あらすじ
「浄らかなその爪は 縞瑪瑙を 高々と 掲げ……」。象徴派の詩人として詩史に燦然と輝くステファヌ・マラルメ(1842-98)は、〈絶対の書物〉を求め、生涯ただ一冊の詩集を編み続けた。未完に終わったその自選詩集と、恋人に捧げた軽やかな詩群、「エロディアード」「半獣神の午後」の異本を徹底的に読み込み、審らかに注解する。[新訳]
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Posted by ブクログ
マラルメの詩集ですね。
エティエンヌ(通称ステファヌ)・マラルメ(1842~1898、パリ生まれ)
解説と訳は、渡辺守章さん(1933~2021、東京生まれ)演出家、フランス文学研究者。
難解なマラルメの詩に挑戦しましたが、私にはやはり理解することは困難です。
何しろこの分厚い文庫の半分以上が解説に充てられています。その解説もまた、理解の範疇を越えていて、私はただ、詩を読んで感じるだけにしました。
原石を極上のカットで磨き上げたような象徴詩を少しだけ紹介します。
「夏の悲しみ」
太陽は 砂の上の、
おお 眠りこけた戦う女(ひと)よ、
君の髪の毛の黄金に、沸かしている、
物憂げな 湯浴みの水を、
そして、君の敵意ある 頬の上に、
香を 焚き尽くしては
涙とともに 混ぜ合わす、恋の飲み物を。
この白熱に炎上する そよとも動かぬ凪こそは、
言わしめて しまった、悲しみに塞ぐ君をして、
恐れ戦く 我が接吻よ
「ついに一体のミイラとは わたしたち、
なりますまい、古代からの砂漠、幸せな
棕櫚の木陰に おりましょうとも!」
だが髪の毛は 一筋の 生暖かい 流れであり、
怯えることなく 溺れさせるのだ、
我らに取り憑く 魂を、
そして見出す、この虚無という、
君の知らない代物を。
味わうだろう、わたしは 君の睫毛から
涙に流れる白粉を、
知ろうがためだ、君が突き刺す心臓に
与えててくれるのか、
蒼穹と 石たちの あの 感覚停止の状態を。
「祝 盃」
無なり この泡、処女なる詩句、
務めは ただ 盃を示す、
さながら はるかに 沈む群れは
セイレーンの姿 数多 腹翻しつつ。
船で行く おお 我がさまざまなる
友たち 我ははや 艫にあり、
君たちこそは 船を飾る豪奢、切って進む
荒波は、雷と 冬の嵐、
美酒の 酔いの誘えば 抗えず
酔いの船足 それも 恐れず
高々と 献げる その祝盃は
孤独 暗礁 天なる星
何にてもあれ、他ならぬ その値とは
我らが布の 白き苦しみ。
格調高い訳ながら、少し古めいた言葉の言い回しに、更に難解さを増したように思われますが、そもそもマラルメの詩じたい年月のたった文学作品なので、さもあらんと言うところですね。
ちなみに、2014年刊行の新訳です。