【感想・ネタバレ】日本の中でイスラム教を信じるのレビュー

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Posted by ブクログ 2022年09月26日

イランでヘジャブ(髪を覆う布)を正しく纏っていないと逮捕され、獄死した女性のニュースを知った時、ちょうど手元に本書があった。多くの人同様警察の愚行には激しい怒りを覚えたが、本書の目次を読んである疑念が湧いてきた。
「我々もイスラム教徒の人達にこちらの基準を強要している節があるのでは?」

日本で暮ら...続きを読むす彼らの日常及び彼らを取り巻く純日本人の対応について、フォトジャーナリストである著者が独自調査。序章ではシャルリー・エヴド事件の風刺画を巡るデモに触れているが、デモの実施についても信者間で意見が割れていたという。
したがって本書では「イスラム教徒」と一括りにせず、それぞれのイスラム教徒を「(全世界のイスラム人口である)16億人分の1の存在」と呼んでいる。

今回初耳で驚いたのは純日本人にもムスリム・ムスリマがおり、国内の生活に些か不自由していることだった。(驚いている時点で浅学菲才だったことを実感、そして猛省…)
インドネシア出身のソリハさんは上司や同僚が寛容なのに対し、数年前に入信・イスラム名に改名したイーマーンさんは会社でスカーフを纏うことを許されていない。
ソリハさん曰く「自分は外国人だから許されている」との事で、それがまた胸に刺さった…。それを踏まえると、イーマーンさんの上司の失言は"外国人"には面と向かって言えない偏見を日本人である彼女に吐き出しているようにしか見えない。

一方最近の小中高は比較的融通が利くようで、例えば礼拝用に校長室を提供している。(給食代わりの)お弁当は、周りを気遣い給食メニューに合わせている家庭の話には圧倒されたが…。
授業でイスラム教を習った際、解説に違和感を覚えることもあるらしいが、少なくとも著者が取材した子供達にはストレスになっていないみたいで安心した。
「一日5回のお祈りを合計しても30分もかからない」「『それくらい神様に時間やってもいいんじゃねーの』っていう感じ」

デモやその他事例から、信者の間にも教えに対して様々な解釈や齟齬があった。
ではイランの事件は、警察側の解釈との齟齬があったから"自ずと"発生したのか?我々は、日本の基準に合わないからと「郷に入れば…」を強要するか、そうした話題をひたすら避けていくしかないのか?

ソリハさんの会社は直接話をするのが一番だと思い、採用時になるべく質問やコミュニケーションを取るようにしたという。そして彼女は現在、公私共に安心して日本で暮らせている。
対話を重ねることで初めて、彼らは日本の中で"自分の"イスラム教を信じられるのか。

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Posted by ブクログ 2015年12月24日

書店で偶然この本を目にして、イスラム教の友達もいることだし、彼らを正しく理解するためにも、イスラム教について、知っておきたいと思って読んだ。
日本に住むムスリムの人たちの苦労も知ることができた。偏見のない正しい知識が得られたと思う。

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Posted by ブクログ 2015年09月18日

イスラム教を知るための入門書としても最適な本だった。イスラム教の教え、ムスリムの生活がわかりやすく書かれている。

タイトル通り日本で暮らすムスリムについての描写が多いが特に、イスラム教徒の外国人とイスラム教徒の日本人を比較した考察が興味深い。
日本人はいつまでも意識の中では鎖国状態なんだろう。グロ...続きを読むーバルなんて程遠い。それが二者に対する態度の違いからよくわかる。
外国人だから許容する。日本人だから許容しない。日本人には日本人らしく生きることを無意識に強要する。

つい最近も外国人による犯罪が起こった。同時に移民受け入れが世界的な課題になっている今。日本は移民受け入れは難しいだろう。お客様としての外国人には優しくとも日本人としては受け入れられる素地がまだまだ足りない。
どっちが良いかは別問題だろうけど…

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Posted by ブクログ 2023年09月01日

 二〇一五年七月出版の本。九・一一からは十年以上経っているが、IS(いわゆる「イスラム国」)による日本人人質事件が起きたのがこの年の初頭だった。
 本書の中でも繰り返し強調されているが、「イスラム教徒」と一括りにして概念的な知識や情報を得ることよりも、ひとりひとりの話を聞き、その暮らしを描き出すこと...続きを読むを、本書では重視している(ルポルタージュだしそりゃそうだろうという気もするが)。私も、全体の感想というよりは、印象深かったところを点描的に書き留めておくことにする。

・古河電工に勤めるインドネシア人ムスリム女性のソリハさんの例。スカーフ着用、一日五回のお祈り、飲食の制限などが就職や業務遂行のうえでの障害になることはない。採用担当の関さんの、「外国人かどうか、何教徒かどうかは関係なく、この人に当社で働いて欲しいと思ったから、そのためにできることをしただけ」には納得。ただソリハさんの「私は外国人だから許容されている」という指摘も鋭い。

・アッラー以外の神に祈ってはならないという教えがあるため、ムスリムはお葬式でも「冥福は祈れない」。なるほど。そう言われてみると日本人はよく祈る。冥福だけでなく、挨拶として頻繁に、健康や活躍や繁栄など祈る。あれは誰に祈っているのだろう。神様仏様誰でもいいや、という感覚でいうと、アッラーにも祈っているかもしれない…。

・十八歳のときに自ら選んでイスラム教に入信した日本人女性の大槻さんがおもしろい。特に女性の扱いについてなど、自分としてもコーランに納得がいかないところがあるし「こんなこと息子が信じるようになったら困る」とも発言しており、でもある時期礼拝の時間が自分を救ってくれたことも事実で、なんとか自分と神様との間で落とし所を探ろうとしている様子に、こういう人もいるんだという驚きを覚えた。

・ジハードは聖戦と訳されるが、本来のアラビア語の意味は「奮闘努力すること」(寅さん…)。東日本大震災でイスラム教徒のグループが被災者支援を行ったことについて、「ただ困っている人がいるから助けただけ。もちろんそれは簡単ではない。被災地へ行くのも大変だし、自分たちの生活だってあるのだから。助けたいと思うのは当たり前でも行動を起こすには勇気がいる。だからこれが本当のジハードなのだ」と。

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Posted by ブクログ 2015年08月20日

ムスリムが日本に住むという事がどういうことなのかが分かる本。職場・学校での礼拝はどうするのか?食べ物の問題は?ムスリム以外の人との人間関係は?子育ては?などなど。また同じムスリムでも、イスラム教圏で生まれ育った外国人と純粋な日本人の間では社会的な認識に大きな違いがあるのも印象的。

いくつか、気にな...続きを読むること…
日本人ムスリムに関しては、1人を除いて全て女性教徒の例だった。職場でのヒジャーブ(女性が付けるスカーフ)着用の問題などあるので、女性のほうが日本でムスリムでいることの難易度は高いと分かるのだが、もう少し日本人男性ムスリムの事情についても知りたかった。
また日本の中でのムスリムの問題についての本であるから、彼らの信仰に関する内面的なインタビューは少なく、そこが気になる。(著者の言うようにその辺はデリケートな問題なので大きなお世話かもしれないが)

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Posted by ブクログ 2015年08月13日

書名通り、日本で暮らすイスラム教徒の実態を追ったノンフィクション。

イスラム教に自ら入信した日本人がそれなりにいることに驚く。

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