あらすじ
ロングセラー『漢方小説』の著者が、中年期の身体や心模様を軽妙なタッチで描き、気持ちがほっこりなごむ傑作。総合病院のカフェを舞台に、不妊の夫婦、患者との関係を模索する医師などが、治療とは何かを問いかける。
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Posted by ブクログ
新聞の書評を読んで、読んでみたいと思った本。
初めての作家さんだったが、想像していた以上に心に響いた。
登場人物の一人である朝子の年齢が自分と近いためか、彼女の置かれた状況や考えること(年老いていく両親の変化を諦観しながらも、やりようのない憤りを感じているところなど)、共感せずにはいられなかった。
また、院内カフェでバイトする鳴かず飛ばずの作家、相田亮子の働きぶりが素人くさいのだが、その目線は客観的でありながら、ちょっと意固地なところもあって好ましい。バイトのバリスタ、村上君もかなりいい味だしている。
来院の理由、滞在時間の長短に関係なく、病院という所は本当に精神的エネルギーを奪う…私の場合。
院内カフェは、街中にあるあのチェーン店のカフェと何ら変わることなく看板を掲げている。
不穏の中の平穏。
闇に浮かぶ光。
と言ったら大袈裟かもしれないが、私もその存在に救われたことがある。
病院の会計を終えてそこへ立ち寄ると、自分はフツーの世界に戻ってきたのだ、という安堵感が押し寄せるのだ。
2019.11.27
Posted by ブクログ
介護、闘病、不妊といった重いテーマを扱うところもあり、読んでいて心が沈む場面もあったが、最後には晴れやかな気持ちで本を閉じることができた。
病む者と支える者は、お互いにのみ込まれるべきではなく、むしろ両者の間に壁があるのは自然なこと。恐れる必要はないという考えに共感した。
たとえ別々の場所にいても寄り添うことはでき、それこそが病む者にとって何よりの「救い」になるのだと感じた。
闘病を乗り越えた自身の経験とも重なり、この解釈が深く心に刺さった。
院内カフェに集まる人々がそれぞれに抱えるストーリーやつながりが、物語が進むにつれて少しずつ明らかになっていく展開がとても良かった。
Posted by ブクログ
院内カフェが舞台の小説というのが珍しくて手に取りました。
主人公のカフェ店員が売れない作家という設定も面白い。
街中のカフェと違ってお客様は患者さんやお見舞いに来た人、そして病院スタッフと限定されているものの、個性強めの常連客が。そんな常連客ウルメとゲジデント二人の関係は意外でした。
親の介護が終わり、やっと自分のやりたい事が出来ると思った矢先に夫が難病で入院した主婦。彼女が壊れそうになるのはわかる気がします。静かなカフェは落ち着きますが、会話が丸聞こえなのは嫌ですね
Posted by ブクログ
院内カフェに一歩入れば、彼らは「患者」でなく、私たちにとって「客」なのだ…。
土日バイトの主婦、相田亮子は若いスタッフ村上君と接客に勤しむ。
亮子が(売れない)作家と知った彼は、仕事の合間にネタ話を披露。そんな穏やかな空気を一変させる事件が起こる。
カフェに常連客は付きもの。
黄緑のヤッケを着たウルメは日曜の夕方になるとやってくる。今日も「本日のコーヒーS」を注文した。白衣姿で体毛の濃いゲジデントもカプチーノMで長居をするので、本当の医師なのかどうか疑わしい。
クスッと笑える癒し系小説だろうと油断していたようだ。カフェで妻の朝子が、入院中の夫にソイラテをぶちまけるその瞬間まで…
人はそれぞれ悩みや不安を抱えて生きている。親の介護でストレスを溜めこむ朝子の言葉に身がつまされる思いがした。
「親孝行という、愛情と義務感が入り交じった言葉を支えに、これからも続けていくしかない」
両親を看取り、自分の人生を始めようとした矢先、今度は夫の孝昭が病気で入院することになった。
非常時ほど、その人間の本質が出る。
パートナーとの価値観のずれを感じた朝子が、虚しさからソイラテをぶちまけた思いはよくわかる。夫に初めて書いた朝子の手紙文に思わずウルっとなった。
私も病院のカフェのような立ち位置に自分を置くことができるだろうかと考えてしまった。
不妊で悩む亮子もどこかで気持ちに折り合いをつけようとしている。
逃げ場を作って病と闘わなければいけない小さな子もいる。
「この世は理不尽なことだらけ。病だけでなく、罪もないのに犠牲になる子供はあとをたたない」
孝昭は、やっと逃げずに病気と向き合う決心ができたようだ。妻のおかげで!!
クリスマスイブに起きた最高に「いい話」に心がほっこり温かくなるラストがとても良かった。
Posted by ブクログ
179ページの「自分が病めるときも、人を愛せるか?」という言葉に、軽く衝撃を受けました。
心身の不調や先の見えない治療という中にあって、他者を思いやり愛するという事は、とても難しい事のように感じました。
登場時には「げー」っと思わせられたゲジデントですが、読み進めていくと印象が変わって、胸の内に秘めた医者としての矜持を垣間見るようでした。
とても面白かったです。
Posted by ブクログ
我が家の近くの大学病院も、数年前にホテルのロビーのようにきれいになり、チェーン店のカフェがあるので、そこをイメージしながら読みました。
店員の動きや会話を読んでいると、こんなふうに働きたいなあなんて思ったり、病気や客として訪れた夫婦の事情など、暗くなりがちな話もテンポよく読めました。
Posted by ブクログ
院内カフェは、病院の中にある(おそらく全国チェーンの)カフェで、病院でも日常でもない場所です。客と店員、客同士、相手の名前を知り合う関係ではない中で、相手を思う少しの気持ちに励まされました。私自身も病院の中で、病院でも日常でもない場所と言えるところで働いているので、自身の仕事をがんばろうと思いました。
Posted by ブクログ
まぁ、こんなシチュエーションだと、こういう人たちが集まるよね。
テレビドラマになりそう、と思って著者紹介をみたら、放送作家さんだったのね。
トイレから出られなくて焦ったけどひょんなことからすぐに出られた話は、ある!ある!ってなったわ
村上くんが何者なのか知りたかったなぁ……
薬学部学生さん?
Posted by ブクログ
『漢方小説』以来2冊目の中島たい子さん。
院内カフェに行っていたクチとしては、
面白いところを題材にするなーと興味を惹かれた。
街中にあるカフェも、
いろんなものを抱えた人が来ているのだろうけど、
院内カフェはもっと多種多様で、
どんな人も等しく受け入れられる場所なのかなと思う。
生きることに向き合っている人たちが
ほんのひととき、ほっとできる場所なのだろう。
不妊治療とか、親の介護とか、
配偶者(もしくは自分自身の)の病気とか、
他人事ではいられない問題に胸がきゅっとなるけど、
いろいろ闘いながらも
時折ふっと息を吐いて力を抜くのは大事だなと思った。
最後は、私もなんかこのプレゼントをもらった気分。
Posted by ブクログ
とある病院に併設されているカフェが舞台の ほっこり出来るいい話ばかりの七章立ての好作品でした♪ とりわけ六章が印象的だったね。本当に こんなカフェがある病院があるなら入院したり受診したり見舞いに行ったりするかも知れないなぁ(笑)
Posted by ブクログ
淡々と色んな人生が。多分誰でもちょっとずつ物足りなさを抱えていて、それとどうつきあうか、悩んだりやり過ごしたりしてるのかなあ。
病院にカフェやコンビニは絶対必要だよ。
付き添いにも楽しみ欲しいから(´ω`)
Posted by ブクログ
普通のカフェ。普通と違うのは病院の中にある、という事だけ。それ以外は何も変わらない。売っているものも、何もかも。来る人も選ばない。病気の人とそうじゃない人。院内カフェの様な存在でお互いに寄り添う。どちらにとっても居心地の良い、その空間。
Posted by ブクログ
この著者の本は初めて読んだ。
自然と引きこまれ、一気に読み終えた。
病院に併設されているカフェを舞台に、介護、不妊など、身近な問題にフォーカスしながらも、ほっこりさせる場面も多く、この著者が好きになった。
とくに、家族の介護をする側の人間の複雑な感情に共感を覚え、最後の選択には考えさせられるものが多かった。
Posted by ブクログ
病院内のカフェで働く作家の亮子とお客たちが湿っぽくなく柔らかい。難病も精神疾患も目線が優しくてわざとらしさがなくスッと入って来た。病気なのはもう一人の自分なのだとする女の子とその母親や、喧嘩した奥さんからの白い封筒の真相も優しかった。カフェにいる皆へ贈られたクリスマスプレゼントがふんわり温かかった。
Posted by ブクログ
病院にありながら、患者が治療のことを考えなくて済む落ち着ける場所である院内カフェ。そしてそこは"患者"ではなく"お客さん"として、健康な人も病気を患っている人も現実を忘れ団欒できる場。
大切な人が苦しんでいたら強い励ましや救いの方法で解決してあげたがる私たちだけれど、上手くいかなくて自己嫌悪・他者嫌悪に陥る。共感しすぎて引き摺られてしまう、そんな弱い私たちの立ち位置を教えてくれる。強い励ましや救いの方法、解決策は提供できないけれど、苦しんで救いを求めてきた人に笑顔でコーヒーをすっと提供できるようなカフェのような立ち位置でいれたらなと思う。
院内に併設しているカフェの意義を著者に教わった気がしました。
Posted by ブクログ
この作品を読んで、「そういえば最近の総合病院はどこもカフェがあるな」と思った。自分が闘病中としても、あるいは家族がそうだったとしても、病院は居心地の悪い場所で、いつもいたたまれない気持ちになってしまう。カフェが外界と病院の緩衝地帯になっていることに気づいた筆者の着眼点にまず感心した。病と関わって初めて気づくこと、そんなあれこれを暖かく書いている作品。介護に追われる朝子の話に特に感情移入した。
Posted by ブクログ
人はちょっとした悩みをかかえていたり、病気に苦しめられたりしてなかなか生きていくのが難しい
そんな中でもささやかな贈り物をもらったり、温かい言葉をかけてもらうと、心がぬくもりまた頑張ろうと思える。
そんな世界を描いたお話だった。
Posted by ブクログ
院内カフェを訪れるお客さんや
院内カフェの店員さんなどさまざまな視点から
描かれた物語。
親の介護に疲れ、旦那さんが難病になってしまった朝子さんの視点から描かれたお話が好きでした。
誰も悪くないからこそ、
どうしていいかわからないやるせない気持ち。
自分の気持ちをどう伝えたらいいか、
わからなくなるときって誰しもあると思います。
自分がいっぱいいっぱいだからこそ、
どうしたいのかも分からなくなって
つらくなるのかなと感じました。
それぞれに悩みを抱えて生きているんだと
改めて思えた作品でした。
Posted by ブクログ
しばらくレビューをお休みしておりましたが、少しずつ再開していこうと思います。
第一弾は病院内にあるチェーンのカフェを舞台にした様々な人間ドラマ。
カフェで土日だけ働きながら本業は(あまり売れていない)作家の女性・相田。
その病院に夫が入院している女性・朝子。
そして入院している夫本人・孝昭。
さらに病院で働く医師・菅谷(相田からは『ゲジデント』と呼ばれている。
彼らの視点が入れ代わり立ち代わりしながら物語が進む。
病院内のカフェなのでクセのある客がいる。
相田が『ウルメ』と名付けた扱いに困る客。
孝昭が遭遇した自分の中に別人格を作って病と闘っている少女。
そして朝子・孝昭夫妻も。
病を抱える本人と支える家族。
病でなくても何かを抱えている人たち。
夫婦関係に家族関係。
個人的には朝子の半生はとても響くものがあって読んでいて辛くなる場面も多かった。
この夫婦がどうなるのか特に気にしながら読んだ。
かと言って重苦しい話というわけではなく、文章はテンポよくコミカルな場面も多い。
『治療に関わるわけでもないし、お客が患者でも、医者でも、健康な人でも、全く同じサービスをする。(中略)
病んでる人が、いつでも入れるように病院に寄り添っていて、でも関わらず独立して、そこにある』
カフェの立ち位置を人に置き換えられるのがなかなか面白い。こうなれるかどうかはとても難しいけれど。
最後はちょっとアメリカのドラマか映画みたいな話だったが粋だった。
私の予想は一見嫌なヤツの…だが、さて。読む人それぞれの真相があって良い。
年明け一作目のレビューとしてはなかなか良い作品だった。
Posted by ブクログ
読み終わったあと、暖かい気持ちになりました。
登場人物みんな、何かを抱えているけど、カフェでちょっと癒されてまた元の生活に戻っていける。いいなと思いました。
Posted by ブクログ
ご主人のご病気がタイムリーすぎて…笑
介護や依存、種の存続のお話はふむふむと思いながら読みましたが、途中うぅっと痛くなる瞬間もあり。
でも最終的にほんわかした雰囲気で終わってよかったです。
冬にコーヒー飲みながら読むのがおすすめかな。
Posted by ブクログ
病院内に併設するカフェを舞台に、入院・通院する患者、介護する人、見舞い客、医者・看護師等の病院スタッフ等々、総合病院を利用する様々な立場の人間模様を垣間見る連作短編集。
病院の中にあるけれど、そこは誰もが気軽に利用できる憩いの場。
そこに足を踏み入れた人は、医者も患者も関係なく、誰もが等しく「客」となり全く同じサービスを受ける。
病院内でありながら、中立的な立場で全ての「客」に接する貴重な場なのだ。
特に、両親と夫の介護に翻弄される朝子の話には身につまされた。
私も他人事ではない。
近い将来こんな苦労が待っているのかと思うと憂鬱になってきた。
ラストで朝子が感じたように、上手く割りきれればいいのだけれど。
また、持病のある、まだ幼いさやかちゃんが自分に別の名前をつけて現実逃避する気持ち、よく分かる。
それに合わせるさやかちゃんのお母さんも、また辛いよね。。
私も地元の総合病院内にも院内カフェがある。
どんなメニューがあるのかな…等と思いつつも、つい横目で素通り。
なんとなく敷居が高かった。
今度近くへ行った時に思いきって立ち寄ってみようかな。
なにしろ、院内カフェの飲み物はみんなカラダに良くて、元気になれるそうだから。
Posted by ブクログ
病院内にあるけれど、そこだけは病院ではなくあくまでもカフェ。
気付いたら介護に追われ、ご主人までも…
この奥さんの気持ちが痛いほど伝わってきた。
でも、この本のストーリー自体がいい方向に向かっていてよかったな。
Posted by ブクログ
病院の中にあるチェーン店のカフェ。今では多くの病院にある。最初はそこだけが妙に明るく健康的で違和感を感じることが多かった。でもこの本に書いてあるように、院内カフェってとても特殊だけど、ある意味「救い」になっている部分もある。患者にとっても、家族にとっても、医療関係者にとっても、自分をリセットできて外とのつながりを感じられる場所のように思う。病院という建物の中でそれぞれが窮屈に演じている役割から開放される場所といってもいいかもしれない。どんな自分でも受け入れてもらえるという安心感がそこにはある。
ひとつの章が長く感じられ、リズムよく読み進むのが難しい作品だった。印象に残ったのは「みんな神様に選ばれてるんだよ。この世にある全てのものは、誤作動を起こすものでも、絶滅するものでも、必要なものなんだよ、きっと」という言葉。こんなふうに悟れたら素敵。
Posted by ブクログ
病院に併設されてるカフェの店員 客 それぞれ生活の事情がある。それを一つずつ読ませてくれた。病人は自分の辛さが健康な人には分からないと見下してる、その考えはある種の発見だった
Posted by ブクログ
2017.12/16 たい子さん、今回は院内で"グルグル"思いが堂々巡りするんですね。ちょうど最近潰瘍性大腸炎で入院した知人がいて、これはキツイなぁと思いながら読んだことでした。
Posted by ブクログ
病院の中のカフェ。
タイトルに妙に魅かれて読みました。
アンテナの高いまーちさんのレポがもうあります。
ストーリーもかなり詳しく書かれてありますので、
私はほんの感想だけ、書くことにしましょう。
病院の中のカフェでパートをする女性視線で
語られるある日のカフェの様子から始まります。
精神障害のような男性の常連客、
いつも時間をさいて来るフリをしているような毛深い研修医。
そして入院患者の夫をみまう妻とおぼしき夫婦者。
カフェでそれぞれくつろいでいたのですが、
ある出来事で平穏な空気が一変します。
次からの章は、
研修医や夫婦、精神障害者、それぞれの立場から
カフェに来るに至るまでのエピソードが
明るく読みやすいタッチで書かれていました。
病院の中のカフェって確かにあると便利だし、
おしゃべりしたり、休んだりしたりするには、丁度いいところです。
実際にカフェがある病院もありますが、
おしゃれなテナントなら一層行きたくなりますね。
やはり多少変わった人たちが集うだろうとは思いますが・・・。
こんな視線からも、
さまざまな人間模様も書けるんだと、感心しました。