あらすじ
世論調査の数字は不思議だ。同じような質問なのに、結果はしばしば各社各様。どれが本当の数字なのか? どの数字が信頼できるのか? 本書は、そんな疑問に答えながら、世論調査の仕組みと働きについて紹介する。結果次第では内閣の命運も左右するといわれる世論調査。それは国民の意思や意見のありかを伝え、権力を監視する強力な手段でもある。民主主義の礎としての重要性を説く。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
新聞などの世論調査では、内閣支持率、政策に対する賛成や反対の割合、選挙後の獲得議席数の予測などの様々なデータが発表されているのをよく見るが、世論調査とはどのようにして調べるのだろう。そもそも世論調査に協力した数千人程度の人々からの回答が民意を反映していると考えられるのだろうか。選挙の投票後、まだほとんど開票が進まないうちに当選確実が出るのはなぜなのか。本書では世論調査の歴史を振り返りながら時代とともに変わってきた世論調査の方法を解説し、その有益性や問題点について具体例を挙げて考察する。
現在一般的に行われている世論調査の方法は、コンピュータでランダムに発生させた固定電話の番号に電話をかけるRDD (Random Digit Dialing)という方法である。これは従来の面接法や配付回収法、郵送法などと比べて短時間で実施することができ、費用も抑えられる。その機動性の良さが評価されてRDD法はマスメディアの世論調査の中核をなすようになった。そして、頻繁に行われる世論調査で示される内閣支持率などのデータは、現在では政権や政策に対して大きな影響力をもつ程に重要視されている。
しかし世論調査は、調査の趣旨は同じでも調査機関や調査方法によって結果が異なることがよくある。回答者は、見知らぬ他人に回答を告げる面接法と他人の顔を見ることがない郵送法では異なる回答をすることがあるし、RDD法でも質問文の作り方や選択肢の順番によって選ぶ回答は変わってくる。つまり質問の仕方によっては世論調査ではなく、調査者の望みの方向に回答を誘導する世論操作になってしまう危険があるのだ。現在世論調査は、携帯電話を含むRDD法やインターネット調査、ビッグデータを利用する方法など色々な方法が研究されており、今後も様々な方法で実施されていくだろう。そこで重要なのは、どんな情報をどんな方法で集めたのかをきちんと把握した上で、世論調査のデータを読み解くことなのだ。
世論調査は、直接政治に関われない多くの人達の意見を国や行政に届けたり、権力を監視したりするための「武器」である。世論調査に答えることの重要さを理解して、民主主義社会の中で私達に与えられたこの「武器」を有効に利用しようというのが著者の主張である。何気なく見ていた世論調査も、その重要性と問題点を理解すると、データから様々なことが分かってくる。本書を読んだ後で目にする世論調査のデータは、今まで以上に興味深く思えるに違いない。
Posted by ブクログ
日本の世論調査の歴史、調査方法、そして読み解くための方法を、コンパクトにまとめてある。
調査する側と、それを利用する側の両方を経験した筆者だけに、良書だと思う。
RDD調査については、ほかの本でも読んだことがあったが、欠点や、それを克服しようと工夫されつつある現状について書かれていたので興味深かった。
また、内閣支持率や、集団的自衛権についての新聞各社の調査結果になぜ違いが生まれるかの章が面白い。
このあたり、特定の政治的主張を持った人には不愉快に感じられるかもしれないが、ほかの本では突っ込んで記述することが少ないだけに、貴重だ。
Posted by ブクログ
朝日の柄谷行人さん書評から読んでみた。
世論調査ってプロパガンダでしかないと思っていたけれど、科学なんだなって見直した。
テレビっ子であった私はマスコミのコマーシャルとステルスマーケティング、番組宣伝、露骨なプロパガンダにどっぷりつかって生きてきた。そういったものを反省しようと心がけている。世論調査なんてマスコミの自作自演にしか見えなかった。自分で報道して自分で調査する。そこのどこに公正さがあるのかわからなかった。
この本を読んで世論調査とは科学であると知った。科学=帰納としてあるのだ。帰納とは如何にあるのか?それは反省・自己省察から自らの悟性によってありえる。悟性から知性はある。そして反知性主義として自らの悟性を否定し又は悟性を否定し服従させようとする支配がある。マスコミのバイアスのかかった世論調査はその科学性=帰納を否定し服従させる反知性主義となっているけれど、世論調査自体は科学=帰納としてあることを知った。そういうことなら僕はその科学=帰納を支持する。
世論調査への不信感の正当性と世論調査の可能性を知った。
Posted by ブクログ
世論調査に関しては、ニュースで見聞きする程度の素人読者です。
著者の岩本裕さんは、NHK「週刊こどもニュース」3代目お父さんとして活躍された方で、とてわかりやすい文章・表現が使われていたので読みやすかったです。
世論調査の世論という漢字のオリジナルは「世論」(=せろん)ではなく「輿論」(=よろん)であったこと、戦後のマスメディアが実施する世論調査をGHQが育成していたことは、全く知りませんでした。
また、同じ目的の世論調査の結果が各社で異なる原因、結果が異なっている場合の読み方など勉強になりました。
調査機関やサンプリング方法、質問の仕方などが結果に影響を及ぼす要因なり得るということも、忘れてはいけないと思いました。
世論調査は民意を示す絶好のチャンスなので、なるべく調査に協力していきたいと思います。
Posted by ブクログ
良書。
NHKの子供ニュースをやられてた方と言うだけでも私としては評価が高い。
現在、選挙では世論調査が大きな影響力を持っている。
過去から色々な失敗等を重ね、今の方法になった。
やっぱり、統計結果は鵜呑みにするのではなく、裏に
隠れた内容を自分なりに推測することが大切。
Posted by ブクログ
世論調査の歴史、方法、現状を非常にわかりやすくまとめている。読売や産経が社会学の理論では禁じ手の文言による「中間的選択肢」を用いて、集団的自衛権容認に調査結果をミスリードした問題を的確に指摘するなど、現在の世論調査が抱える諸問題を炙り出している。世論調査を民主主義の維持・発展の上で必要なものと見做しているが、著者の建前上の意図とは裏腹に、むしろ世論調査が民主主義にとって有害な世論操作ツールになりつつある現状を示している。
Posted by ブクログ
世論調査におけるバイアスの存在と、その排除が不可能な位難しいことが分かった。利用するとき注意が必要なこと、世論調査に協力する事を心掛けましょう!