【感想・ネタバレ】ペルシャの幻術師のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「ペルシャの幻術師」
外大で蒙古語を学んだというモンゴルびいきのモンゴル小説が読めるのかと思いきや、ナンの目から見たモンゴル人の描写が容赦なくてこう、いたたまれなくなってくる。ちびで粗野で、かっこいいはずの騎馬での戦闘もナンから見れば野蛮なだけで、殺すことしか楽しみを持たない幼稚な馬鹿。その上、色恋下手。そばにいることを強制して逃げるのを許さないくせに「でも許しがない限り決して手は出さない」とか果てしなく嫌悪が募るだけですよ…
でも容赦がないだけで悪意は含まれてない気がするんだよなあ。別段美化も醜化もせず、正直に書いただけという感じ。ナンや幻術師アッサムはとてもきれいな「物語の登場人物」なのに、モンゴルの描写は生々しい。と、思う。
終わり方はあっけなかった。

「戈壁の匈奴」
戈壁(ゴビ)て。読めるか。でも匈奴は変換候補にいるんだね。
実体の伴わない単語でしか知らなかった「匈奴」のイメージがどんどん具体化されていく。
そうか、草原の男達ってこういう感じか!と。
正しいかなんてわからないけど、納得させる肖像を作り上げてしまう、これが作家のすごさだよな。
テムジンの印象はかなり変わった。
考古学者の空想から広がった物語が、またひとつの壷に収束して終わる美しい形。
この自家発電妄想力の備わった人が考古学者になるのだろう。

「兜率天の巡礼」
あ、もう西方アジアのお話終わりですか…儚かったなー日本史じゃない司馬遼先生、と思ったら嬉しい誤算。
ローマから大和への壮大な物語だった。

宗教が日本に根付かない理由について。
異端として追われ、コンスタンティノープルから長い長い流亡の果てに日本へたどり着いた普洞王の一行は、祖国とは異なる、その穏やかな気候に驚く。ここでは、自然は人間に牙を向かない。
「このようなくにに住む者達は、一体、悪というものを知っているであろうか。悪を知らなければ、おそらく善をも知るまい。善悪を知らずして生涯をすごせる天地こそ、天国というべきであろう。」
この地の人びとにとって、神とは生きていく指針を与える厳格な主人ではなく、生活の隣で一緒に暮らす友人だった。
ああつまり「トトロ」ってそういうことか。

「下請忍者」
「外法仏」
「牛黄加持」
「飛び加藤」
「果心居士の幻術」

忍者話は梟の城だけでもないのね。怪かしの術にもいろいろあっておもしろい。

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2013年10月14日

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