あらすじ
マルクスの理論はさまざまな悪罵を投げつけられてきた。だが、カール・マルクスその人の理論は、今なお社会変革の最強の武器であり続けている。本書は最新の文献研究からカール・マルクスの実像に迫り、その思想の核心を明らかにする。これまで知られてこなかった晩期マルクスの経済学批判のアクチュアリティが、今ここに甦る!
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Posted by ブクログ
マルクスの一生のうちの思考の流れ、解釈、実践について
マルクスの思想や資本論についての知識は皆無だったが概要の理解にとても役立った
理解しきれていない部分もあるだろうが共感してるつもりになれるのはマルクスのバックグラウンドあってこその人を思いやれる心があったからなのかなと思った
どうして自分に「頑張らなきゃいけない」ことが根付いているのかが言語化されている部分があった
最大限の価値増殖を追求することをやめてしまえば競争に負けてしまうから労働時間が減らないということ
そしてそのように資本に振り回されるうにち人の心や自然が破壊されていくこと
日本では三六協定の抜け穴があるため労働時間規制は事実上存在していないこと
マルクスが描いた、資本主義に対抗する自由な諸個人のアソシエーションにもとづく社会の具体的なイメージができていないため、今後固めていきたい
後の章で語られていたことしては、
国家による計画経済ではなく、労働者たちのアソシエーションである協同組合が互いに連合し、社会的生産を調整するシステムを持つことで、
アソーシエイトした生産者たちが自分たちの意思で労働配分と生産物配分を行い、生産を調整するため、商品や貨幣が存在する必要がなくなるとのこと(共産党宣言にて書かれているそう)
それによって実現されるのは、労働が生活のための糧を入手するためのやむなく行うものではなく、労働自身が人間にとっての喜びであり、報酬による労働の動機付けや組織する必要がなくなる社会、生産物を各自の必要性に応じて入手する社会であるということ
とても理想的に聞こえる
人が生きやすくなるために自分がどんな思想を持っていけばいいのだろうと思っていたが、現実的な基盤なしには主観的な理論になってしまうということがこの本の大前提であった
啓蒙だけでは社会は変わらない
本気で変えたいと思うのなら基盤が必要
今の構造の中で痛みを和らげるのか、構造から逃げるのか、構造を変えるのか
自分がこれまでやりたいと思っていたことと照らし合わせて立ち位置を明確にしていきたい
Posted by ブクログ
資本論を勘違いしていた
『資本主義は良いよ』と言っているものかと思っていた
資本主義の正体をさらし、
労働者が自由を獲得するためにどう行動すべきかということを問うているのだ。
さて、どう生きていけばいいかしら。
結局行き着くところは、ヒッピー生活??
Posted by ブクログ
マルクス→法、文学、哲学ときて経済へ。
資本論は労働者の搾取をただ語る本ではなく、資本主義経済がなんたるものか、その解釈を与える本。
共産主義のユートピアを目指すか、資本の蓄積こそ攻略法と見出すかはその応用に過ぎない。
物の価値→使用価値と抽象的人間的労働価値
労働とは、貨幣とは、労働とは、労働力とは、勤め人とは、資本とは、資本家とは。
ああこれは資本持たないといけませんはと背中を押してくれる。
Posted by ブクログ
カール・マルクスの生涯を辿りながら、彼の思想を変遷を描いている。マルクスの思想はマルクス主義とは異なる。マルクスはより大きな展望を持ちつつ社会の問題に具体的な解決を求めて取り組み、社会変革のために生涯探究を続けていた。資本主義が進み、グローバリゼーションが広がる現代においてこそ、マルクスの問題提起が生きることを示し、新しいマルクス像を提示しようとしている。
入門書としてもとてもわかりやすい。特に「資本論」については紙幅を割いて説明しているが、現代の日本の問題、ブラック企業や社会的基礎サービス領域の市場化なども例として挙げ、「資本論」が今日の問題とつながっていることを示している。さらに最終章は「資本論」(第1巻)執筆後のマルクスが「物質代謝」論を軸にエコロジー、気候変動、共同体、ジェンダーへと研究を広げて行った姿を書簡や「抜粋ノート」を追跡して明らかにしていく。これほどまでに多くの問題に関心を持っていたことに驚かさせる。気候変動など当時はあまり問題化していない分野まで興味を持っていたことや、農耕共同体に高い評価を与え、決して単線発展的は近代化主義論者ではなかったことに新しい発見があった。
Posted by ブクログ
マルクスについての力のこもった論考。昨今、」マルクスとジェンダー」とか「マルクスとエコロジー」といったタイトルを目にすることがあったが、本書を読んでそれがよく分かった。
Posted by ブクログ
良い意味で新書らしい新書。マルクスの生涯および思想の変遷を追いながら、本丸たる『資本論』について多くの紙数を費やして解説している。その解説も実に懇切丁寧なもので、具体例をいろいろ引きながらうまく噛み砕いている(それでもやっぱり難しいのだが)。とくに著者の注目する物質代謝論から共同体研究に至る晩期マルクスの探求は、この思想家の先進性、スケールの大きさを示すものであり、大変興味深かった。
Posted by ブクログ
マルクスと聞くとイデオロギー色が強かったのかと思っていたが、精緻な歴史・社会分析に基づいたリアリストであった。イメージが一変した。
資本主義の本質である物象化に抵抗する思想家。人間疎外を克服する実践への志向。
なかでも労働力のみ利潤を生むとの指摘、その奥底には労働力の再生産の維持(最低限の生活費)を見抜いた慧眼はすごい。奴隷から賃労働へと至る道は、フーコーにも通じる生権力がそこにあった。
抵抗の拠点は、マイノリティとの連帯、前近代的共同体、地球上の生命活動の全体。
Posted by ブクログ
マルクスの思想をていねいに解説している入門書です。
マルクスの生涯にもある程度説明がされているものの、思想についての解説が中心です。まずは、初期マルクスがヘーゲル左派のなかで疎外についての思索を深めていき、フォイエルバッハを批判するにいたった経緯に触れられています。つづいて、『資本論』において基礎的な概念を順番にとりあげ、それらが資本主義のしくみを解明するためにどのような視角を切り開いたのかということにも立ち入って解説がなされています。
さらに、資本主義の矛盾を解明することによって、未来社会の「産みの苦しみを短くし、やわらげる」ことをめざしたマルクスの構想についての著者自身の考察が展開されます。著者によれば、マルクスが思いえがいた未来社会は、現実の社会主義国家のような計画経済にもとづくものではなく、労働者たちのアソシエーションを拡張することで形成されるものでした。
その具体的内実をうかがい知るための手がかりとして著者が注目しているのが、「物質代謝」の概念です。マルクスは人間を自然の一部とみなすことで、持続可能な社会のありかたを追求しており、彼の思想は現代においてますます大きな意義をもつようになっていると著者は主張します。また、「物質代謝」にかんする研究にもとづいて、晩年のマルクスが世代を再生産するための人間関係について考察をおこなっており、ジェンダー問題にも関心を向けていたことを指摘しています。
最新のマルクス研究の成果を踏まえて、現代において重要性をもつマルクスの魅力が示されており、興味深く読みました。
Posted by ブクログ
資本論研究の第一人者がわかりすく書いた入門書
でも、資本主義の中で生きている私には理解が難しい
労働が世界を作っているから 労働の側面から
社会を分析してみていこうという考えかな
Posted by ブクログ
マルクス初学者であり色んなことを無知すぎる自分でも楽しめた
かなり難解な資本論の、マルクスの興味関心の、全貌とは言わないけど輪郭がぼんやり捉えられたような気になれる
この入門書ですらいろんな言葉が出てきて、定義をその都度思い出しながら読まなければ理解が難しい
コテンラジオで紹介されていたので読んだけどもっと深く知りたくなった、面白い
Posted by ブクログ
カール・マルクスの生涯とその思想の変遷、資本論についてかなり分かりやすく説明されている。とは言っても資本論についてはその独特な言葉の使い方もあってやはり一回読んだぐらいで腑に落ちるとこまでは行かないけど。それでも、どのような時代背景があり、マルクスが何をしたかったのかは何となく理解できる。マルクスが資本主義のシステムについて、何が本質的なのかを徹底的に理論的に科学しようとしたのが資本論ということが。資本主義の行き詰まりがさすがに誰の目にも明らかになりつつ今、その問題点を考える土台としてマルクスの考察は理論モデルとして知っておくことは必要だと思う。
アマプラで観られる「マルクスとエンゲルス」という映画やCOTEN RADIOのマルクスの解説回などもあわせて視聴するのがおすすめ。
Posted by ブクログ
近年のマルクス研究を踏まえたマルクスの思想を初期から晩期までを俯瞰する好著。
構成は、1章が初期マルクス、2章が資本論、3章が晩期マルクスというもの。
2章の資本論のところはちょっと難しい感じはあるけど、白井聡さんの解説などを読んでいたので、なんとなく理解できた。
1章は、どうしてマルクスが哲学に興味をもち、それが経済学への興味に展開し、社会変革活動に力をいれていくことになったかという流れがとてもスリリングに描かれている。知らないことも多いが、もしかすると多くの人が理解しているマルクスはこのあたりの議論なのではないかと思った。
2章は、資本論のコアな概念の解説だが、ここで分析されている資本主義は、いわゆる共産主義という言葉で私たちが理解しているものとは結構違う。ここで分析されている資本主義はかなり手強いシステムで、簡単に革命で倒せるようなものではないことが伝わってくる。
3章は、そういう手強い資本主義と戦うためのマルクスの知的探求がまとめられている。この辺りは著作としてまとまっているものはあまりなく、手稿や読書ノートの分析からすこしづつ浮かび上がっているもの。それによると晩期のマルクスは、エコロジー、コミュニティ、ジェンダーといったことを広範に研究していたらしい。マルクス自身は、これらの思想を著書としてまとめることができないまま、亡くなったわけだが、マルクスは資本主義への対抗としてこうした視点をもっていたということ。これは従来のマルクス理解を大きく変えるものだと思う。
この視点は、斎藤幸平さんの議論につながっていくわけですね。斎藤さんの本を読んだ時の印象としては、面白いけど、やや強引な解釈ではないかと思ったのだが、この佐々木さんの本を読んで、やっとその意味がわかった気がした。
Posted by ブクログ
「あの本は読まれているか」という海外ミステリを読んでみたいな、とふと思い。
●あの本、とは「ドクトル・ジバゴ」のこと。
→「ドクトル・ジバゴ」を読んでから読もう。
→あれはロシア革命前後の叙事詩のはず。ロシア革命をあらあら知ってから読もう。
→ロシア革命にいたる道…マルクスをもう一回、ちょっと読んでからにしよう。
…という興味のドミノ倒しでまずはマルクス。
共産主義という考え方だけではなく、エコや環境問題まで見据えていたことに「へー」。
それから19世紀のマルクスさんが、やっぱり当時の「資本主義先進国」であるイギリスの観察から学んだこと。そして19世紀のヨーロッパの、「フランス革命を見てしまったひとびと」の王政から共和制、という蠢動が感じられたのがいちばんの収穫でしょうか。
Posted by ブクログ
「「資本主義」と闘った社会思想家」という副題をもつ本書は青年期マルクスから晩年のマルクスまで、その格闘の足跡を最新のマルクス研究の成果を取り入れながら、簡潔に解説している。とくに晩年のマルクスの「抜粋ノート」にもとづく研究は今後益々進められていくとのこと。確かに我々世代がその昔に大学で学んだマルクスの印象とはだいぶ異なった像が本書では示されている。
第1章は、まずマルクスが「新しい唯物論」に辿り着くまでの思想的格闘を叙述する。フォイエルバッハやヘーゲルの哲学を批判し、新しい唯物論を確立したマルクスは、唯物史観と呼ばれる変革のヴィジョンを示す。それが『共産党宣言』であった。
第2章は資本主義的生産様式の根本を明らかにし、批判し、さらなる変革構想を示すこととなる『資本論』を商品、貨幣、資本と賃労働、資本蓄積と所有、恐慌論、そして最後に資本主義の歴史的起源とその運命、について解説される。ここまで来て読者は、「共産党宣言」の唯物史観がさらに深められ、資本主義の「秘密」の核心に辿り着く。
そして、第3章はさらに飽くなき変革構想確立に挑戦していく晩年のマルクスが、「物質代謝」という自然科学の具体的成果から導き出していくさまとともに描かれる。そうした根本的批判と変革の追究の結果、唯物史観では評価が低かった共同体の再評価につながっていく(ヴェラザスーリッチへの手紙)というのは面白い。
Posted by ブクログ
マルクスの人生を概観しつつ、彼の思索の過程をたどることができる良書。
資本論に関する説明は初心者向けにわかりやすく書かれているという印象を受けたが、初学者である私にはとっつきにくかった。それでも、資本論の議論がいかに本質的なものであるかは門外漢の自分にも十二分に理解できた。
本書によると、晩期には共産主義革命という手段の難しさを感じるようになり、伝統的な共同体の強靭さに注目するようになったという。ミシェル・ウェルベックの服従にも通じるテーマであり、今後の世界の行方を占う上でも重要な問いかけなのではないだろうか。
Posted by ブクログ
ソ連みたいな社会主義国家の元ネタかと思っていたが、マルクス本来の思想はそうではなかったことが分かった。
資本主義社会変革のために労働時間の削減を挙げていることを見て時代がマルクスに追いついたのだなと思った。
今こそマルクスを学ぶべきというのも頷ける。
Posted by ブクログ
物質代謝から発展させて、晩年は前近代的共同体に肯定的な評価を下し、民俗学的なアプローチで研究していたということが興味深かった。文章はわかりにくい箇所もあるが、全体的には初学者にわかりやすくまとまっていた。
Posted by ブクログ
カールマルクス
本書は社会思想に授業の理解のために買ったが、面白いのは後半のマルクス晩年の思想であった。物質代謝という概念をとりいれ、社会システムにおいても利益至上主義を戒め、資本主義がその特性によって自死する可能性を指摘している。マルクスは後期において化学などに造詣が深く、自然科学的なアプローチから資本主義批判をするようになった。人と人の関係がものとものの関係にとってかわられるという物象化や、モノのために人が働くという物神崇拝などという倒錯した関係を、人間本位のアソシエーションに戻そうと考えるマルクスの発想は、トクヴィルの中間共同体への評価と同様に、現代に対して強いアクチュアリティを持つ。マルクスを読むことはすなわち資本主義の言語を学ぶことである。筆者の表現であるが、私たちが日本語の文法を知らずとも日本語を話せるように、資本主義の文法を知らずとも資本主義の世界で生きていくことが出来る。しかし、資本主義の発生や、文法を知らない限り、資本主義から脱することはできない。そして、資本主義とはまさしく脱しなければいけない時限爆弾であるゆえに、その自死が近づいているからこそマルクスを知ることは必要であると強く感じた。マルクス主義は多くの失敗を犯したが、マルクス本人の思想はマルクス主義の思想とは異なる。晩年の彼は急速な暴力革命を、穏健なアソシエーションの生成による資本主義への抵抗に置き換えた。晩年のマルクスこそ今評価されるべき思想であろう。