【感想・ネタバレ】科学者は戦争で何をしたかのレビュー

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Posted by ブクログ 2020年11月10日

科学者「益川敏英」さんのことを深く知ることができる1冊。
師匠である坂田昌一さんの影響が大きいことがほんとよく伝わってきた。

「科学者である前に人間たれ」
「科学者には現象の背後に潜む本質を見抜く英知がなければならない」

科学者の部分は教員と置き換えることもできる。
問題の本質を理解していない、...続きを読むあるいは関心がないという姿勢が透けて見えること、さらには、仲間と熱く議論することもなく、非常に個人主義的なことも、教員の世界でも当たり前のようになっているので…

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Posted by ブクログ 2019年02月16日

GW課題図書その3。

科学の戦争への寄与に関する話。
言っていることには概ね同意で、戦争は悲惨なものであり、科学は戦争に転用されるのは良くないことであり。
更に言えば、科学者はそのリスクについてある程度敏感でないといけないのかもしれないけど。

引き続き考えていかなければいけないテーマではある。
...続きを読む
敢えて難癖をつけるとすれば、
だからといって、「研究テーマが軍事転用されたことに対し科学者に責任の一部を追及する」のは100%間違っていて、それは、戦争を始めた政治と行政(軍政)と、そして実際にそれを使った軍隊(軍令)に100%の責任を押し付けるべきことかなー。そういうことに責任を取らせるためにそれらがあるんでしょうって話。それを科学者に押し付けるっていうのはそれこそ学問の自由を奪ったり、科学者が勝手に縮こまって野心的な研究をしなくなることに繋がる。

あとできれば「戦争」と「軍事」は区別してほしい。

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Posted by ブクログ 2017年01月21日

「自分の研究が社会でどんな役割を持つのか、悪用されるとすればどんな可能性が考えられるか、科学者ならばまずそのことを深く考えなければならない。」

この一文に益川氏の考えが凝縮されているように思う。

そして私たちはこの言葉を「科学者」というどこか特権的な人々へのメッセージだと受け止めてはならないのだ...続きを読むろう。
例えば上に引用した一文は次のように言い換えることが充分に可能ではないだろうか。

「自分の『言動』が社会でどんな役割を持つのか、悪用されるとすればどんな可能性が考えられるか、『市民』ならばまずそのことを深く考えなければならない。」

おもしろい本というのは、必ずそれを「自分のこと」として読むことができると思う。
その意味で本書がとてもおもしろい本であることは間違いない。

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Posted by ブクログ 2017年01月03日

科学者だけでなく、全ての人に読んで欲しい。年齢に関係なく。しかし、若い人に読んで貰えれば嬉しいですね。

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Posted by ブクログ 2016年07月18日

著者の益川敏英は2008年にノーベル物理学賞に輝いた理論物理学者だ。益川は米軍機による大空襲の中を逃げまどった体験があり、ノーベル賞記念講演でも自らの戦争体験に触れるなど積極的な反戦平和活動を行ってきた。現在の安倍政権が日本を「戦争のできる国」に導こうとしていることに強い危機感を抱いた著者が、科学者...続きを読むが大量に動員された戦争の歴史を振り返り、平和に使われるべき科学が軍事利用されないための方策を提言しているのが本書だ。
ドイツ軍のために毒ガスの開発に没頭したフリッツ・ハーバーの行いや日本に投下された原子爆弾を開発したアメリカのマンハッタン計画は、科学者がどのように国家権力に取り込まれて戦争に加担してきたかを物語っている。著者は、現在の日本でも科学技術の軍事利用が進み、政治的な動きの中で科学者の動員が巧妙に進められていると危機感を募らせている。
「九条科学者の会」に参加する著者は、「日本は憲法九条の歯止めがあり「戦争ができない国」であるからこそ、知恵を絞り外交政策などでこの70年間危機を乗り越え平和を維持してきたことに思い至るべきだ」と訴え、それを今「戦争のできる国」にしようとしている安倍首相の暴走を非難している。
著者がテレビ番組で特定秘密保護法を批判したらすぐに外務省の役人が研究室に説得に来たりとか、「軍事研究をしない」と誓った名古屋大学の平和憲章が国会議員に非難されたりというエピソードには、日本の社会に戦争が現実問題として迫ってきていることを改めて実感させられ、著者の危機感が納得できる。
科学の発展は文明の進歩に大きく貢献するものだが、ひとたび戦争となった場合にはその科学技術は兵器を開発するために使われ、多くの人間の命を奪うものとなる。そして国家権力に動員される科学者は軍事開発への協力を拒むことはできないのだ。
恩師と仰ぐ理論物理学者坂田昌一の「科学者は科学者として学問をするより以前に、まず人間として人類を愛さなければならない」という言葉を胸に刻む著者は、科学の発展は平和利用にも軍事利用にもつながる諸刃の剣だからこそ、科学者は自分の研究にのめり込むのではなく、ひとりの生活者として社会と向き合わなければいけないと訴える。この社会を守り後の世代に残していくために、科学者を含む私たち皆が世の中に対して広い視点を持ち、今日本や世界で何が起こっているのか、どこに進んでいるのかを見極め、正していく知性が必要なのだ。
戦争体験をもつ著者が、一流の科学者だからこそ強く感じる戦争への危機感と、どんなことがあっても戦争は避けるべきだとの強い信念をもって訴えている反戦平和の呼びかけが心に響く一冊だ。

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Posted by ブクログ 2016年05月14日

2006年のノーベル物理学賞受賞者である益川敏英・名古屋大学名誉教授がしたためた、警世の書である。
科学技術は人類の生活を大幅に向上させたが、それは同時に兵器の発達を促したことは、皆様もご存じだと思う。「世紀の発見・発明」といわれるものが、時代が下るにつれて平気に使われるようになった事例は、枚挙にい...続きを読むとまがない。戦前のノーベル賞受賞者で、科学の進歩が兵器に転用されることを危惧する科学者は多かった。化学薬品然り、レーダー然り。これらはもともと民生用に開発されたものだが、いつの間にか兵器にも使われるようになった。
著者が本書で繰り返し書いてることは、科学者は自分の研究が、社会に与える影響を考えなくてはいけないということ。科学者は研究室という「蛸壺」の中に閉じこもることが多く、社会と関わることが少なくなりがちだからだ。
一つ残念なのは、益川氏は原発の可能性を捨てていないということ。益川氏は物理学者であり、原発は物理学理論の集合体であるから、自分がこれまで培ってきた世界を否定されるのはイヤなのだろう。

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Posted by ブクログ 2016年05月08日

ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授の著書。
益川さんと言えば、ノーベル賞受賞時のユニークなキャラクターの印象しかなかったが、このような本も書かれていたことを初めて知った。

本書のテーマは「科学と社会の関係」だ。現代科学の世界は商業化が進んでいて、純粋な学問ではなくなってきていること、自分の専門...続きを読む研究にばかり熱中して、社会問題に無関心な科学者が増えてきていること、そして科学が戦争の技術として利用されるようになってきていること、などに警鐘を鳴らしている。

本書を読んで思い出したのは、グーグルやアップルのような企業が開発して話題となっている人工知能だ。ホーキング博士のような人が人工知能の危険性を訴えているが、それでも研究は進んでいく。原爆や水爆が生み出された時もそうだったが、高度な技術が悪用された時の被害は計り知れない。益川さんも、科学技術が軍事目的に転用されるリスクについて述べている。そして、それを防ぐことは難しいとも。

だからこそ科学者達は社会や政治の動きなどにもっと目を向け、自分達の専門の枠を超えて行動を起こすべきであると主張している。益川さんはこうした問題について今まで深く考えてこられたようだ。本書を読むと、現代における科学・社会・政治を取り巻く問題が分かり、大変勉強になる。

ちなみに、益川教授の恩師である坂田教授の名前がしばしば文中に出てくる。読めば読むほど素晴らしい人物だと感じる。このように人間的に立派で、信念を持った科学者が過去にいたのだと感心した。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月20日

科学の発展を人類の幸福のために。

先日亡くなった益川敏英氏の著作。戦争を経験した世代だからこそ、反戦・平和運動に取り組む先輩の姿を見たからこそ、著者は声をあげる。研究だけに没頭してはいけない、科学者も社会運動を、科学は中立で良いものにするか悪いものにするかは人次第だ、と。

兵器につながる発見でノ...続きを読むーベル賞を受賞した人がいる。それはある意味当然のこと。科学は中立だから。しかし軍事研究としてお金が出るのなら、明らかに政府から協力を求められたら、自分の研究のためにできる判断は何なのだろう。デュアルユースのジレンマを考える。

著者の不安を現実にしないように、ぜひ科学の道を志す人に読んでほしい。そしてノーベル賞のニュースに簡単に「素晴らしいですね」とコメントする私たちが、きちんと政治を見つめられるように、もっともっとたくさんの人に読んでほしい。

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Posted by ブクログ 2018年10月12日

安倍首相よりも日本会議と日本会議国会議員懇談会が強力な力を持ってる限り憲法改正も問題は終わらないと思うし、益々勢いが増してきている。

それに関して益川教授がユニークな提案をしている。
「早いとことノーベル委員会が、憲法九条にノーベル平和賞をあげて、それを安倍首相に受け取らせる。。。憲法九条のノーベ...続きを読むル賞受賞が安倍政権の暴走を止める」
これ、ありかも。

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Posted by ブクログ 2018年05月06日

ノーベル賞を受賞したとき「たいして嬉しくない」と言った益川博士だが、受賞して本当に良かったと思う。
 理論物理学は一般人にはよくわからない人が多いから、たとえ学会で認められていても、ノーベル賞がなかったらこういう本は出せなかっただろう。世界が認める一流の科学者だからこそ、政府やマスコミなど気にするこ...続きを読むとなく言いたいことが言える。どんどん言って、益川さん!(テレビで益川さんが特定秘密保護法を批判したら、すぐにわざわざ名古屋まで外務省の役人が来て「先生が心配されるようなことは一切ない」と言ったそうだが、それ、本当に言いたかったのは「マスコミでそういうことを言わないでくれ」ってことでしょう。一般人ならそういうことをされるとビビって自粛してしまうが、益川さんは全く意に介さず。素晴らしい。)
 「科学者である前に人間であれ」という信念のもと、デュアルユースの問題ももちろんわかった上で、科学者だからこそ高い倫理観を持ち、自分の研究の利用のされ方を、未来のために考えなければならないというメッセージは、研究者にも読んで欲しい。
自身の戦争体験だけではなく、師であった坂田昌一の教えも大きく影響したことが何度も出てきており、もし学者としては一流であっても倫理観の低い師であったらと考えると、若い時に出会う先達の重要性がわかる。高い能力で戦争に荷担した科学者のことも語られている。
 たいへん平易な言葉で語られているので、中学生でも読めると思う。
 益川さんには、元気で長生きしていただきたい。

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Posted by ブクログ 2016年02月04日

共感できる話が盛りだくさんの好著だ.マンハッタン計画で多くの科学者が原爆の開発に携わったいきさつはよくまとまっている.また,先生自身が先頭に立って活動した話は読んでいて楽しかった.これからもどんどん発言してもらいたい.今の政治状況を改善するために.

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Posted by ブクログ 2015年12月26日

 著者の益川敏英氏は、2008年ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者です。受賞時のインタビューに対するコメントを聞いたときからちょっと気になっていた方でしたが、この著作も大変興味いものです。
 取り上げているテーマの流れで極めて政治的なイシューにも言及していますが、そこには「科学者」であると同時に...続きを読む「市民(人)」としての立場からの氏の考えが開陳されています。
 益川氏の立論は、極めて明確かつシンプルなので、その掘り下げ方という点では少なからず物足りなさを感じるところはあります。しかしながら、自らの信念を強く抱き、その信ずるところを目指して先頭に立って行動する姿は、決して否定されるものではないと思います。

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Posted by ブクログ 2015年11月27日

ノーベル賞を受賞した著者。
最近安保関連のデモのニュースでよく見る著者。
なぜデモに参加するのか、この人の考え方が
よく書かれている内容です。
科学者の社会的責任を考える、暴走する政治に懸念する
著者の考えが面白いと思いました。
ある意味まっとうな意見だと思いました。
ただ、科学者で社会になじめない...続きを読む、社会から利用される
弱者的な科学者をなんとか救うことも考える必要も
あるのではないかと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年11月19日

平易な言葉で、熱く平和を、反戦を、現政権の危うさを語る。「物理の研究と平和運動は二つとも同じ価値がある」という信念を恩師・坂田昌一先生から受け継ぐ反骨精神には励まされる。

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Posted by ブクログ 2015年11月07日

戦火を体験しているだけに、科学のデュアルユースに対するジレンマと憲法9条への想いがひしひしと伝わってくる。科学者である前に人として、名古屋大学の平和憲章を愚直に守り続ける精神には敬意を表したい。ただ、原子力研究にお金をかければかけるほど安全性は高まると主張している一方で、潤沢な資金を調達できている研...続きを読む究機関程、腐敗や不正を生む、という見解はいかがなものか?まぁ、それは置いといて、やはり益川先生の姿勢と先見に感銘を受けたことには変わらない。今度名大の記念館のぞいてみようかな。

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Posted by ブクログ 2015年10月01日

ノーベル賞受賞者でありながら,学問と社会の関係を真摯に考える人であることがわかった。ただ,執筆された時期も影響しているだろうが,反政府運動における若者の評価が不当に低いように思う。企業別の労働組合なんていまどき,政権のチェックにはたいして役に立たないと思っているので。

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Posted by ブクログ 2023年05月08日

もともと国際政治には興味がありましたが、戦争を科学者の視点から見た事はなかったので、この本の内容は新鮮でした。

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Posted by ブクログ 2022年07月06日

ノーベル科学賞を受賞したという
著者が過去の戦争を振り返えり、
将来を危惧して書いていました。

後半は 科学者と戦争という内容というより
著者の戦争反対という思いが沢山つまっていました。

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Posted by ブクログ 2019年09月07日

デュアルユース…一般の科学、技術の成果が、人々の生活にも役立つし、軍事にも利用できる両義性を持つこと。

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Posted by ブクログ 2019年01月31日

ノーベル賞科学者の立場から大東亜戦争を語っている。実用的な発明は軍事目的に応用される。科学者はすべてが平和主義者ばかりではない。

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Posted by ブクログ 2017年06月21日

読みごたえあった。筆者の科学に対する思いを感じる。サイエンスと平和の関係を普段切り離して考えてしまっていることを気付く。このテーマを、ノーベル賞受賞者が、受賞コメントを振り返って言ってるから面白い。

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Posted by ブクログ 2016年09月21日

中身に価値がというより,益川先生の政治的スタンスがよく分かる本だった。科学者と戦争についてもうちょっとまとまった科学者による本なら,池内了『科学者と戦争』が良い。

STAP細胞事件については,組織の問題と断罪。
"非常に閉鎖的な組織の中で、彼女は予算を獲得する政治的な道具として使われたわ...続きを読むけです。そのせいでSTAP細胞問題は、研究レベルを逸脱して、理研トップの政治的な動きと思惑に追い詰められて自殺者まで出してしまった"p.83

中村修二氏に対しては手厳しい。金儲け主義に反発。
"なぜ研究者が数百億円もの報酬を欲しがるのか。私はへんてこな欲望同士がぶつかり合った喜劇だと思っています"
"我々は論文を書くために様々なデータを使います。そのときにこのデータには何百億円もかかっているのだからその何パーセントかを支払えと言われたら、もうお手上げです"p.85

そしてこういうところは正直だなあと。宮崎駿氏にも通じるところ。
"「兵器ゼロを目指す」と言っている私がこんなことを言うとおしかりを受けそうですが、このいたちごっこの経緯が、実に興味深くもあります。この迫撃砲に対抗してこんな装甲車ができたのか、車両のボディの高硬度鋼板にセラミックパネルをサンドイッチ式に挟み込むことで、防御力を強化したのか、なる程うまいこと考えるもんだなと、ときには感心したりもします。兵器研究というのは、科学者としての純粋な好奇心をそそることは確かです。"p.97
いくら戦争に反対でも,科学者あるいは知識人として,戦争や兵器に関することには全く興味がない,考えること自体悪である,みたいのは偽善じゃなかろうかと思っているので,このくだりは好感が持てた。

九条科学者の会の呼びかけ人だったというのも初めて知った。ノーベル賞受賞者にして九条ノーベル平和賞論者。
"早いところノーベル委員会が、憲法九条にノーベル平和賞をあげて、それを安倍首相に受け取らせるという筋書きをつくってくれないと、日本はとんでもないところに行ってしまいそうです。"p.122

幼児期の戦争体験もそうだけど,恩師の坂田昌一博士からも大きな思想的影響を受けたそうで,組合活動や社会活動にも熱心に取り組まれたらしい。
25歳のときの物理学会で,突然「ベトナムでの毒ガス使用反対!」と叫んで動議を提出,先輩研究者に「若造、そんなこと学会のような席で言うべきじゃない」とたしなめられても怯まず,「ポンコツ、黙れ!」と一喝したという武勇伝まで載ってる(p.141)。

全体を通して,国家に利用される科学に忸怩たる思いを持っているのが伝わってくる。政治的発言を良しとしない科学者が多い中,本音で語ってる真摯な本だと思う。
"戦時下における科学者の立場というのは、戦争に協力を惜しまないうちは重用されるものの、その役目が終われば一切の政策決定から遠ざけられ、蚊帳の外に置かれます"p.49
シラードらの原爆投下反対が無視された件について。そう,意思決定権ってのは本当に強大な権力なのだ…。

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