あらすじ
クリスマス・イブの新宿歌舞伎町で、サンタクロース姿の若い男が刺殺された。自首してきた元弁護士の男は正当防衛を主張。だが、その公判の法廷に催涙弾が打ち込まれ、騒ぎに紛れて被告は姿を消してしまう。東京地検特別執行課の佐伯は、背後にとんでもない計画があることに気づく。決行の日は次のクリスマス・イブ!? 二転三転する展開に息を呑む傑作サスペンス!
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Posted by ブクログ
○犯人と黒幕とそれを追う検事の頭脳戦にハラハラ。
12月24日・クリスマスイブに起こった「サンタクロース殺人事件」の犯人として自首した岡崎だったが、翌年10月に行われた公判の際に法廷が爆破され、催涙ガスがまかれ、岡崎が逃走してしまう。
岡崎の若手弁護士時代を知っていた山本検事は簡単にいくはずがないとは思っていたが、東京地検・特別執行課の佐伯検事に事件を引き継ぐことになった。
課員わずか十名という小さな課で、(~)一般にも、まだ知られていない課だが、(~)犯罪者が起訴されたが、公判中に逃亡したとする。その時、その犯罪者を追跡して逮捕するのが、特別執行課の仕事である。(p22)
佐伯検事は、岡崎が弁護士を辞めた後の翻訳活動の1冊『マンハッタン武装せよ』(=これは実際にあるものではなさそう)に目をつける。
この作品のミソは、体制のシンボルであるユニフォームを、犯罪に利用した点にあるが、体制のユニフォームは、いわば諸刃の剣である。犯罪が成功した瞬間、それは犯罪者にとって重荷になるのだ。(p76)
佐伯はこれを見て悟り、サンタクロースが何か別の事件のカムフラージュになっているのではないかと推理する。
一方の岡崎は、連れ去られた後慎重に物事をすすめる。藤沼という男に社長を出せと命じ、交渉までするしたたかな男だ。その上、「サンタクロース殺人事件」のときの仲間だったメンバーに裏切り者がいるかもしれない、と思いながらも泳がせる余裕がある。
不安は募りつつ計画は実行される。その頭脳戦の過程はハラハラである。
この話で面白いところが、ただの現金強奪で終わらなかったところ。連れ去るための意図を見抜けなかったもののヒントはつかんでいた岡崎だったが、同時に起こったと知らされた殺人事件はまさにその解決の糸口となる。
途中やや冗長だったものの、最後はきれいに解決して気持ちいい。