【感想・ネタバレ】ゆうじょこうのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

熊本の遊郭に売られた15才の少女の物語。

主人公のイチは硫黄島の漁村で生まれ育った。
しかし、生活が苦しい家族によって熊本の遊郭に売られてしまう。
彼女は、これまで自然豊かな島でどちらかというとプリミティブな生活を送ってきており、教育も受けたことが無い。
元々は健康ですごくピュアな感性を持っている明るい子である。
それがいきなり慣れ親しんだ故郷の島を離れ、熊本の遊郭で働くことになる。
悲劇以外の何物でもない。

イチを通して描写される遊郭という世界。
舞台は現代からたかだか100年ちょっと前の時代である。
貧しい家から娘達が売られてきて、毎日のように体を売り10年程の年季明けるまで遊郭という世間と切り離された世界で生きてゆく。
人としての権利なんかは、とっくに蹂躙されていて、病気、犯罪、絶望による自殺で若くして命を失っていくものも多い。
想像を絶しているとしか言いようがない。

物語では、当時の遊郭での娼妓達の生活がリアリティー豊かに描かれている。
(当時の彼女達の生活感が伝わってくるほどであり、著者の入念なリサーチには感服する)
当時大きな遊郭では、読み書き計算を教える学校(女紅場)があり、娼妓達はそこで勉強していたらしい。
イチは女紅場で勉強するのが大好きで、ほぼ毎日通っていた。
中でも作文が好きで、訛がすごくて文章が拙いため中々読みにくい文を書くが、内容は彼女のピュアな感性が光るものである。
この小説の各章の題名はイチの作文から採った文で、各章のハードな内容と彼女の子供っぽい文章のコントラストが強く、年端もいかない子供が過酷

な環境で生き抜いていかなければならない状況が鮮明になり哀愁を誘う。

個人的に一番やりきれなかったシーンがあった。
父親が訪ねてくると聞いて喜んでいたイチは、なけなしのお金で姉の為の手鏡を買い、父親に会ったら渡そうと楽しみにしていたのだが、実は父親は更なる借金を申し込む為に来たのであり、イチが働いて返さなければならない借金はさらに大きくなったのであった。
しかも父親は、イチに会うことなくさっさと島へ帰ってしまう。
イチは、自分の将来に絶望感を持ってしまう。
イチが拙い文章で作文に父も母もいらないと書いていたのが、あまりにも哀れだった。
15才の娘を遊郭に売り、親の借金を返すために信じられない様な苦労をしている彼女を労いもせず、平気で更に借金をしていく親。
ちょっと酷過ぎやしないだろうか・・・
彼女の辛さを思うと涙が止まらなかった。

またこの作品には、元武家の娘で、吉原の遊郭に売られが年季が明けた為、女紅場で教師をしている鐵子さんいう40代半ばの女性が登場する。
彼女は、教育がある女性なので最初は、福沢諭吉の思想に感銘を受け新しい時代の息吹を感じていたが、徐々に福沢諭吉の持つ思想が社会的弱者に対

する配慮を欠いていることに気付き絶望する事になる。
私も今まで福沢諭吉は「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」なんて事を言ってるので非常に啓蒙的な人物と考えていた。
しかし、鐵子さんが指摘したように、彼の思想は社会的弱者を明らかに考慮していない。
彼に対する評価が私の中で少し変わった。

最後にイチと娼妓達(廃業することを望んだ)は遊郭から抜け出す事ができ、外の世界で新しい人生をつかむチャンスを得る。
イチの今後の人生が幸せなものになる事をを切に願う。

歴史の中に消えてしまったが、確かに存在した世界を活写してくれた著者に感謝したい。

0
2018年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

明治の終わり、熊本の遊廓で働く遊女の話。今までに読んだ遊女もの、『吉原手引草』『花宵道中』『滔々と紅』に比べると、あまり悲壮感が無い。主人公が南の島の出身で、最後まで島の方言を使っていたからだろうか。ラストは予想外の幕切れ。こんなに簡単に抜けられるの?

0
2022年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遊女もの、は好きで色々読んだけどなかなか新しい視点とヒロインで面白かった。
村田喜代子、の時点でなんというか土着的な空気は予想していたけれど。
願わくばもうちょっと、色めいていてもよかったかなぁ。好みとして。
ヒロインがあまりにも女、として開いていかないのがちょっと不思議ではあった。

0
2016年05月30日

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