【感想・ネタバレ】駅伝マン 日本を走ったイギリス人のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年12月01日

アフリカ勢が上位を独占するランニングで、日本人だけは少なくとも戦いを挑もうとしている。なぜ日本人はそんなに長距離レースへの思いが強いのかに興味を持ったイギリス人ジャーナリストによる、半年間の日本滞在ルポ。
立命館大学の駅伝部、日清食品の駅伝部、比叡山の千日回峰行を終えた僧侶への取材、そして自らもラン...続きを読むニングクラブに入り、レースに出場する。こうした取材を通して、日本人にとってランニングは武道などに近い精神的な意味合いが強いことを身をもって学んでいく。さらには大学、実業団の選手との交流を通して、ロードだけでの、しかも昔ながらの体育会的練習によるケガ、モチベーションの低下という問題や、駅伝の功罪についても語られている。
外国人の視点からみた日本のマラソンブームという切り口がとにかく新鮮です。なぜ走るのかと問われて、自己ベストのため、仲間と楽しむため、と答えつつ、どこかそれだけじゃない?と感じている日本人ランナーは多いのではないか。生活に禅的なものがしみ込んでいる日本人には、走ることは自然なことなのです。R.ホワイティング氏の日米野球論や、古くはE.ヘリゲル氏の「日本の弓術」にも通じるような、スポーツを通しての比較文化論に繋がる内容かと。ランニング愛好者には一読をお奨めしたいです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年06月09日

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新刊書から選んだ一冊。
我々日本人は「マラソンが弱くなった」と嘆いていますが、
世界から見ると、そうは言えないらしい。

ランニングクラブに属し、オリンピックの選手にこそ
慣れないものの、そこそこの記録を持ち、
マラソンを愛する著者は走るライター。
(イギリスの新聞「ガーディアン」編集...続きを読む者兼フリーランスのジャーナリスト。)

世界中の大規模なロードレース、優勝者は
ケニア人かエチオピア人の超高速ランナーたち。
誰もがその牙城を崩せない。
本の著作中2013年当時、最新版世界の男子マラソンの
100傑のうち、アフリカ出身者以外は6人のみで、
そのうち5人が日本人。
女子マラソン100傑のうち、日本人は11人。
選手の数だけ見れば、ケニアとエチオピアについで3位。

ハーフマラソンでは日本の強さは、さらにずば抜けている。
地方都市のあるレース、通常そのゴールの風景は
優勝をせる第一陣の後は、決まって大差がつくことが普通だが
日本では違う。
選手の波が止まらないのだ、その日18人の選手が
1時間3分未満でゴール。
2013年イギリスではハーフマラソンで1時間3分を切った
イギリス選手はたった一人。アメリカ人は21人。
前述の地方のハーフマラソンで100位の学生のタイムは
1時間4分49秒。これは、イギリス2013年第8位の記録。

著者はライターとしてもランナーとしても、そんな日本の
長距離界に興味を抱く。

一家揃って、日本に移住を決める。
しかし、取材を始めようにも、なかなか難しい壁が立ちふさがる。
日本に来る前、半年間ケニアに滞在し、ランナーたちと練習も共にしながら取材。

ケニア以後、記録は伸びたが伸び悩み、
日本でも何かを発見したかった。

細い糸を繋ぐように、ブレンダン・ライリー、
河野匡(大塚製薬陸上競技部監督)、
大串亘(わたる国際陸上競技連盟公認競技者代理人)
立命館男子陸上部、アマチュア・ランニングチーム『ブルーミング』監督・主催高尾憲司とその仲間たち、
日本語に堪能な友人マックス、
子供達の移住先の条件、シュタイナー学校とPTAの友人、
走ることに真摯な近所の高校生燎平と友人たちを通して、
日本の長距離界の頂点「駅伝」に行き着く。

その精神性と、その他の長距離競技との違い、
果ては練習方法の問題点、などなど。

長距離特にマラソンや駅伝の、日本国民の注目度が
こうも他国と違うのはなぜか?
なぜ、世界記録も越そうかという記録を持ち可能性をもつ
選手がその後活躍できないのか?
マラソンに向く体躯の日本人の持つコンプレックス。
選手にはどう見ても、中距離にその特性が発揮できる選手がいるが
日本ではいつもまずは「駅伝」のための練習。
そして、世界の選手が嫌がるロードでの練習量。
科学的データでなく根性論が未だ残る古い体質(変化しつつある)

問題点を検証しながら、今を模索する新しい指導者と共に
自らも駅伝に本気で参加しようと。。。

「ええっ?」「おぉ〜〜ぅ。。。」
世界から見ればそうだったんだ。。。
これだから、ドキュメンタリーは面白い。

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Posted by ブクログ 2021年03月03日

イギリス人から見た日本におけるスポーツの立ち位置、在り方を通じて日本人論としても読める一冊。学生やアマチュアにおいてはスポーツとは人間形成の一環であり、努力、忍耐が必要とされ、和を尊び「チームの為に」目標とする箱根駅伝で燃え尽きる長距離ランナーの現状。
なぜ日本でここまで駅伝人気があるのか、半年間の...続きを読む日本滞在でよく考察されていて非常に面白かった。
駒澤大学の大八木監督も登場するが、駅伝名物「男だろー!」の発破は西洋人から見ると翻訳できない日本独特の観念だろう。
この本が書かれた2014年からは科学的根拠に基づいたトレーニングや調整方法が取り入れられ変わってきている部分も多いけど、スポーツとは愉しむものではなく教育である日本の根幹は変わっていないことを痛感した。

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Posted by ブクログ 2019年01月02日

広島県三原市 冷たい手を掖に挟み、校舎の壁際で時間を潰しているよりはずっと愉しそうだった。 参加者としてではなく、見学者としてレースを見ていると、いつも同じ思いが頭をよぎる。何故、自分は参加していないんだろう? 誰もその牙城を崩し崩すことことは出来ない 上尾シティハーフマラソン 拙速な判断は避けたか...続きを読むったが 世界で最も深いバイカル湖の湖畔に坐ってアイスクリームを崩し食べたり ウラジオストク到着時間までのカウントダウンが始まっていた 未知の場所を探索する方法としてランニングを愉しんだものだ どんな事にも効果覿面だと話す彼は うやうや恭しくお辞儀し 促した 夜のしじまが一層増した気がした すうけい崇敬の念 比叡山延暦寺 宿場で別の飛脚に書簡を渡し この制度に想を得て生まれたスポーツが 京都中心部の三条大橋には 京田辺市 ねじまき鳥クロニクル 遵法精神 出る杭は打たれる 集団の協調を示す「和」という概念があった 川上哲治 ミツバチも同じなんだ 羽を振動させて温度を上昇させ、発生する二酸化炭素で巣を満たしていく。花が咲く ブルーミング 必ずサプライズがあるんです 滋賀県草津市の立命館大のキャンパスに到着すると 柏原竜二 東洋大学 ラドクリフやケニア人選手のように驚異的な記録を出す為には 千日回峰行 満行したのは僅か四十七人 走ること自体に存在理由レーゾンデートルがあるのだ アイデンティティや責任というあらゆる世俗的な奥底に潜む何か もっと原始的な深い場所まで走り込み しかし、実際は血が。心の奥底では、そんなのは見せかけだと知っている。本当に欲しているのは、これまでに組み立てられた僕の人生のシステム、複雑さ、カオスのすべてから逃げ出し、あらゆる物事の下に潜む、生まれたままのシンプルな人間と繋がることなのだ。グレイハウンドのような長身痩躯 ケニアの元オリンピック・マラソン金メダリストの故サムエル・ワンジル 怠け癖こそが目標達成を阻む イギリス女子マラソン歴代二位のタイムを持つマーラ・ヤマウチ 人の指示を盲目的に受け入れることのできる性格じゃない。何をするにしても、その行動の理由が知りたい性質なんです 森下広一 バルセロナオリンピックの銀メダリスト 龍安寺りょうあんじ 枯山水の岩庭が有名だ 裸の王様 うやうやしく恭しく 「無になると何かが弾け、それが空間を満たしていく」と言って"弾ける泡''を手振りで示した。「その何かは、日常の経験という枠を超えた、我々の生命下に潜む膨大な意識であり、宇宙と一体になる感覚なんです」 韋駄天 アライメント(骨や関節の形状)を意識して ウィルソン・キプサングにでもなった気分だった 将来を嘱望される村山謙太 ハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)の身長は一六五センチ 動物が疲れ果て、倒れて死ぬまで走って追いかけた ベアフット・シューズ(裸足の靴) ミニマリスト・シューズ サックスビー曰く、僕は典型的な「動物園の人間」らしい。その愉快な造語は、現代社会で靴を履いて育ち、一日の殆どの時間を身体に悪い設計の椅子に坐って過ごす人間を指すものだった。 しゃがむ能力 草履 地下足袋 踵着地は良くない 高岡としなり寿成 形態は機能に従う 一朝一夕に 灰色の荒波に揉まれる黄色いブイだった 頭を上げ、首を真っ直ぐに保つ事に集中したほうがいい ここにまだ別のハンドブレーキが残っていた 脹脛の痛みも収まった 踵を後ろに蹴り上げ 惨憺たる それぞれの学習ニーズは大きく異なった いざな誘う 静かな充足感に包まれる感覚 悟りとは全てが停止する場所ではない。遂にやり遂げたと自覚し、永久の至福という名の光背に包まれる場所などではない。違う。悟りとは生き物のようなものだ。それは毎日僕等の背中を押し、あるひとつの場所に戻ってくるように呼び止めてくれる何かだ。 剃髪 檜笠 元旦の朝早くに目を覚ましてニューイヤー駅伝を観戦することは 佐藤悠基 早稲田大学の大迫すぐる傑と契約を交わしたしたばかりだった 名伯楽 すべては通るだけの道となる ドラッグの陶酔感に似ているかもしれない 苦痛、脚の痛み。それでもひたすら走り続けると、大声で笑いたくなる瞬間がやってくる。そんな時、僕等は自分の脚を見下ろし、「もっと走りたい?」と問いかける。そして、さらに走り続けるのだ。 「周りの景色を眺めながら、風に舞う木の葉のように漂うこと」から「自身の魂の奥底を探る旅」に変わるのだ。 井戸の底では無駄なものが根こそぎにされる もはや伝統行事のようなものなのだ 彼等は茫然自失の体で突っ立ち 村澤明伸 みんな長野県佐久長聖高校の出身だった クロスカントリー用のトレイル オフロード練習のメリット かんばしく芳しく 少なからず演技が含まれているような気がした フリーキックを狙って大袈裟に転ぶサッカー選手のようなものかもしれない 東洋大学の設楽啓太は満面の笑みを浮かべてゴールし 武士道 新渡戸稲造 ゴール地点の芦ノ湖の奥には富士山が見えた それは長距離走における格闘技であり、壮大な叙事詩エピックだった。 それでも前進する為には、身体の奥深くから湧き出てくる意志力を頼りにするしかない。まさにマハトマ・ガンジーの言う通り、「強さとは身体能力ではなく、不屈の精神から生まれるもの」なのだ。 競争は熾烈を極め 奏功した

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