【感想・ネタバレ】翻訳百景のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『ダヴィンチ・コード』(ダン・ブラウン著)の翻訳者によるエッセイ。
原作、映画(続編含め)が世間を賑わしている頃は、走りバカやってたので、本を手に取ることもなかったし、映画も『天使と悪魔』を機内上映で見た覚えがある程度。『ダヴィンチ・~』が世界的にも空前のヒット作だったとは知らなかったな~。そのあたり(2000年前半から2010年頃)の出版界、翻訳業界の狂乱ぶりが知れたのが本書の一番の収穫だったかも。

 もう少し英語と日本語の言語的な違いや、翻訳における苦労が多く語られているのかと思ったけど、翻訳家の仕事、周辺の日常などを綴った部分が多かった。ブログ等、いろいろな媒体に寄せた文章を集めたものとのことなので、途中から、これは翻訳家によるエッセイだなと、気持ちを切り替えた。そう思って読むと、なかなか興味深く味わいがあった。 
 翻訳家になる前の、塾講師の頃の話とか、駆け出しのころの著者の心意気などが、とてもいい。

”締め切りは「守る」ものではなく、「攻める」ものだと考えていたからだ”

 こういう前向きな気持ちのある人が、その世界の一人者となっていくのだろうなぁ。
 でも、そんな内面とは裏腹に、筆致はとても優しくて読みやすい。原作に合わせて様々な文体を駆使する翻訳者ならではなのだろうか。ブログ、エッセイならこのトーンと、文体も巧みにコントロールしているのかもしれない。
 いろいろな翻訳文例、セミナーの生徒の訳の例などを紹介しているが、「どれが正解ということではない」と、他言語の翻訳の難しさを語る。ひとつの単語に、いくつもの訳し方があるだろうことは想像できたが、そのヴァリエーションは、想像を超えていて非常に面白かった。

 さぁて、本書を読んで翻訳ものアレルギーが、多少は治るだろうか。
 翻訳家の苦労を知って、読まず嫌いはやめようとは思った。一歩、前進?(笑)

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2018年12月07日

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