【感想・ネタバレ】『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント ~映画を観るだけでITILの実践方法がわかる!~のレビュー

あらすじ

本書は,映画『アポロ13』を題材にした好評のセミナーをベースに,ITサービスマネジメントの基礎を学んでいく書籍です。アポロ13号の事故は40年以上も前の出来事ですが,その原因はITサービスの現場で発生するインシデントと共通しています。また,フィクションではなく史実に忠実に作られたストーリーなので,臨場感かつリアリティのある解説で,ITサービスマネジメントの本質と実践方法を楽しく学ぶことができます。さらに,映画『アポロ13』を鑑賞しながら本書を読めば,実体験のような高いモチベーションで学習できます!

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Posted by ブクログ

『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント
映画を観るだけでITILの実践方法がわかる!
著:谷 誠之
著:久納 信之
出版社:技術評論社

本書は、アポロ13号での危機回避の例に、ITサービスの解説を試みるものです。

わかりやすかった。

ITILとは、情報システムの保守費用を抑えるために、サービスの標準を作ったもので、それが全世界に広がりました。

本書で、ITILを考えるに、ITシステムのサービスの原点に立ち戻ってみることが出来たと思います。

サービスとは、有償が、無償かにかかわらず、顧客に価値を提供する活動のことです。
ITサービスとは、ITが提供するサービスのことです。

サービス価値とは、2つの意味がある。①できなかったことができるようになる、そして、②それが確実に提供される である。このことを、有用性と保証という

ITILではサービスをライフサイクルとして捉えて
 ①サービスストラテジ(戦略)
 ②サービスデザイン(設計)
 ③サービストランジション(移行)
 ④サービスオペレーション(運用) にわけています。
ITILとはITサービスの最善のやり方、ベストプラクティスとしてまとめられたものです。

■サービスストラテジー

・まず組織の構築から。Small Start Quick Win 小さくはじめて、早い段階から良いものをです。

・問題管理と、インシデント管理は違います
  問題管理:時間をかけて根本原因を突き止めて、解決策を見つけ適用すること
  インシデント管理:障害や問い合わせに迅速に対応し、一刻も早く現状に復帰すること
 問題管理は、プロアクティブ(予防的)であり、インシデント管理は、リアクティブ(事後保全)といえます

・冗長化:ものが壊れるのを必然と見なして、二重・三重の予備を用意することです。
  ものが壊れてもサービス(=業務)を止めないが基本です

・サービスを提供する上で重要なのは、顧客は誰かということです

・サービスには、3つの観点があります
  ①コア・サービス 基本的なサービス
  ②実現サービス コア・サービスを実現するためのサービス
  ③強化サービス コア・サービスの魅力を上げるための追加的サービス

■サービスオペレーション

・インシデントとは、①障害、と、②問い合わせ、があります。
 ITILでは、問い合わせのことを、サービス要求といっています

・目の前のインシデントを即座に取り除くことを目的としたものが、ワークアラウンドです。
 次善策、回避策、暫定対応などといわれます。これをインシデント管理といいます。
 対して、根本原因を取り除き、再発を防止することを、完全な解決、恒久対応といっています
 恒久対応には時間とコストがかかります。これを問題管理といいます。

・SPOC:Single Point of Contract 顧客とサービスプロバイダーの間にある、単一、一元的な受付窓口
 をいいます。One Stop などともいいます。
 これには、2つのメリットがあります。
  ①顧客はユーザに対して、窓口を一本化できる
  ②ITスタッフを顧客やユーザの煩雑な問い合わせから守る です

・サービススタッフに求められるスキル
  ①コミュニケーション・スキル(特に、傾聴力、説明力)
  ②プロ意識
  ③共感性
  ④文章作成能力
  ⑤ストレス耐性

・サービスデスクが解決できないインシデントは、エスカレーションといって次のサービス層に委託されます
  ①機能的エスカレーション 高度技術を有するメンバーへ
  ②階層的エスカレーション 上司、上位者へ

・問題解決の流れ
  ①インシデント発生
  ②直接原因、現象の確認
  ③ワークアラウンド ⇒暫定対応:インシデントの解決
  ④問題
  ⑤根本原因の解決 ⇒恒久対応:問題の解決

・インシデント管理と、問題管理
  ⇒すべてのインシデントについて、根本原因の究明をする必要はない
  ⇒インシデント管理と、問題管理は、利害が背反する
  ⇒問題管理だけの対応のみもある:セキュリティ対応など(インシデントは起きてない)

 アポロ13号でいえば、窮地に陥っている3名の飛行士を一刻も早く地上に救いだすことがインシデント管理であり、その原因と防止策は、次の14号までに用意するのが問題管理である。

■サービスデザイン

・SLA:Service Level Agreement :サービスレベル合意書
 重大なインシデントが発生した場合の対応については、BCP:Business Continuity Plan:事業継続計画を作成し、まとめておき、万が一の場合に発動する

・可用性:SLAに記載される基準で、そのサービス(コンピュータではない)をどれくらい停止してもいいかの
指標である。99.99%であれば、365.2524×0.0001×24≒52.6、つまり一年間にサービスをとめてもいいのは、52.6分ということになる。99.99%を稼働率という

・キャパシティ管理
  ①容量、②性能の管理
  3つの要素、①事業キャパシティ、②サービスキャパシティ、コンポーネントキャパシティ

・継続性管理
  サービスを止めない。DRサイト、東京と大阪に同じようなセンターを設けて一方のシステムは止まっても、サービスを止めない仕組みを作る。事業継続性管理BCM:Business Continuity Management といい、その計画が、BCPである

・構成管理 現状のリソースを把握する、資産ではなくサービスのリソースの管理である

・変更管理 
  ①標準的な変更 ささいな変更
  ②緊急の変更 致命的な影響があったときの変更
  ③通常の変更 ①でも②でもない変更

・リリース管理
 変更におけるオペレーション、手順書などを用意して、重大のものはリハーサルをする
 何かあった場合に前の状態に戻すことを、切り戻しという

■継続的サービス改善

・SMART
  S:Specific 具体的で、達成指標が明確である
  M:Measurable 測定可能であり、測定が容易である
  A:Achievable 達成可能であり、自分たちの能力に即している
  R:Realistic 現実的、目標と正しくひもづけられている
  T:Time bounded 時間制限があり、期限がきめられている

目次

推薦のことば
まえがき

第1部 ITサービスマネジメントとアポロ13

CHAPTER 01 ITサービスマネジメントとは
CHAPTER 02 「アポロ13」でITSMを学ぶ意義

第2部 サービスストラテジ

CHAPTER 03 「ニール・アームストロングが月に降り立ちました」
CHAPTER 04 「14号があればだが」
CHAPTER 05 「月を歩くんだね」

第3部 サービスオペレーション

CHAPTER 06 「ヒューストン、センターエンジンが停止した」
CHAPTER 07 「反応バルブを閉じろ、と伝えろ」
CHAPTER 08 「自分の字が読めないんだ。思ったより疲れているみたいだな」

第4部 サービスデザイン

CHAPTER 09 「絶対にしなせません」
CHAPTER 10 「チャーリー・デュークが風疹にかかっている」
CHAPTER 11 「問題は電力だ。電力がすべて」
CHAPTER 12 「トラブルが発生した」

第5部 サービストランジション

CHAPTER 13 「なんとかして、この四角をこの筒にはめ込むんだ」
CHAPTER 14 「この飛行計画は忘れよう」
CHAPTER 15 「こちらヒューストン。打ち上げ準備完了です。」

第6部 継続的サービス改善

CHAPTER 16 アポロ計画は改善のかたまり

あとがき
付録
索引
参考資料一覧
著者紹介

ISBN:9784774184920
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:1980円(本体)
2016年11月25日初版第1刷発行

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2025年07月03日

Posted by ブクログ

映画を鑑賞後に、読みました。
映画も初見だったのですが、史実の内容を2時間程度に収めた内容となり、面白かったです。

アポロ13までのそれまでのアポロ計画についてのSmall Start Quick Winや、管制室とアポロ13間のエスカレーション、予備宇宙飛行士のBCP、アポロ13内での構成管理といったものをITILに紐付けて説明されています。

「Houston, we have a problem」
という有名なフレーズがあるのですが、まさにインシデント通知と思いました。

正直、本を読まずに映画を見た場合は上記は意識できないですし、若干こじつけ感のあるものもありますが、映画鑑賞後に本書を読むと「なるほどな」と思う箇所があり、ITIL初学者の方にはちょうどよいかなと感じました。

そこまで時間も掛からず読めますし、章ごとに独立していますので、興味ある方は是非お手に取ってはいかがでしょうか。

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2019年05月07日

Posted by ブクログ

内容がITILというよりITSM寄りに思えた。映画のエピソードをITサービスにたとえた例でわかりやすく、参考書に書かれていない要点が参考になった。

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2017年09月25日

Posted by ブクログ

日頃からITILを実践している身からしても分かりやすく、面白い。もちろん映画「アポロ13」を観てから読むことをオススメします。

どうもトラブルが発生したようなので、早速明日は問題管理の実践になりそう。

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2017年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 もしも「アポロ13」ミッション中のNASAがITILを使っていたら。という面白い趣向の本である。
 あの事故から3人の宇宙飛行士を生還させたものはITILのベスト・プラクティスに通じるものがあり、予算を含めたリソース、叡智、人材が投じされた優れたプロジェクトだったということが解る。
 日本では「デスマーチ」「炎上プロジェクト」が後を絶たない。確認すべきは文書をもって確認する、適切なプロセスを適用するというITIL、ISO/IEC20000に準じた仕事をやり方をやはり進めるのが良いと改めて思った。

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2019年09月08日

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