あらすじ
【佐藤史生コレクション5】待望の名作復刻シリーズ第5弾!
あらすじ「深野に 深野に 春の盛りの宴せむ 舞えばひともと また ひともとの 花あかり_。山深い桜の里・深野にある旅館“錦楼”。錦楼の桜園で樹齢数百年の齢を重ねながら、何年も花咲くことのなかったしだれ桜を巡り、人々の想いは交錯する。」
表題作「春を夢見し」、1977年に発表されたデビュー作「恋は味なもの!?」を含め、軽快なコメディからシリアスなラブストーリーまで、作風の異なる6編を収録した異色の傑作短編集。
著者について「2010年4月に急逝した漫画家・佐藤史生。 「別冊少女コミック」からデビューした後、SF、ファンタジーの要素を巧みに取り入れた作品を多数発表するも、2000年に刊行した『魔術師さがし』(小学館)以降は新作が発表されていませんでした。 佐藤氏は、1970年代に現れ日本の少女漫画界をリードした少女漫画家たち、いわゆる “24年組”に対して、年齢や作風から“ポスト24年組”の一人として数えられている作家の一人ですが、少女漫画の枠に当てはまらない独自の世界を築き上げたことで、漫画ファンの記憶に長くとどまり続けています。」
収録作品:ミッドナイト・フィーバー/透明くらぶ-ミッドナイトフィーバー パート2-/恋は味なもの!?/スフィンクスより愛をこめて/春を夢見し/ふりかえるケンタウロス
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
佐藤史生さんの作品も二作目になりまして、本書は、前回読んだ『死せる王女のための孔雀舞』よりも、以前に書かれた短篇集なのですが(1977~1979年)、読めば読むほど、もっと早く出会いたかったと思ってしまい、作品から立ち上る、作者の人柄や雰囲気は、私が思わず寄り添いたくなるような、信頼性を感じさせられ、とても好きです。
猫丸さん、本書もお勧め下さり、ありがとうございます(^_^)
デビュー作も入っているが、意外性のある、しっかりとした物語に、活き活きと描かれたキャラクターは変わらず、コメディもシリアスも、自由で柔軟な発想を感じさせられ、しかも、ホロリと考えさせられる、時代に縛られないテーマ性もあり、最早、私のイメージしていた少女漫画の枠を軽々と飛び越えている感じです(素敵な美男美女はたくさん登場するのですがね)。
以下、収録作について、ちょっと書いていきます。
『ミッドナイトフィーバー』
ディスコブームの時代において、彼等は彼等なりの楽園を創造した、夢一夜の出来事。
ちょうど、インベーダーゲームブームでもあり、新参者の「インベーダー」の初々しさが、微笑ましい。
そして、デ○○ッド・ボ○イとミ○ター・○ポックも夢の共演で盛り上がり(!?)、SF好きには、たまらない設定。
『透明くらぶ─ミッドナイトフィーバー パートⅡ─』
『ミッドナイトフィーバー』の続きもの。
前回の夢の夜から一転し、昼間のSF研の部室から始まる物語は、SF研のキャプテン「小尾倭(おび やまと)」の人間性に、インベーダーの「まじめくん」が果敢にも挑み、その遣り取りには、名前通りの真摯さが清々しい分、胸を打つものがあり、それに応えるような、倭の台詞にも胸を打たれた。
『恋は味なもの!?』
登場人物のきらきらした雰囲気に、多彩な擬音のフォントも楽しいコメディ。
最後の意外性のあるオチ(しかも、溜めに溜めてオトす)には、デビュー作とは思えない、しっかりとした物語の素晴らしさを感じ、予想外で完全にやられました。
『スフィンクスより愛をこめて』
ピーター・オトゥールの、あの映画にインスパイアされた、スフィンクス像と、お家再興を巡り、誘拐された(!?)お嬢様、「タヴィア」と、二人のイケメン「テネシー」と「ベン」が織り成す、懐かしさ漂う上品なコメディで、これまたオチが絶品。
『春を夢見し』
ある出来事により、二度と咲かないと思われてきた、樹齢500~600年の桜を巡る、親から子への思いの物語で、「白髪(しらかみ)」を信じ続ける「千花」の意地にも似た思いと、「雄作」が名付けた、息子の「春」に込めた思いの深さは、その真相を知るにつけ、とても哀しくやるせないものを感じさせられ、そんな中で予感させる春の未来には、大きな輝きと希望を思わせてくれて、更にそれに応える白髪の麗しき舞いには、ようやく出逢えた友への際限なき歓びを感じさせてくれた。
『ふりかえるケンタウロス』
病弱な少女の、かつての憧れから現実へと向き合うまでの姿を描いた成長物語として捉えたが、『ウーマン・リブ』的意図で作ったという事を知った後に再度読んでみたら、一見、我が儘に見えた部分も、心の中で必死に耐えていたんだということが分かり、弱さをしっかりと認めながらも、他人の手を借りず、無我夢中で求めるものを得ようとする、その姿は、まさに自分の足でしっかりと大地を踏みしめて立っている、自立した存在であり、『私は人形じゃないのよ』の台詞には、思わず涙が。
次は、『ワン・ゼロ』を読もうと思います。