【感想・ネタバレ】脳が壊れたのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年12月15日

脳出血で後遺症が残り、見た目は普通なのだが内面的にはいろいろな障害が残った状態になった作者の、発症・回復・リハビリの過程と現在の困っていることなどを書いたセルフドキュメンタリー。脳の機能不全という観点では、脳で何か病気があった人ばかりではなく、もともと脳の個性として不全を抱えているような人の行動を理...続きを読む解するための示唆に富んでいる。みんながみんな、自分のように感じられたりするわけではないし、行動できるわけでもない。とても実感を持ってそのことが感じられる。

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Posted by ブクログ 2022年11月01日

倒れた後のこととか、心身の不具合など、本当に細やかに噛み砕いて書いてくださってて、とても参考になりました。
これまで取材であった人たちのうまくいかなさも、比べて書いてある内容も、当事者ならではの視点で、新しく、すごくよかったです。

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Posted by ブクログ 2022年06月14日

毎日疲弊している会社員の方、ふとした時に勝手に涙が流れるくらい追い詰めて仕事をしている人がいたら、そんな方にも刺さる言葉が沢山あるのではないかなと、個人的に思います。

私は仕事に没頭して無理をしすぎた結果、会社を退職しました。
対人関係も良かったし、役職を任されて充実していたけれど、休憩もとらず、...続きを読む公休も仕事をし、飲まず食わず寝ずの日々で、辞めてから2週間ほどゆっくり休んだ時に、心身ともに限界であったことを自覚しました。そして、勝手に個人的にブラックな働き方をして、恵まれた会社を離れたことを後悔しました。
この本を読んで、自分の働き方の癖や、悪い思考の癖を、言い当てられている気がしました。ただ、文章がとにかく軽快で、ワードセンスが抜群なので、反省しつつも、少し笑って前に進もうと思うことができました。

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購入済み

中からの渾身のレポート

2022年04月22日

ルポライターが生業の著者が脳梗塞になり、自分に現れた様々な症状とその変化を、内側から懸命に記録している。それだけでも十分に興味深いけれど、そこで苦しんだ症状のひとつひとつは、彼が以前取材で出会った、貧困に苦しむ人・情緒障碍者・薬物中毒者等々と同じではないかと気づく。これらの人たちにも脳の器質異常が生...続きを読むじていた可能性が高い。底辺で困難な立場にある人たちの多くに、この種の医療診断や治療・リハビリが有効かもしれないというのは、今まで見たことが無い視点。

#タメになる #感動する

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Posted by ブクログ 2022年02月05日

脳梗塞の後遺症である高次脳機能障害についてここまでうまく言語化しているのはすごい。
医者が読んでも勉強になるんじゃないかってくらい。
認知症や発達障害も脳の機能が一部壊れるので似ているところがある。
認知症について勉強したくて読んだ1冊。

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Posted by ブクログ 2021年07月17日

最近、職場で高次脳機能障害になった人と知り合ったから読んでみた。
体験をこんな風に書けるのすごいなぁ。

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Posted by ブクログ 2019年10月06日

★回復記に感じる「面倒な人」との共通点★漫画「ギャングース」を連載中に読んでいるとき、そういえば原作者が脳梗塞で、というのを見た気がした。40代で脳梗塞を発症し、その後の変化を体験記として記す。自分を対象としたルポで、あえて病気の深刻さを和らげようとしているのだろうが、筆致が柔らかく読みやすい。
 ...続きを読む何よりも本書がただの回復記とは違うのは、筆者の専門が貧困で、そのときに出会ったやりとりができない人々の様子に自分を重ねることだろう。著者は赤ん坊に戻ったように感情の抑制が効かなくなる。取材相手のことをコミュ障の面倒くさい人だと思っていたが、自分が同じ状況に陥ってみて、そこには脳の問題もあったのではないかと分析する。発達障害は先天的なものかもしれないが、貧困のなかで育つと発達の凸凹をより悪化させるということなのか。もちろん脳梗塞は場所によって差は大きいだろうが。

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Posted by ブクログ 2019年05月30日

鈴木大介のことは本書を読む前に「普通は入れない場所から、普通は思いつかない切り口で、普通は到達できない深さまで掘り下げて書く人」という印象があった。そういう著者が脳梗塞をサバイブして書いた作品ということで、とてつもなく高い期待を持って読みはじめ、とてつもなく高い満足度で読み終えた。
鈴木大介、ただも...続きを読むのではない。
著者の持つ偏執的なこだわりと働きすぎが過去の作品と人物を作り上げ、奥さんを救い、奥さんを苦しめ、本人の脳を破壊し、リハビリをやり抜き、本人の脳を修復し、新たな境地に達した。
いやはや。
しかも、治療の過程で何度も「今までの考え方感じ方は浅かった、分かったようなことを言っていたけど分かっていなかった」ような境地に至るのだ。何度も。鈴木は決して同情をよせられるような社会的な弱者ではない。平坦ではない道のりを本人の才覚と努力でくぐり抜けてきたような、ある種の勝者強者である。
「なぜ罪も咎もない彼が苦しまなければならないのか」というロマンチックな同情の余地はない。それだけに一層、苦しみの独白が読んでいる私の胸をえぐる。
脳は脆い。人は強い。性格は変えられない。人は変われる。
これからの鈴木には、認知症の世界を描いて欲しいなぁ。NHKドキュメンタリー的な描き方ではなく、「あちら側」を見てきた鈴木にしか書けない世界があるような気がする。

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Posted by ブクログ 2019年04月22日

脳梗塞の後遺症としての高次脳機能障害の苦しみを、その当事者が実体験、しかも進行形の体験として書くというとんでもない一冊。

私は鬱なので、頭痛腹痛肋間神経痛から様々な症状が出ているもんで、何かと自分の身体が心配になるんだけど、この本を読んでますます心配になった。

自分が同じような状態になったら誰に...続きを読む頼るのか?頼れるのか?頼っていいのか?

妻ではないな。ただでさえ育児に奔走してくれている妻にさらなる負担はかけられない。それは身をもって知っている。
実の親もないな。高齢だし、父に至ってはすでに軽度の脳梗塞を起こして療養中だ(元気だけど)。そのうえ、著者とは違うが、親に頼るのはそもそも苦手だ。

うわぁ、こりゃ苦しいぞ。

これ、感想じゃないな…

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Posted by ブクログ 2019年04月09日

介護の仕事をしていると、“半側空間無視”というフレーズに接することが多々ある。実際にそういった障害を持っている方がたに接するのだけれど、顕著に障害が出ている場面に出くわすことはなかった。

著者は、脳梗塞を発症し、それに伴う後遺症が残ったのだけれど、ルポライターという職業柄、自分自身を取材し、“高次...続きを読む脳機能障害とはこういうことだよ”をわかりやすく読ませてくれる。
今まで接してきた方々は、言葉で発信することはなかったけれど、こんな風に見えたり、感じたりしてきたのだろう。

自分自身を取材するにあたって、リハビリへの熱意が尋常ではなかったようで、その甲斐あって(?)壊れた脳の機能を他の部分で補完できたのだろう。仕事にも復帰し、良い本を書いてくれた。

介護・看護・リハビリに関わる方にはオススメの一冊。

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Posted by ブクログ 2019年02月26日

脳に障害が生じ、そのことで生じる変化が、克明に、かつユーモアを交えて記録されている。
認知症の方、脳梗塞後遺症の方、さらには発達障害の方と関わる方には、かなりオススメできる本だ。

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Posted by ブクログ 2018年11月20日

私の周囲でも脳梗塞という話がちらほら聞こえてくるようになり、さすがに少し気になって手にした一冊。
現役バリバリのルポライターが41歳の時に脳梗塞で倒れ、本書はそのセルフルポだ。
脳が障害を起こすと何が起こるか。とても想像などできないのだが、そこはルポライター。この説明しづらい状況を何とか文字にしよう...続きを読むと躍起になる。自分の左側が見られない症状を「全裸の義母」(=見たくないもの、見てはいけないものが自分の左側にある、の意)で表現するあたりは、まさに真骨頂。
などと書くと、単なる明るい闘病記と聞こえるかもしれないが、さにあらず。著者は、高次機能障害で人の顔を正面から見ることができなくなり、感情が暴走し、注意力が散漫になるのだが、これに強い既視感を覚える。それは、これまで自身が取材してきた中で出会った情緒障害者たち、貧困に陥った女子たちがとった行動と同じではないかと。そこで著者は、自分のこれまでの取材の浅さに気づき、同時に脳梗塞を発症するに至った要因は、自身の性格や思想、それに基づく行動にあったと結論する。ここに至って、本書は闘病記の域を超え、人生の再生物語へと昇華した。
そう考えると、第8章以降のかなり個人的な話の記述、特に著者の妻に関するくだりが大きな意味を持ってくる。かなりユニークな人物であることは、この本の前半部分でも垣間見れるが、その理由が同章で明らかになる。彼女は若年期に精神障害を患った経験があるうえ、結婚後に脳腫瘍の摘出手術を経験しているのだ。言ってみれば、彼が取材対象としていて、既視感を覚えた人物たちの先人であり、かつ、脳の病の先人でもあったのだ。脳梗塞で倒れ、リハビリを続ける著者にとって、これほど強いサポーターがいるだろうか。再生物語は始まったばかりだ。

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Posted by ブクログ 2018年09月24日

突然の脳梗塞の後遺症として高次脳機能障害となった取材記者だった筆者。
想像を絶する(不思議さという点で)不自由さを実体験だからこそ、また取材記者だからこそ、しっかりと伝えてくれる。またその脳の損傷による不自然な言動が、不良や貧困をテーマで取材した人たちの不愉快な(理解できない)言動と一致していたとい...続きを読むう驚きの発見もある。
軽妙な語り口だけれど、内容は重要,深刻で、知らないこと、驚くことの連続だった。一読すべき本です!

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Posted by ブクログ 2018年08月03日

感情を抑えられなくなると何が大変なのか
リハビリは何を目的としているのか
どんなことが出来なくなるのか
具体的に書かれていて とても分かりやすい
病気で見えてきた
人と自分との関係 そして人への感謝
脳が健康な間にしっかり読んでおいてよかったと
思える本でした

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年07月07日

脳梗塞を患い、一命は取り留めたが高次脳機能障害が残ってしまった作者。しかし、自らが新たに抱えたこの障害が、発達障害のそれと酷似していることに気づき、自らに取材してその様子を書き記そうと決意する。
Web記事から気になって読んだこの本、笑いを交えてコミカルに描かれているが、とても大変な思いをされたのだ...続きを読むろうなと切なくなった。奥様への気持ちの大きさが印象に残った。作者さんが自らを変えようとする姿を見習いたくなった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年06月10日

病気の当事者が、発症から急性期、リハビリにかけての実体験を緻密に著すことができていることに一番驚きました。
罹った者でなければわからない症状や感覚を読み手にズバンと伝わるような比喩を交え緻密に綴り、時にクスリとするような一節も交えていたりして、リズムよく一気に読んでしまいました。

リハビリを若者の...続きを読む発達支援と積極的に結びつけられないかという問題提起は目から鱗。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年06月01日

高次脳機能障害の当事者の方が、ご自身を振り返り解説された本。
『奇跡の脳』に近いものがあるけれど、日本人の本業ルポライターの方が書かれただけあって、こちらのほうが身近な例や生活の中で「あれか」と思いあたる点が多い。
具体的な症状のひとつひとつにはなんとなく分かるものもあれば、言語化されていてもどんな...続きを読む感覚なのか想像もつかないものもある。その理解の出来なさに、高次脳機能障害の難しさを感じる。

気づきの多い一冊だったけれど特にはっとしたのは第8章で個性的な配偶者の病的な家事のできなさを解説してから、脳梗塞の主因は自分自身だと言い切るくだり。「僕が彼女の家事を奪ってきただけだった」と、こう言えるのはすごいことだと思う。
あとがきに配偶者の方のコメントも有り、著者から見て意外なたくましさを発揮したようでいて、実は本人の中ではとっくに肚が決まっていたことが書かれていて、驚かされる。

あとは第10章の「人の縁」は資産だ、のくだり。
ほんとになあ…と思うのだけど、なかなか思うように築けない者としては身につまされる思いで読んだ。ほんとになあ…。

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Posted by ブクログ 2018年03月24日

本書は、取材記者である著者が、脳梗塞を患い、高次脳機能障害となった体験を克明に記録したものである。例えば、呂律が回らず発話ができない。手の指が動かせない。いわゆる半側空間無視(左側にあるものを認識できない)。その後徐々に回復していくも、右側にあるものから目が離せなくなり注視してしまう、感情が溢れてき...続きを読むて(感情失禁)それを抑えるために顔がニヤけてしまうといった「不自由感」を著者は体験する。
しかし、著者の場合、なまじ自立歩行ができるだけに、傍目には「ちょっとヘンな人」で済まされてしまうのではないか。半身不随などのわかりやすい障害があれば、同情や支援の手を差し伸べてもらえるかもしれないが、こうした健常者と障害者のボーダーライン上にいる人間は、その苦しみをわかってもらえない。そのことに著者は気づき、その「当事者意識を言語化」しようと試みる。
また、その過程で著者は、自分の感じている不自由感が、高次脳だけでなく、精神疾患やうつ病、さらには社会の底辺に追いやられている貧困層にも当てはまることを、自らの取材経験から悟る。彼らもまた、境界線上にいる人々であり、適切な支援を受けられていない、声なき声なのだ。
個人的なことを書く。私の勤める会社で、ある時期から遅刻や欠勤が目立つようになり、出勤してきても覇気がなく、明らかに仕事に身が入らないといった同僚がいた。その同僚はほどなくして退職してしまったが、私は彼のことを、ただやる気がないだけだ、もっと気合いを入れろ、と勝手に思っていた。しかし、違っていた。いま思えば、彼はうつ病だったのだ。うつ病患者にとって、気分が落ち込む、何もやる気が起きないといったことは、どうしようもないことであり、ちょっと休んだくらいでよくなるものではない。ましてや気合いでどうにかなるものでもない。彼に必要なのは、適切な「治療」だ。どうして私はそのことに気づけなかったのだろう。どうして私は彼に優しく接することができなかったのだろう。
このように、世の中には声を上げられずに苦しんでいる人々、「不自由感」に苦しみながらも表現の手段や機会を持たない人々がいる。せめてその代弁者になれないだろうか。それが著者の本書を書く強い動機となっている。
こう書くと、何やら辛気臭くて暗い本のように思うかもしれないが、そうではない。著者の性格ゆえなのだろう、自分自身を取材しながらも、そのトーンは常に明るく、ユーモアに溢れている。脳梗塞になってよかったとは言えないだろうが、結果として「黒字決算」だったと書いている。
人生にはさまざまなことが起こる。しかし、その善し悪しはそのときどきで決まるものではない。そのときは損したと思っても、あとでお釣りが返ってくることもある。それはその人しだいである。著者の前向きな姿勢は、読者に勇気を与えると信じる。

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Posted by ブクログ 2023年05月26日

高次脳機能障害の当事者研究でここまで詳細な記録ははじめて読みました。
専門職なら必読書としていいのではないかと思えるほどに示唆に富んだ内容でした。

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Posted by ブクログ 2021年01月24日

脳梗塞から高次脳機能障害になったライターの話。

病気の話なので当然ながら重苦しい描写が続くが、ライターだけあって文章がうまく、読みやすかった。

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Posted by ブクログ 2019年03月09日

脳に障害がある状態の時、どう感じてるのか、どうしてほしいのか、たいがいの場合、本人は、伝えられないし、障害のない人は、理解出来ない
鈴木さんのおかげでやっとわかった

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Posted by ブクログ 2019年01月27日

若くして高次脳障害になった著者のリハビリによる回復の記録は貴重なのではないか。粘土の中からおはじきを取り出すリハビリがいかに難しかったか、両手に荷物を持ってしまうと他のことができなくなってしまうことのはがゆさ、リハビリは感動の連続、やがて著者はこれまでの取材対象者が脳を壊していたことに気づく。老人だ...続きを読むけではなく若い人にも作業療法士による脳のケアを、こんなこと当事者にしかなかなか気づけない。
「音楽で泣ける感受性を失ったらどうしよう?」と心配していた著者だが、レディガガのBorn This Wayを聞いただけでボロボロと涙が出るようになり、妻との関係も自分の性格も前とは変り、「脳梗塞になって良かったと思えるほどの(以前の自分の考え方の)欠落に気付いた」とまで言う。
「高次脳障害者には助けが必要か聞かずに助けてほしい。”大丈夫?”と聞けば彼らは“大丈夫”と答えてしまう。」著者の友人夫妻は心配して敢えてアポイントなしで自宅に来てくれ、本当に助けになったという。

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Posted by ブクログ 2018年10月23日

脳梗塞を起こしたジャーナリストによる、高次脳による後遺症をはじめとする体験を文字にしたもの。後遺症がいかに苦しいか、どのように感じているか、当事者の感覚を上手く言語化している。後遺症の症状が、以前に取材をした相手の発達障害や鬱病をはじめとする精神疾患・障害と似ており、それら当事者の感覚を代弁している...続きを読むといえる。参考になった。
「原因が脳梗塞だろうと何(精神障害など)だろうと、結果として「脳が壊れた」状態になっているならば、出てくる障害や当事者感覚には多くの共通性や類似性があるようなのです」p9
「鈴木君さあ、リハビリってのはさあ、あの、なんつうか、そうそう、駄菓子屋のくじ引きなんだよね。駄菓子屋にあるだろ、壁に引っかかってるくじの束が。あれ、これかな?これじゃねーだろ、こっちかな?ってかんじで、あちこち手当たり次第に力を入れてみて、指動かそうとしてるのに足が動いたり顔が引きつったりするでしょ。そんで駄目でも片っ端から試してみて、それでも全部はずれくじで、その挙げ句に「ようやく動いたあー」っていうのが、アタリくじ。で、いっぺん当たったら、そのアタリくじを何度も引いて、場所をおぼえちゃって、一発でアタリ引けるようになるっつうのが、リハビリなわけ。分かる?」p54
「本当に、所詮人間なんて、電気信号で動く高精度の機械に他ならない。手を開こうとすると、おしっこが出そうになるなんていうのは、断線や短絡箇所のある自動車のハーネスに通電テストをしているような感覚だ。ヘッドライトの配線に通電しようとしたら、やだもーブレーキランプが光っちゃった、のような」p56
「ボールもまともに投げられないくせに生意気な発言をする子供は、あっという間にイジメの対象になってしまう」p78
「(貧困者)役所に提出する所得証明などの書類の説明や、書き込みが必要な申請物などの説明を始めると、高確率で気絶するような勢いで寝るのだ。公的な書類などを用意しても、5行読めればいい方で、音読してあげてもさっぱり頭に入っていかないようなのだ(著者も後遺症で同じ体験をしている)」p79
「ふらつく足で病院内の売店に向かい、レジで小銭を出そうとすれば、目のピントが合わずに小銭は二重に見え、指は思うように動かずで、遅遅として狙った数の小銭を出せない。小銭を手に持ち続けるための集中力すら維持できず、一枚二枚と硬貨が手から零れ落ちる。それだけならまだしも、数枚の小銭を数えると、何枚まで数えたのか分からなくなってしまう。そんな僕をイライラした顔で見ているレジのおばちゃんの気配に、心の中は苛立ちとパニックの暴風雨が吹き荒れる」p80
「(青年の貧困者)彼ら彼女らに必要なのは、いち早く生産の現場に戻そうとする就業支援ではなく、医療的なケアなのではないか。それも精神科領域ではなく、僕の受けているようなリハビリテーション医療なのではないか」p82
「これほどに優れた人材(リハビリ)が医師の指示下でなければ動けず、退院してもすでに生産に寄与しない高齢者のためにそのスキルが浪費されているのは、いかがなものか。これは若者や子供の貧困が広まる中、高齢者ばかりが優遇される老尊若卑な現代日本の縮図ではないでしょうか」p84
「1時間も歩くと、ポケットの中も小学生男子になった。夜のうちに敷地の街灯に飛来したであろうノコギリクワガタの死体。ちょっとつぶれたコクワガタの死体。分厚いガラスの破片。ビー玉大。ビー玉小には見事なビードロ模様。盛夏の早朝、こんな収穫物をブロック塀の上に並べる僕を、出勤してきた病院職員たちは奇異の目で見ていく。ふふふ、大人め、この楽しさ、この好奇心にあふれた視野、貴様らの健常な脳みそではわかるまいよ。ビバ、選ばれし小学生脳。なるほど楽しい」p96
「(妻の言葉)入院生活に入った夫を見て率直な感想は「人間は脳が壊れるとこんなにも退化するのか」です」p224

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Posted by ブクログ 2018年07月28日

【文章】
 とても読み易い
【ハマり】
 ★★★★・
【共感度】
 ★★・・・
【気付き】
 ★★★★★

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Posted by ブクログ 2018年06月17日

警察庁が毎年発表している犯罪白書の中に、自殺者数の統計があります。
自殺を選ぶ原因、1位が病気、2位が経済・金銭です。
この本を読むと、今まで、できたことが、全くできなくなると人は、ヤバいことを考えるなと、
よくわかります。
貧困女子の取材から、著者の名前を知っていたので、
まさか、最近、脳の機能障...続きを読む害を発症していたとは、思いませんでした。

また、奥様が、かなりヘビーな人だったことも、この著作で知りました。
あらためて思うのは、生死や長い苦痛を伴う病気になると、人は、自殺を考えるが、
自殺を選ばない条件があるとするならば、周囲の人間のサポートと、それまでの人間関係なんだと思いました。
多くの人は、病気をしても、助けてくれる人は、少ないんじゃないでしょうか?
また、助けを呼ぼうと、思わない人は、結構いると思います。
そういう意味は、著者は、凄く恵まれている人なんだと思います。

現代の日本は、ますます、生活が便利になっていますが、それと比例して、
人間関係は箕臼になっています。友人と呼べる人もいないし、家族関係も、あんまり、
やりがいある仕事を持っている人は少数で、いつクビを切られるか、わからない人もたくさんいます。
そういういった状況で、「病気」になるケースも多いと思います。
個人的には、そういう状況だったら、どうすればいいのかな?と考えます。
もちろんそうなる前に、「ライフライン」を構築するように動かなくてはいけませんが、
今の日本では、それができる人は、かなり優秀な人では、ないでしょうか?

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Posted by ブクログ 2024年04月07日

突然の脳梗塞。命は取り留めたが、外からは見えない障害。当事者が語る。

高次脳機能障害とは、脳卒中などで脳の一部を損傷し、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態をいう。著者は、発話や行為に一部不自由が生じたようだが、これが周りからは分かりにくい。例えば、半側空間無視なんて知...続きを読むらなかったが、どちらか左右の空間を認知出来ず、極端に言えば左半分もしくは右半分の空間がなくなってしまっている状態。著者は、片側に何か嫌なものがいる感覚と語る。

脳梗塞後には、感情のコントロールができなくなる「感情失禁」になる事も。穏やかだった人が急に怒り出すなど。著者もこの状態に時々陥る。

大変な事だが、本職ライター。面白おかしく、読みやすく。何よりほのぼのとした気持ちになるのは文面からも伝わる夫婦仲、奥様愛。発達障害で日常生活も一見無茶苦茶に見える奥さん。でも、そこをお互いのできる事で補い合う魅力的な夫婦。

脳梗塞後のリアルとそれを抱えながらの仲睦まじき?夫婦生活。本著の魅力は大きくこの二点。他人事ではないです。どちらも。

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Posted by ブクログ 2023年07月24日

養老チョイスから。文筆家が脳障害の当事者になる。性状や程度によっては、復帰困難のレベルまでダメージを受けた可能性もあろうけど、著者はそれは回避できた。もちろんリハビリの成果も多々あろうけど、運の要素もかなり大きい。さておき、内容は何といっても、当事者がどうやって能力を回復させていくのか、その詳細が分...続きを読むかりやすく書かれていること。あと本筋からは外れるけど、本書の最後らへんでチラッと登場する父親が、かのネトウヨ新書で語り直された訳ですね。なるほど。

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Posted by ブクログ 2021年10月30日

★★★
今月7冊目
ルポライターが41歳で脳梗塞に。
かなり回復するも見た目ではわからない高次脳機能障害に悩む。
が、優しくなれて7割は病気になって良かったと、、

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Posted by ブクログ 2018年10月29日

脳が壊れると今まで当たり前のようにできていたことが、できなくなるというのは言葉ではわかるものの身体的にはなかなか理解できない。体験者としてジャーナリストの使命感で言語化した、ということなのだが、表現が少し若向きでジェネレーションギャップを感じてしまうのが残念。発達障害気味の奥さんの後書きが味があって...続きを読むよい。
脳梗塞とは性格習慣病というのはよい言葉だと思った。

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Posted by ブクログ 2017年02月02日

 貧困を取り扱うライターが体を壊し脳溢血を起こした。
 そして、高機能脳障害という、目に見えない障害が残った。
 からだの不自由さは目に見える。しかし、脳の障害、こころの障害については目に見えない。

 そして、著者は自身が実際に脳に障害を持ち、今まで対象としていた貧困に陥る彼、彼女らが同じように脳...続きを読む機能に障害を負っているのではないかと思いいたる。
 著者の言う脳が壊れたことによりできないことも多くなる。
 しかし、脳は壊れたままではなく、リハビリテーションによりある程度の機能は回復する。
 問題は脳が壊れていることが目に見えてわからないということ。
 治療のテーブルに乗れない人がたくさん居るということではなかろうか。

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Posted by ブクログ 2020年10月26日

ルポライターの著者が41歳で脳梗塞を発症し、治療からリハビリの過程で体験したことを当事者感覚で綴っている。不自由で不思議な体の感覚や、コントロールできない感情などをうまく言語化しており、プロのジャーナリストの凄さも同時に感じる。最後に、人の縁は具体的な資産だと主張していおり、周囲にいる人の当事者への...続きを読む接し方についても教えてくれている。

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