【感想・ネタバレ】昭和天皇・マッカーサー会見のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和天皇とマッカーサーの会談を、マッカーサー回想録の通りだと思い込んでいたが大間違い、ファンタジーであった。
昭和天皇が立憲君主の枠をはみ出したのが 2・26 とポツダム宣言受諾だけというのも実情から外れているだけでなく、現行憲法施行後もそれは続いていた、むしろ積極的に行われていたというのが、筆者の主張である。筆者が言うように、戦後二重外交が行われていたというのが、実態を表しているように思える。

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2015年02月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<要約>
 安保体制とは、昭和天皇が望んだことであり、憲法第九条と米軍の日本駐留によって、共産主義勢力による天皇制打倒に備えることをその目的としていた。

<抜粋>
p.v
昭和天皇が新憲法によって「象徴天皇」になって以降も、安全保障問題といった「高度に政治的な問題」にかかわっていた

pp.ix-x
世界が冷戦対決の時代を迎える前後から昭和天皇は、内外の共産主義が天皇制の打倒をめざして直接・間接に日本を侵略してくるのではないか、という危機感に苛まれていたのである。
こうした差し迫る脅威に直面した昭和天皇にあっては、非武装を規定した憲法九条によっても、機能を失った国際連合によっても日本を守ることは不可能である以上、天皇制の防衛は米軍という「外国軍」に依拠する以外にない、という結論に至った[...]。
かくして、米軍駐留に基づいた安全保障体制の構築は、いかなる政治勢力や政治家にとってよりも、昭和天皇にとって文字通り至上の課題となった。[...]つまりは、安保体制こそ戦後日本の新たな「国体」となった

p.19
東京裁判をひかえてマッカーサーは様々のパイプ、メディアを駆使して、戦争は軍閥と国民の意志であった、それに抗したならば天皇自身の立場が危うかったであろう、という"演出効果"満点のイメージを「天皇発言」という形で内外に広め、それによって天皇めんその正当化を印象づけようとしたのではないか

pp.20-21
キーナンとしても自ら調査したところ天皇が平和主義者であることが明らかになったので、「最後はマッカーサー元帥が定める所であるが、私としては天皇を無罪にしたい。貴君もそのように努力してほしい」と、田中(※隆吉)に"支援"を要請した

p.21
キーナンの話に接した田中は、「この時ほど私は感激した事はなかった。私は死を賭して、天皇を無罪にするため、軍部の行動について、知る限りの真実を証言しようと決心したのである」と、証言台に立つ"崇高なる任務"に燃えたった

p.23
極東諮問委員会の代表団や『ライフ』誌、NHKなど"表舞台"においては、自分は戦争に反対であったが軍閥や国民の意思に抗することはできなかったとの「天皇発言」が活用され、だからこそ天皇に戦争責任はなく免訴されるのが至当である、とのアピールが展開された。他方"裏舞台"においては、戦争が自らの命令によって行われた以上は全責任を負うとの「天皇発言」がキーナンや田中隆吉に"内々"に伝えられることによって、天皇を絶対に出廷させてはならないという両者の決意と覚悟が固められ、"法廷闘争"において見事な成果がもたらされたのである。

pp.46-47
当時マッカーサーの周辺は、辞職説、病気説、帰国説などが乱れ飛ぶ状況にあったのである。要するに会見に臨んだ天皇の立場がきわめてきびしいものであったのである。[...]外からの一切の干渉を排し、国内での"絶対権力"を維持しつつ自らの占領遂行の基盤を固めていくうえで、「政治的道具」としての天皇の重要性が改めて強く認識されざるを得なかったのである。とすれば、この会見の歴史的な意義は、天皇によるマッカーサーの「占領権力」への全面協力とマッカーサーによる天皇の「権威」の利用という、両者の波長が見事に一致し、相互確認が交わされたところに求められるべきであろう。

pp.52-53
会談では冒頭から新憲法、とりわけ第九条をめぐって議論が交わされた。天皇はまず、「日本ガ完全二軍備ヲ撤廃スル以上、ソノ安全保障ハ国連二期待セネバナリマセヌ」と切り出した上で、しかし「国連ガ極東委員会ノ如キモノデアルコトハ困ルト思ヒマス」と、四大国が拒否権をもっている極東委員会をひき合いに出して、事実上は国連二期待できない旨を強調し、マッカーサーの意見を求めた。
これに対し、第九条の挿入に熱意をかけたマッカーサーは、破壊力の飛躍的な増大によって今後の戦争には勝者も敗者もないであろうこと等を指摘した上で、「日本ガ完全二軍備ヲ持タナイコト自身ガ日本ノ為ニハ最大ノ安全保障デアツテ、コレコソ日本ノ生キル唯一ノ道デアル」と改めて"第九条の精神"を天皇に説いたのである。さらに国連についても、現状はともかく「将来ノ見込トシテハ国連ハ益々強固ニナツテ行クモノト思フ」と、天皇とは異なる評価を展開した。
 しかし天皇は、第九条にも国連にもおよそ期待をかけていないかのように、「日本ノ安全保障ヲ図ル為ニハ、アングロサクソンノ代表者デアル米国ガ其ノイニシアチブヲ執ルコトヲ要スルノデアリマシテ、此ノ為元帥ノ御支援ヲ期待シテ居リマス」と、米軍による日本防衛の保障を求めた。そこでマッカーサーは、「米国ノ根本観念ハ日本ノ安全保障ヲ確保スルコトデアル。此ノ点ニツイテハ十分安心アリタイ」と答え、具体的な軍事戦略上の問題に議論をすすめた[...]天皇は、事実上第九条に代わる日本の安全保障のあり方、つまりは米軍による防衛の保障をマッカーサーに求めた訳であった。

p.54
アメリカに占領してもらふのが沖縄の安全を保つ上から一番よからうと仰有つたと思う

p.106
「象徴天皇」という新たな憲法上の地位に"制約"を感じることもなく、ひたすら信念に基づいて「政治的行為」に勤しんでいるようである。

p.126
新憲法下において「象徴天皇」でありつつ「己が好む所」に従って「政治的行為」に勤しんだ天皇の言動は、むしろ戦前以来の行動パターンにおいて"一貫性"を持っていた

pp.141-142
天皇制はマッカーサーによる憲法の"押し付け"によって存続することができた

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2014年05月25日

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