【感想・ネタバレ】犬はいつも足元にいてのレビュー

あらすじ

離婚した父親が残していった黒い犬。僕につきまとう同級生のサダ……やっかいな中学生活を送る僕は時折、犬と秘密の場所に行った。そこには悪臭を放つ得体の知れない肉が埋まっていて!?文藝賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

少年が悪意に触れることで自己を確立する、逆説的成長譚。

「おまえも覚えておくといい、世間には、信じられないくらい意地悪な人間がいるんだよ。」

本書の冒頭で主人公に対して、父親が伝えた印象的な言葉である。

主人公は中学生で、少年から青年への過渡期にある。
少年期の意地悪は、悪意のない純粋無垢なものであることも多い。しかし、青年期へと足を踏み入れた10代半ばにもなると、意地悪は明確な悪意を孕んだものへと変化していく。
主人公もまた、鬱陶しい友人のサダの意地悪さにあてられるにつれ、徐々に悪意のある意地悪さを発露していく。

さて、犬は主人公の延長線上にある無意識的な存在として描かれている。そういった存在であるからこそ、気味が悪いほど主人公の考えがわかるのだ。
また、「広場の肉」は悪意で人を傷つけることの悦びの象徴のように思える。
無垢さの残る主人公は肉を臭くてたまらないものだと忌避しているが、主人公の無意識的な存在の犬は、薄暗い悦びに触れることで恍惚の表情を浮かべている。

悪意が最大限に発揮されるのが、父親から金を騙し取った後、家に帰って母親と話すシーンだ。
主人公は明確な悪意を持って、父親が新しい恋人と暮らしているという嘘や、悪口を言い続ける。
少年の無垢さは既に失われてしまったのだ。
だからこそ、この後はわき目も振らず、一直線に肉の広場を目指すのである。

さらに、最終場面で主人公がサダの頬のキズに興奮して手を伸ばすことはまさしく、主人公が悪意と人を傷つける悦びを実感していることを表している。
主人公は犬を通して「肉」を求めることをやめて、自己の意思として忌避することなく薄暗い欲望に触れようとしているからだ。

主人公は〝信じられないくらい意地悪な人間〟になってしまったともいえる。
しかし、それはある種の防衛手段でもある。鬱陶しい友人や、自分をいつか「なし」にするかもしれない親。
それらに対して、無垢な少年のまま立ち向かうことは難しい。悪意をもって人を傷つける悦びを自覚し、それを受け入れることは必要な成長であったのだ。

また、悦びを感じるかは別として、悪意を自覚しコントロールする術を身につけることは、誰しもが逃れることはできない青年期の課題のようなものである。
無垢なまま人を傷つけることも、悪意を爆発させることも許されない。

決して他人事ではないのだ。
犬はいつも足元にいるのである。

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2021年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いつか読もうと思っていて、なかなか読めなかった本。イメージとは違っていたが、星3位おもしろかった。

大森兄弟で、一章ずつ交代で書いていたということだったが、どこで人が代わったのか、どの章とどの章が兄でどの章が弟なのか、わからなかった。

以前テレビで著者を見たことがあったが、穏やかなおとなしそうなふたりだったという印象がある。

家族関係についての内容なので、きっと兄弟が育った環境が同じというのが、話の筋におおきなブレが生じなかった理由だと思われる。

土の中にある肉の塊の正体はいったいなんだったのか。どうして肉は腐って土になっていかなかったのか、不明。そもそも肉じゃなくて臭いゴム?

そしておじいさんはなにもの? 

わからないままのラスト。

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2013年12月26日

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