【感想・ネタバレ】わすれて、わすれてのレビュー

あらすじ

この荒廃した世界では、理不尽な暴力で大切な人を奪われることもしばしばだ。強盗に妹と両親を殺された少女リリイは、「リリイ・ザ・フラッシャー」と綽名される、早撃ちで有名な国一番の銃の使い手。そしてその親友カレンは、記した事柄を忘れることができるふしぎな本〈ダイアリー〉の持ち主だ。その本は、クリニックを営むカレンの家に代々伝わるもので、医師だったカレンの祖父や父親によって、忘れられない辛い記憶に苦しむ人々のために秘密裏に使われていた。しかし、クリニックを継げなかったカレンの叔父が、〈ダイアリー〉を狙い、悪い仲間を集めて父親を殺してしまった。幸い〈ダイアリー〉は奪われなかったが、復讐を誓ったカレンは、リリイを用心棒に誘い、大型バイクに二人でまたがって、国の各都市に散らばった、父を襲った犯人たちを探す旅に出る。ひとりずつ憎い仇を痛めつけ、〈ダイアリー〉を用いて仇の復讐された記憶を消すのだ。そうすれば、そこで復讐の連鎖は途切れるはず、だった……第5回アガサ・クリスティー賞と小説推理新人賞、ダブル受賞でデビューした超大型新人が描く、ふしぎなダイアリーをめぐる、少女二人の復讐ロードノベル。受賞第一作。

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Posted by ブクログ

タイトルや本文中の記述から察するに、おそらく「うそつき、うそつき」の時代から三、四世代未来の世界。管理社会は崩壊し、暴力の国と言えるほど荒廃した世界となる。国が犯罪抑止のために強盗を死罪にした結果、それ以上の罰が与えられることはないと強盗に伴い、口封じのために殺人が蔓延った。
まあつまり、前作とはまた違ったディストピアである。続編ではない。

この作品の主人公は、殺伐としたテーマの主人公としては面白いことに、二人の十六歳の美少女。
2人とも国でいちばん品の良いお嬢様学校に通う同級生。
1人は父を殺した強盗たちへの復讐心に燃える、金髪の美少女カレン。もう1人は黒髪で、国いちばんの銃の使い手と名高い、リリイ・ザ・フラッシャーと渾名されるリリイ。
物語は一貫してリリイの視点で語られていく。
2人とも裕福のゆえ過去に強盗に押し入られ、目の前で両親を殺されるという共通の過去を持つ。
己の復讐をするために、カレンは銃の名手のリリイに復讐の相棒となるよう話を持ちかけ、2人は復讐の旅に出る。
さて、この物語の鍵となるのが、忘れたいできごとについて書き込んだら綺麗に忘れることができる、忘れたことすら忘れてしまえる魔法の本、通称「ダイアリー」。カレンの家に押し入った強盗たちの目当ては、このダイアリーだったが、なんとか奪われずにカレンの手元にある。
このダイアリーを用いて、復讐相手に復讐されたことを忘れさせ、相手を殺すことなく禍根を残すことなく復讐を完了させる…はずだった。

美少女×復讐譚ということで、厨二病的な?と思われそうだが、ちゃんとテーマもメッセージ性もある。
人によってはモヤモヤするだろうし好みも分かれる作品だろうが、これだけは言いたい。
これは、決して復讐礼賛譚ではない。
復讐のためにはどんな手段も厭わないカレンに対して、リリイはやりすぎだと何度も諌め、復讐を続けるかどうか、続けていいのか何度も2人は言い合い衝突する。
やったら、やりかえされる。
このよくあるテーマを、この作品は、暴力の国に生きる思春期の少女たちのぐちゃぐちゃになるまでの葛藤を通して描いていく。
よくあるテーマということは、この話はフィクションだが、それだけ私たちの身近にあるテーマでもあるということ。
卑劣な犯罪を行なった人が裁判の末軽い罪になったと報道された時、多くの人が罪が軽すぎる、死刑もしくは無期懲役にすべきだ、などと考えを述べたりしますよね。私たちの心の中には、重罪を犯した者には報復を、という考え…望みとも言える…が少なからず根ざしている。もちろん全員ではないだろうが。
他人の被害はその程度で済むが、もしも自分や自分の大事な人が酷い目にあったら?
心の底から復讐を否定できるだろうか。

そしてテーマはもうひとつ。
「わすれて、わすれて」というタイトルにある通り、忘れること…特に辛いことを忘れることの是非について。
いつまでも覚えていたい大切な思い出も、どうにかしてでも忘れたいほどの辛い思い出も、ひとは抱えて生きていかねばならない。
「ダイアリー」の存在を通して、少女たちは、さまざまな記憶を抱えて生きていくことについて考えていくことになる。
ちなみにこのダイアリーには、魔法のペンも対となって存在する。書き込んだ内容を魔法のペンで消すことで、再び思い出すことができるのだ。
作中で描かれるさまざまなダイアリーの使い方の是非については、それぞれ読み手の心で考えるとして…
もしダイアリーが手元にあったら、あなたはどのように使う?

そのようなことを、本作を読んで私は考えた。


あと私はこの作品とても好み。というか作者の世界観の設定の練り方が好きなのかも。
カレンとリリイのドライなやりとりや、2人とも自分が美少女だという自覚と自信があるところが、なぜか私にはうざったくなくいいなと思えた。
最後にカバーイラストが大好きだ〜ありがとう片山若子さん〜見惚れる。

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2022年04月20日

Posted by ブクログ

誰かを憎んだとき、復讐に燃えるか、いっそ忘れてしまった方が楽か。
ずっとその問答を繰り返す。
愚かで救いようない輪廻の物語だけど、色々考えさせられた。

0
2024年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おとぎ話的なディストピアでした。

アニメ化されたら映えそうだなぁ、と思いつつ、
あまり残るものはなかった感じです。

前作がちょっと気になったので、
機会があったら読みたいです。

0
2023年01月27日

Posted by ブクログ

記憶を消すことができるノートと、それを修正して思い出すことができるペン。この二つのガジェットの使い方で魅せてくれると思いきや、そこまで予想外でもないので面白味に欠ける。

全体的に驚くような斬新さがない話。それなのに、ところどころの文章で、「私、センスいいでしょう?」という作者のドヤ顔が見えるようで、居心地が悪いと感じてしまう。
これは前作「うそつき、うそつき」でも感じたことだ。作者の考える驚きのレベルが低すぎる気がする。この程度のネタではミステリーは書けないだろう。少女たちの復讐ロードノベルということで、ミステリーを期待してはいけないのかもしれないが……。

また、アクション・シーンの貧相さに苦笑してしまう。想像で補うことが前提となっているようだ。しかし想像すると明らかにおかしいような動きがあるので困りもの。

ラストも「正直あんまり考えていなかったのかな?」と思わせる微妙さ。テキトーだなぁ……と思ってしまった。

色々書いたが、文字数は少ないしサクサク読めることは読める。不思議な雰囲気や世界観も、慣れれば意外と肌になじんでくる。
凄くつまらないってわけではない。ジュブナイルとしてなら悪くないと思う。(だが、児童書にはこれよりも面白いものがいくらでもあるだろうなぁ。)

0
2016年11月16日

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