【感想・ネタバレ】戦火のマエストロ 近衛秀麿のレビュー

あらすじ

ベルリン・フィルを初めて指揮した日本人の真実
ナチス政権下のドイツ、そしてヨーロッパ各地で、タクトを振り続けた日本人指揮者・近衛秀麿。実は、彼はその音楽活動の陰で、ひそかにユダヤ人の保護・救出を行っていた――。発掘された新資料をもとに、マエストロ・秀麿の「知られざる営為」をひも解くノンフィクション。BS1スペシャル『戦火のマエストロ・近衛秀麿―ユダヤ人の命を救った音楽家―』の出版化。

[内容]
プロローグ
第一章 ベルリン・フィルを初めて指揮した日本人
第二章 ナチス政権下の音楽家たち
第三章 亡命トライアングル
第四章 「近衛オーケストラ」の秘密
第五章 最後の謎──米軍中尉ネルソンとの対話
エピローグ

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 NHK BSのドキュメンタリ番組(2015年8月8日放送)のネタ元。というより、番組そのものの書きおこし的な一冊か。

 近衛秀麿という、大戦前夜、1940年の内閣総理大臣を務めた近衛文麿の弟の物語。「近衛家」の伝統に倣い音楽の道に進み、戦時中はナチス占領下のドイツ周辺国で演奏会を開催、その音楽活動が多くのユダヤ人の命を救ったかもしれないという謎を追う物語だ。

“「コンセール・コノエ」は、フランス人であれユダヤ人であれ、才能ある音楽家を戦争で失わせないための「シェルター」として結成された ― それが私の持論だ。”

 と、著者であもある映像プロデューサー菅野冬樹氏は語る。

“秀麿とカールはナチの目を誤魔化すために、「親独」を装ったオーケストラをつくる必要があった。そこでオーケストラの名称に「近衛」の名を冠したと思われる。”

 氏は、ドイツ、アメリカ、イスラエルと、各地で公文書を調べ、秀麿がユダヤ人の亡命を付ける隠れ蓑として楽団を結成し、その窓口となるべく演奏会を各地で開催したとの推測を元に、当時の欧州でのコンサートツアーの足取りを辿っていく。

 謎解きの過程もなかなか興味深いのだが、そのうち話が秀麿のドキュメンタリというより、その謎を追う菅野冬樹のドキュメンタリになってしまっている点は惜しいところ。そうでもしないと番組としての尺に及ばないということもあったのかもしれないが、

「映像プロデューサーを目指す私の、ライフワークとなるテーマとの遭遇」

 といった著者の力み、右往左往する調査っぷりの詳細は、正直ややうっとおしい。
 結局は、現時点の調査ではすべての謎が解明されてはおらず、著者の推測で終わる部分も多いのだが、なにしろ「ライフワーク」なのだから、今後の続報を待つとしよう。

 ともかく、近衛文麿という、小澤征爾の先人(ベルリン・フィルの指揮者として)の存在を知れたことは有意義だった。

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2018年04月14日

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