【感想・ネタバレ】晴れた日の森に死すのレビュー

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ネタバレ

舞台はノルウェーの夏。鍬で老婆が殺された。そばにいたのは少年院(ノルウェーでは自由に外出できるらしい)にいる12歳の少年と、精神障害を持った男。男は最有力の容疑者となったが、銀行強盗の人質となり行方不明に。銀行強盗の男と精神障害の男は、行動を共にするうちに不思議な関係となり・・・。あとがきにも書かれているように、作者の犯罪者や弱者に対する視線は優しい。周りの人間は、彼らを一方的に蔑むのではなく、理解しようと努力もする。社会に上手く溶け込めない人たちが犯した犯罪は、彼一人のせいではないと訴えているような、そんな小説でした。精神障害の男が眠るようにあっけなく死に、銀行強盗の男があっさりと捕まったが、それにより彼らが救われたようにも感じた。

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2023年04月11日

Posted by ブクログ

ノルウェーの作家「カリン・フォッスム」の長篇ミステリ作品『晴れた日の森に死す(原題:Den som frykter ulven、英題:He Who Fears the Wolf)』を読みました。

「アンネ・ホルト」の『ホテル1222』に続きノルウェー作品… 北欧ミステリが続いています、、、

「カリン・フォッスム」作品は2年近く前に読んだ『湖のほとりで』以来ですね。

-----story-------------
全世界で累計550万部、30か国以上で翻訳
ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!

ノルウェーの森の奥で老女が殺害される。
被害者の左目には鍬が突き刺さっていた。
第一発見者の少年が、精神病院に入所している青年「エリケ」を現場で目撃していた。
捜査陣を率いる「セイエル警部」は、「エリケ」を犯人と決めつける者たちの偏見の言葉に左右されず、冷静に手がかりを集めていく。
だが信じがたい事実が発覚。
「エリケ」は近くの町の銀行強盗に巻き込まれ、銃を持って逃走する強盗犯の人質になっていた。
ガラスの鍵賞受賞作家が贈る衝撃のミステリ!
解説=「ヘレンハルメ美穂」
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「セーヘル警部」シリーズの第3作目… 現時点、ノルウェーでシリーズは第13作目まで刊行されているようですが、翻訳されているのは既読で第2作目の『湖のほとりで』と本作品の2冊だけのようですね。

独特の味わいのある作品で、いつの間にか精神病院から抜け出した「エリケ・ヨルマ・ピエテル」に感情移入していましたね、、、

真相は藪の中… と思わせておいて、意外な結末が訪れるエンディングは秀逸で、自分にかけられた容疑が晴れた感じがするほど、気付かないうちに感情移入しちゃっていました。

複雑なトリックがなくても、ミステリって愉しめるんだな… と改めて感じたし、不思議な読後感が印象に残る作品でしたね。



ある日、「エリケ」は精神病院〈ビーコン〉を抜け出した… 「エリケ」は森の中を進み、「ハルディス・ホーン」が鍬を使って草の掘り起こし作業をしている姿をしばらく木陰から眺めていたが、「エリケ」が「ハルディス」の目の届くところにいきなり姿を現したため、「ハルディス」は驚いて不安な気持ちになる、、、

その後、地区警官の「ロベルト・グルヴィン」のもとへ、少年院〈ギューテバケン〉へ入所中の少年「カニック・スネリンゲン」が「ハルディスが死んでいる」と知らせに来る… 「カニック」によると「ハルディス」の家の近くに「エリケ」がいたという。

「グルヴィン」は、「ハルディス」の農場へ向かい、「ハルディス」が左眼に鍬が突き刺さった状態で死んでいるのが確認される… 「エリケ」は「ハルディス」を殺害した容疑で手配される、、、

次の日の朝、フォーケス銀行で強盗事件が起きる… 目撃者によると、犯人は若い女性を人質に取って逃げたという。

事件が起きる前に、銀行の近くで銀行強盗犯を目撃していた「セイエル」は二つの事件を追うことに… 防犯カメラの映像から、女性と思われた銀行強盗の人質は「エリケ」だったことが判明、、、

銀行強盗の「モルガン」は、「エリケ」を人質に取ったが、彼が何も喋らず無表情なので不気味に思う… しかし、一緒に行動するうちに、「エリケ」の行動や発言から、「「エリケ」が天才なのではないか」と思うようになる。

「モルガン」と「エリケ」は、森の中の小屋にたどり着いて立て籠もる… 「セイエル」は〈ビーコン〉を訪れ、精神科医の「ソーラ・ストゥリュアル」に会って「エリケ」のことを聞き出すが、「ストゥリュアル」は「「エリケ」が「ハルディス」を殺したと考えるのは間違っている」と語る、、、

「セイエル」は、「ハルディス」殺害事件には、何かおかしなところがあると感じ、「エリケ」は犯人ではないと考える… そして、「ハルディス」の死を警察に届けた「カニック」が偶然、森の中の小屋に近付き、「カニック」の射た矢が「エリケ」の腿に刺さったことがきっかけとなり、「カニック」は「モルガン」と「エリケ」に捕らえられ、微妙な関係の三人がひとつ屋根の下に集うことになる。

三人はウイスキーに酔って眠るが、「モルガン」が目を覚ますと、「エリケ」が血を流して死んでいた… これで真相は藪の中かと思われたが、、、

後日、「セイエル」は、「カニック」に会うために彼が収容されている少年院〈ギューテバケン〉を訪ねるが、「カニック」が弓用の手袋をしているのを見て、「ハルディス」殺害の犯人が「エリケ」ではなく、「カニック」だったことに気付く… 二つの事件が意外なカタチで合流し、頼りない銀行強盗の「モルガン」と、面倒な人質「エリケ」の二人が次第に心を通わすシーンが印象的でしたね。

作者の社会から疎外される人を受け止めようとする誠実さが感じられる展開でしたね… 直感ではなく物証に基づいて真犯人が暴かれるエンディングと、そこにおける「セイエル警部」の態度に好感が持てました、、、

意外なだけでなく、ほっ とできる、安心感を伴ったエンディングが印象的でした… 面白かった!



以下、主な登場人物です。

 
「エリケ・ヨルマ・ピエテル」
 精神病院〈ビーコン〉に入院中の青年。24歳。
 生まれつき股関節が悪いため、左右に揺れながら歩く。
 フィンランドのヴァルティモで生まれる。

「エルシ・ヨルマ」
 エリケの母親。故人。1950年生まれ。

「ハルディス・ホーン」
 農家の女性。76歳。フィンネマルカに住む。

「トルヴァル・ホーン」
 ハルディスの夫。故人。

「ロベルト・グルヴィン」
 地区警官。巡査。

「カニック・スネリンゲン」
 少年院〈ギューテバケン〉に入所中の少年。12歳。
 弓が入っているケースをいつも持ち歩いている。

「マルグン」
 〈ギューテバケン〉の職員。50歳代の女性。

「コンラッド・セイエル」
 警部。50歳。デンマーク生まれ。コルバルクという犬を飼っている。

「エリーサ」
 セイエルの妻。故人。

「ヤーコブ・スカラ」
 セイエルの部下。

「カールスン」
 警官。

「モルガン」
 銀行強盗犯。本名は、モルトゥン・グルペア。

「カーシュテン」
 〈ギューテバケン〉の少年。

「シーモン」
 〈ギューテバケン〉の少年。

「シーヴェルト」
 〈ギューテバケン〉の少年。

「ヤン・ファーシュタ」
 〈ギューテバケン〉の少年。

「ソーラ・ストゥリュアル」
 〈ビーコン〉の精神科医。40歳代半ば。女性。

「ギャハル・ストゥリュアル」
 ソーラの父親。

「オッデマン・ブリッゲン」
 食料雑貨店の店主。ハルディスに品物を届けていた。

「ヘルガ」
 ハルディスの姉。ハンメルフェストに住む。

「ヨーナ」
 ブリッゲンの店のレジ係。

「クリストフェル・マイ」
 ハルディスの姉の孫息子。

「クリスティアン」
 カニックに弓を教えている。

「スノーラソン」
 医師。

「トミー・ライン」
 ブリッゲンの店の元従業員。オッデマンの身内。元犯罪者。

「トーマス・ライン」
 クリストフェル・マイが住むアパートの家主。

「ヨハンネス」
 農夫。

「エルマン」
 警察官。

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2022年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったです。
北欧ミステリーは暗くて良いです。
世間から完全にはみ出している、周りの人と関われないエリケが、ひたすら哀しかったです。何か悪いことが起これば、全てエリケのせい。。
頭の中で声がする…というのは言及されている病気があるのですが、セイエル警部は彼を理解しようと様々な人に話を聞きに行くのが良かったです。町の人も、警官でさえ老婆殺しの犯人はエリケだと決め付けているのに。
そんなエリケは銀行強盗に巻き込まれて、強盗犯のモルガンと行動を共にしているのですが、エリケとモルガンの心が少し通っているのも良かった。そんな中での悲劇なのですが。

しかし真相がまさかの、エリケを殺したカニックが老婆まで殺していたとは。
やりきれません。エリケの生って何だったんだろう…と思ってしまいました。

普通に生きられない人たちへの作者の眼差しが優しくて良かったです。
シリーズものなのかな、他の作品も読んでみたいです。

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2019年11月08日

Posted by ブクログ

ノルウェー、フォッスムの邦訳は2作品しかないのが残念。1作目検索したら、2年前に読んでいたすっかり忘れているが☆4個にしているので気に入ったらしい。もういちど読んでみよう。ー2回目

3回目、同じ成川裕子翻訳なのに『湖のほとりで』と主人公警部と部下の名前の表記を変えている。セイエル警部シリーズ12作も出ているのに日本ではたった2作のみ、新作読みたし。

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2018年12月15日

Posted by ブクログ

ノルウェーの作家カーリン・フォッスム、1997年発表のミステリー小説。

森の中の一軒家に一人暮らしの老女が殺される。発見者は少年院に住む12歳の少年。精神病院を脱走した統合失調症の青年が現場で目撃され・・・。
一応警察ドラマですが、犯罪捜査の場面は添え物のような物語り。多数の登場人物の間で視点が次々と切り替わり各々の心理描写がかなり克明に細々と描かれる群像劇のようなスタイルです。あまりに細々としたどうでもいいような描写にうんざりする部分もありますが、これがこの著者の持ち味なのでしょう。悪くはないです。
ミステリーとしては他愛無い話で、物語りの要は銀行強盗をした間抜けな若者と彼が逃亡する際人質にした精神病の青年、この二人の珍道中。面白いけれど、最後の方の展開にどうもリアリティが感じられないし、後味も悪いです。

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2016年11月25日

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