだ知られていなかった頃、危険な絶壁から「怪物」の化石を探し出し、ロンドンのお偉い科学者たちに負けない知識と駆け引きで売り込み続けた化石掘りメリル・ストリープ主演『フランス軍中尉の女』のモデルとなった女性の生涯。
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Posted by ブクログ
メアリー・アニング(1799-1847)の生涯。350ページ、圧巻だ。
舞台は南イングランドの海岸の町、太古の化石の宝庫、ライム・リージス。メアリーはここで生まれ、ひたすら化石の発掘を続け、ここで亡くなった。その生涯は、静穏・単調とはほど遠く、書名にもあるように「冒険」と言うにふさわしい。
化石発掘は生活のためだった。大型化石は嵐のあと崖に露出する。損傷を与えずにすぐ掘り出し(命がけだ)、洗浄を行ない、枠に固定し、スケッチし、学術的価値を見極め、コレクターや研究者と値段の交渉をする。(メアリーは貧しかったため学校に行けなかったが、これをするだけの知識や技術を習得していた。)
時代は、19世紀前半、ダーウィン進化論の登場直前。科学の最先端は地質学と古生物学だった。本書では、キュヴィエ、セジウィック、マーチソン、バックランド、ライエル、オーウェン、アガシなど、キラ星たちが登場し、メアリーの化石をめぐって争奪と学術的論争を繰り広げる。
メアリーの実像を描き切った吉川惣司・矢島道子両氏には脱帽。その作業は、さぞかしおもしろかったに違いない。(蛇足。2020年、映画『アンモナイトの目覚め』が公開された。主人公はメアリーで、ロケ地もライム・リージスだが、内容はほぼフィクション。)
Posted by ブクログ
さながら冒険小説である。
化石を発掘していた知られざる女性メアリー・アニングを追いかける。少ない資料から謎が解かれていき、遥か昔のメアリー・アニングが「発掘」されてゆく。
ダーウィンの『進化論』の約200年も前のことと言うから、まだ天地創造が信じられていた頃。
イギリスの片田舎で多くの化石を発掘し、研究に多大に貢献しビジネスにもしていたメアリー・アニング。しかし階級社会にあって労働者階級に属し、しかも女性であった彼女のことは公的な記録には残されておらず、古生物学界でもあまり知られていなかったという。
その彼女に焦点をあて、彼女を追いかけていったこと自体が「発掘」であり、その筆致は、さながら冒険小説のようにスリリンで、どきどきハラハラする。
いつぞや瀬名秀明さんがこの本のことを語っておられてびっくり。
また、ジブリでも狙っているという話を聞いたことがあるような気がするが、そしてもしそれが本当なら、かなりぴったりな素材ではないかと思うが、はてさてそれはどうだったか。