あらすじ
本書は不遜な歴史書だ!
ギリシャの「科学」はポエムにすぎない。
物理こそ科学のさきがけであり、科学の中の科学である。
化学、生物学は物理学に数百年遅れていた。
数学は科学とは違う――。
1979年のノーベル物理学賞を受賞した著者が、
テキサス大学の教養課程の学部生にむけて行っていた講義のノートをもとに
綴られた本書は、欧米で科学者、歴史学者、哲学者をも巻きこんだ大論争の書となった。
「美しくあれかし」というイデアから論理を打ち立てたギリシャの時代の哲学が
いかに科学ではないか。アリストテレスやプラトンは、今日の基準からすればいかに
誤っていたか。容赦なく現代の科学者の目で過去を裁くことで、
「観察」「実験」「実証」をもとにした「科学」が成立するまでの歴史が姿を現す。
解説・大栗博司 (理論物理学者)
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Posted by ブクログ
とてもざっくりと言ってしまうと、遥か紀元前5世紀のギリシャ物理学から21世紀の現代に至るまでの、「科学」もしくは「科学と呼ばれ、みなされたもの」を概観する「科学分野の歴史書」であり、もう少し細かく言うと、過去に「科学者」と呼ばれた人たちや理論への批評的論考、でもある。刊行された際、歴史家や哲学者から猛反発を浴び、大論争を巻き起こした本らしいが、むべなるかな。
特に科学界や哲学界に拘りも誇りもない、いち読者として読むならば、本書はとても面白い。古代を扱う1章から8章、中世を扱う9章と10章あたりは、学校の物理や世界史で習った(ような気がする)様々な散らばった知識を、「科学の発展の歴史」という一本の道でまとめ上げていくのにとても便利で、頭からずっと読み続けていくと読みやすい。
一方、著者が「科学革命」と題した11章以降は、各章で特徴的なトピックが扱われているので、例えば天文学を知りたいなら11章、ニュートンという希代の天才について知りたいなら13章と、個別に分けて読んでも楽しい。
終章である15章では、ニュートン以後の世界で統一されたり別の学問分野の中に収斂したりした科学分野が概説されている一方、いまだ未開の部分がある分野についても簡単ではあるが紹介されている。ここを読むと、科学は分野によって程度の差はあれ、いずれも発展途上であり、著者の言葉を借りれば「壮大な物語の最中にいまだ立っている」のだ、ということが、素人であってもうっすらと理解できる。
科学者はきっと、自分の研究が今、世界のどのあたりに位置しているかなどは考えていないのだろう。今、わかっていることを踏まえつつ、分かっていることを疑い、分かっているのかいないのかすら分からないものを追い続ける。
そういう世界があるのだな、というのを知れたのは、読書体験としてはとても貴重で、楽しかった。
Posted by ブクログ
ちなみに表紙はルーブル所蔵の「天文学者」by フェルメール。センス良過ぎ。
「はじめに」から、ホイッグ史観上等と社会構成主義者に啖呵切り。あーらら、面白くなりそう。後出しジャンケン並に卑怯者扱いされる(コトもある)ホイッグ史観だけど、分かっちゃってる私らが自分の手足を縛るマネしても限界あると思うんですけどね、ってことでワインバーグに一票。
「科学に影響を与えてきた5つの分野ー詩、数学、哲学、テクノロジー、宗教」と打ち上げた割にはあまり絡まないトコもあるのはご愛嬌。ベーコンやデカルトまでは頑張ってみたけど、現代哲学は手に余るよなあ。ダーウィンとかひとかすりだしw
無神論者でない科学者達が己の宗教観と研究をどう折り合いつけるかなんて、考えたことなかった。宗教が世界を支配してた時代、神様出すと話が進まないんで、取り敢えず置いといて自分の研究に取り組んでたのね… あ、言うても一神教限定か⁇