【感想・ネタバレ】テレーズ・デスケイルゥのレビュー

モーリヤック / 杉捷夫

ボルドの荒涼たる松林を吹きぬける烈風にそそのかされたように、なぜ、と問われても答えられぬ不思議な情熱に誘われて、テレーズは夫を殺して自由を得ようとうするが果せず、しかも夫には別離の願いを退けられる……。情念の世界に生き、孤独と虚無の中で枯れはててゆく女テレーズを、独特の精緻な文体で描き、無神の世界に生きる人の心を襲う底知れぬ不安を宗教的視野で描く名作。

[ブクログ · ★★★★☆]

ボルドーの貴族テレーズは、嫁いだ先の夫のもとで娘にも恵まれ何不自由ない暮らしを送る。しかし、なにも変わることのない安定した暮らしは永遠の牢獄で、生きたまま死んでいる生活はテレーズを蝕む。
毎日に倦んだテレーズはついに夫の毒殺を図る。

保守的な地方貴族の夫は家の体面を守るため、彼女を裁判で庇い、テレーズが発狂したことにし僻地に隔離し療養させる。

身一つとなったテレーズは巴里へ赴き放浪する。