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Posted by ブクログ
大阪の七坂を舞台にした怪談集。ミステリィ以外、初めて読みました。二編目までは(後に、最後の九編までとわかる)誰かしら亡くなり、そのひとを想い、応え、化ける!?叙情豊かな筆致で不思議な読後感が漂う。三編目は結構悲惨な感じで亡くなった少年がキーだが、そう感じさせないのはさすがでした。四編目はネコがキー。ちょっと官能的でまた良い。五編目は憧れの人。六編目は妻子ある人を愛し、棄てられ自殺した人。探偵に誘われ、料亭へ。最後には店主の正体が分かり–––。ホラーなんだけどどこか優しく、ほっとするような感じ。七編目は小さいときから生きていないものが視える青年。八編目は松尾芭蕉の旅の日常からドッペルゲンガーを見、死に至るまでを描く。死を目前にして逆に胸が高鳴るとはどのような心境なのか。九編目は歌を嗜んだ、ある男。妻に先立たれ、偶然師と仰ぐ者の往生の地近くを訪れた。そこで見聞きしたものとは。各編の扉絵ならぬ、扉写真がこの作品を一層味わい深いものにしていると思う。