あらすじ
九州は三州市では知らぬものがないほど名の通ったディスカウントショップ阿古商店。その社長阿古義男は従業員用のトイレからペーパーホルダーを外して有料の自販機を設置し、流す水量も自分で設定するほどのドケチな性分。おまけに女好きで数年前は従業員からの脱税告発されるほどのうらみも買っていた。そんな阿古社長の次の標的は阿古商店の折込チラシを製作する広告代理店アドプランだ。例によって制作費の値切りを迫る義男は以前使っていた広告代理店も同様の手口で倒産に追い込んでいた。
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Posted by ブクログ
南九州一を自称するディスカウントショップ阿古商店のオーナー阿古義男という男が阿古商店の折込チラシを作る広告大理店・アドプランとその経営者の徳倉真一を破滅させる話です。手口がえげつないです。
この小説を先日読み終えました。いやはや、非常にどろどろしておりまして、何度か途中で読むのをやめようとさえ、思ったほどです。この話しはなんて言うのか、ある地方のなりあがりものが自分の気に食わない出入りの人間をあの手この手で倒産に追い込むというものです。そのやり方があまりにもえげつないと言うことと、この作者お得意の手形を機軸とした生々しい経済の話が真に迫っていて、『これがおそらく現実なんだろうな』と思ってしまいました。
主人公の阿古義男と潰される側の徳倉真一。そして、都会と田舎。その両者には容赦なく深い溝があって、その埋めがたいほど深い溝が全てを引き裂いていくラストが僕の心に重い読後感を残してくれました。そして、この本のあとがきに、地方と都会の違いと田舎の人間のことについて言及されておりますが、作者の主張に僕も激しく同意します。
でも、あんまりこういうことを具体的に書き立てると、ただでさえ田舎で総スカンを食っているのにまたさらに村八分になってしまうので、あんまり詳しいことは書きませんけれどおおむね正しいと確信を持ってそういうことができます。