あらすじ
邦銀と外銀との相対取引で発生した円のマイナス金利が、いまや短期国債市場にも波及している。
そうした事態を引き起こす原因を探っていくと、空前の金融緩和と、それと表裏一体となった財政拡張に突き当たる。
低い国債金利は市場が財政リスクを懸念していないからではなく、懸念しているからこそマイナス金利がある、というロジックが解明される。
外資系証券でレラティブ・バリュー・アナリストを務める著者が、金融マーケットが発している日本経済への警告を読み解いた、異色の日本経済論。
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Posted by ブクログ
マイナス金利はどんな時に発生し、物価や経済にどんな影響を与えるのか。欧州や米国、日本等の豊富な事例を用いて丁寧に説明されている。金融の前提知識がなくても読み通せるだろう。ECB等がマイナス金利政策を相次いで打ち出したのは比較的最近だが、実はマイナス金利自体はかなり前から存在していたというのが驚き。著者はどちらかというとマイナス金利政策の効果に懐疑的な印象だが、解説上は特に気にならず、マイナス金利の入門書としておすすめできる。
Posted by ブクログ
マイナス金利に興味を持ち、手に取ってみた。
コンパクトにまとまっており、入門書としては最適。
筆者じたいはどちらかといえば、アベノミクスに反対の立場だが、あまり気にならない。
後は、筆者と逆の考えを持った人の、同内容の本を読んでみたいものだ。
Posted by ブクログ
出版は絶妙のタイミングだが、実際には日銀のマイナス金利政策前に書かれたもの。金利が決まる過程などについてはやたらと詳しいが、じゃあ、どうすればよいのか、は余り書かれていない。
・今は金利よりも為替が実質的に金融政策の役目を果たしている。通貨安によって輸出の競争力が増し、海外所得が自国換算で増価し、実質的に景気緩和効果をもたらす。
その中で、日本の場合は財政リスクがあるからマイナス金利になるという逆説的な結論になる。最悪シナリオとしてはこれまで国債暴落やハイパーインフレが想定されていたが、マイナス金利によってゆるやかに債務が減っていくというシナリオも想定される。ただし、それはハイパーインフレなどのように一時的なショックでなく、長期的な日本経済の衰退、衰弱死的な破綻を招くシナリオでもある。本来、お金を預けると金利がもらえるのは、そのお金を使って収益を生み出す仕事を誰かがするからなのだが、実質成長率がマイナスになった結果として名目金利もマイナスになっており、現在の日本の低金利は構造的なものになっている。
・プロジェクトは金利以上の利回りがないといけない。低金利であれば、利回りの低いプロジェクトにも手を出しやすくなり、景気を刺激することが期待されるが、これは時限的なものであるべき。低金利が長期化すると、低収益プロジェクトが温存され、成長率を押し下げる。
成長率が低下している状況で緩和を進めても実体経済よりはリスク資産に流れやすく、バブルが発生することになる。
・金利の底は0%とされてきたが、マイナス金利になってしまった。マイナス金利には底があり、タンス預金との裁定によって決まる、すなわち、保存コストよりは下にいかないはずなので、−1〜−5%の間が底だろう。