あらすじ
「…オヤジ…がんなんだ」 頻繁に連絡を取り合うわけでもない兄からの、突然の電話。奈津子は父親のためにできるだけのことをしてあげたいと願うが、一筋縄ではいかなかった。幼子のように分別がなくわがままな夫、感情的で自分勝手な母親。それぞれへ妻として、娘として、思いやりをもって接するも、奈津子の愛は空回りし続けていた。想いが伝わらないことにやきもきしながら関係性に悩む奈津子に、大丈夫だと背中を押してくれたのはたった一人、弱っていく父親だった。余命わずかな父親とのやりとりを軸に、愛をもって強くしなやかに生きる女性の姿を描いた家族小説。
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Posted by ブクログ
頻繁に連絡を取り合う兄弟でもなかった兄からの突然の電話。
良からぬことだろうと察しはつく。
兄が電話越しに何度もため息をつくのは、奈津子が3年半ほど前に自殺未遂をしたことからの気遣いだろうか。
話の内容は、父が胃癌ですでに手術も終えて自宅に戻っているとのこと。
聞けば、あと半年らしいと。
そこから奈津子は、少しでも父といる時間を作ろうと帰省するのだが…。
感情的で自分勝手な母にうんざりしたり、自分の夫は子どものようにわがままで…。
弱っていく父を見ながらなすすべもなく、自分の想いもうまく伝わらない。
そんな状態が父が亡くなるまでずっと続いて…。
読んでいて、家族とはなんとややこしいものなのかと思ってしまう。
そして、とても難しいものであると。
煩わしささえ感じるときもあって、だが縁をきるわけにはいかず、亡くなるまで関係は続く。
よほど他人の方が気楽では…と思ってしまう。
そう思う自分になんて薄情なんだろうと嫌悪したり…。
自分は、愛情が薄い人間なんだなと確認できるのが情け無い。
奈津子の兄が言っていたことに
人生はなぜこんなに困難に満ちているか、ということで人はみな学ぶために生きているということだと。
人はそれぞれに運命があり、そしてなにかを学ぶために生まれてきているという。
人はいかにコミュニケーションが大切かということを学べたとあった。
そうかもしれない。
きっとそうだろうと思った。