あらすじ
わかりやすく、見やすく蘇った『森の生活』。
ヘンリー・D・ソローは、1800年代中期、ウォールデンの森の家で自然と共に2年2か月過ごし、内なる自然と外界の自然、そして人間社会を見つめて膨大な日記を記しました。その日記をもとに一冊に編み上げたのが本書です。邦訳は、古典の引用などから難解な書籍と言われていましたが、2004年に小学館から発売になった動物学者の今泉吉晴氏の訳本は、今泉氏自身が山小屋に30年暮らして、自然の側からの視点でソローの翻訳を続け、若々しく、読みやすく、示唆に富む内容になっています。今回の文庫では、さらに豊富な注釈を加筆。深く読み込みたい読者に対しても魅力ある内容となっています。新たに収録された写真と地図は、ソローの足跡(そくせき)をたどったH.グリーソンによるもの。ソローの文章と一緒に見ることで、ソローが感じていた自然を少しでも感じてほしいという訳者の意図によります。社会の産業化が進み始めた時代に、どのようにソローが自然の中を歩き、何を感じていたか。現代に生きる私たちも少しでも感じることができるのではないでしょうか。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
名著です。何か、『隠遁生活のススメ』みたいな捉え方をされている向きもありますが、ソロー自身が
『僕が森に行ったのは、思慮深く生き、人生で最も大事なことだけに向き合い、人生が僕に教えようとするものを僕が学びとれるかどうか、また死に臨んだときに、自分が本当に生きたと言えるのかどうかを、確かめるためだった。』
と、本書で述べており、決して厭世思想ではありません。積極的に生きるための哲学として読まれることをおすすめします。
Posted by ブクログ
宇野重規推薦
大自然の中で暮らし、思考を鍛える。
黒人奴隷制度、帝国主義に反発し、納税を拒否。
静けさ。
小学館文庫が読みやすい。
文明を批判し、豊かな自然で暮らし、人生について考えた本。
“考える以外に何もしない時間を、生活の中に必ずもとう。”
自然の美しさと静寂を背景に描かれた、思考の記録。
Posted by ブクログ
一度読むべき一冊!!!
ともいえる名著だと思いました。
仕事はしなければ生活ができないと思い込んでいた
本当に必要なもの以上のことを求め、生きていくことに必死だった
目から鱗の一冊
生きるために必要最小限のことだけで生きていけば
世界から争いごとはなくなるのではないのかと思う
恐れを抱かせる神への信仰
特に信仰している神はないが、聖書(小説)を読んだときの違和感に合致した。
Posted by ブクログ
ヘンリー・デービッド・ソローの不朽の名著。
労働の意義を否定し、自然中心の生活に徹した彼は、経済至上主義、物質至上主義の社会の闇を予測していたように思える。アンチ資本主義、アンチブラック企業な人にもオススメ。珠玉の金言の数々。
Posted by ブクログ
今読みたい、私たちはどう生きるか、の本。
チョボスキー『ウォールフラワー』で出てきて、ずっと読みたいと思っていた本。なかなかすっと読み切れるものではなかったけど、興味深いことがたくさん書いてあった。ソローの実践した生活は、到底できないとあきらめてしまう都会の私だけど、心の持ち方として、この考えに出会えたのはよかった。
森の中で独り、自然の声に耳を傾け、自分の生きる分だけの生産をおこない、読書と思索にふける。産業化が進み始めたソローの時代からかなり世界は進んでしまったけど、持続可能社会やSDGsが言われる今だからこそ、これからの私たちの生活を考えるために、読むべき本なのでは。
Posted by ブクログ
最近森の隠遁生活系の本をたくさん楽しんだので(前から好きなメイ・サートンもその筋か)、その元祖とでもいうべき本としてよく引かれている「森の生活」も読んでみることにした。しかし、良くも悪くもパイオニアの本であり時代の違いもあって、私が好んで読んできたような隠遁生活とはちょっと違うなと感じた。暮らしというよりは、ソローの思想を記録したものだ。
ソローが森で生活するのは本人が個人的に必要としているためではなく(その住処は実は大して村から離れてもいないが)、人間は本来そうすべきだからそうするのだ、という論調である。
「私が森で暮らしてみようと心に決めたのは、人の生活を作るもとの事実と真正面から向かい合いたいと心から望んだからでした」とソローは語る。「私の目にはほとんどの人は、生活のあり方を考えない、不思議で曖昧な暮らしをしながら、神のもの、悪魔のものと、少し性急に結論を下すだけだからです」と。資本主義と、そのころ盛んに建設されていた鉄道(鉄道は良いものと言ったりもしているが)と、働きづめの人々を厭い、税金も払わないので投獄されたりもする。本当はぜいたく品どころか服も家具も家すら最小限で十分で、自然があれば楽しく生きていけるはずなのになぜ皆あくせく働いたりするのか、というナチュラリスト的な意見を語るのだ。
当時の資本主義と産業改革が爆速で膨らんでいったであろうアメリカで、一人で質素に森に住むソローは相当変人扱いされたろうと思う。冒頭100ページくらいがその弁明に充てられていることからもそれはよくわかるし、普通の人々に対し少し当たりが強いのもしょうがないのだろう。まだ資本主義から引き返せる、という思いも当時は感じられたのかもしれない。だけど200年くらい離れた現代日本人が読むと無責任な脱成長論と重なって見えてしまってちょっと微妙な気持ちになるのが正直なところだ。
ただソローが自然の中の暮らしを本当に楽しみ、動植物のことを愛していたのは伝わってくる。鳥たちの鳴き声、ちょっとした仕草の描写、植物や木々の成長など、読んでいて楽しい。もっと暮らしのこまごましたことをたくさん読みたいなと思った。