【感想・ネタバレ】IQは金で買えるのか 世界遺伝子研究最前線のレビュー

あらすじ

“らせん”をほどいた先に、人類の幸福はあるのか。もはや神の領域ではなくなった遺伝子操作。善意と探究心の裏側でパーフェクトな命への誘惑がうごめく。米国特派員として生命科学研究の最前線を追ってきた朝日新聞記者が見た現実とは。

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Posted by ブクログ

朝日新聞記者である著者の遺伝子ビジネスの最前線報告。遺伝子レベルの取捨選択が技術的に可能となり、それを生業とする企業が登場し、その責任者たちへのインタビューは貴重であろう。遺伝子操作の最前線を、記者らしい多様な視点かつ幾許かの批判を基に構成されている。

興味深いのは話題になった遺伝子関連の後日談だ。遺伝子解析の「23アンドミー」サービスのアドバイザリーは終了となり、「スポーツXファクター」は倫理性ではなく採算面から撤退し、羊のドリーは遺伝子的にはクローンながら性格の異なる羊となったりと、倫理以外にも遺伝子そのものの効用と環境が与える影響範囲の解析という今後の課題が見えてくる。

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2016年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルからはデザイナーベイビーに関する本を予想していたが、遺伝子改変に関する話題はさすがにまだ時期尚早なのかほとんどない。現時点での遺伝子ビジネスについてはUpToDateでよくまとまっている。

まずは遺伝子検査ビジネスの現状から入り、例えば筋肉のタイプがスプリンター(ACTN3という速筋を作る蛋白に変異がない)か長距離型(変異している)の判定ビジネスなどが紹介される。

タイトルにもある知能の問題は、これまでの双生児研究の結果からも相関係数が0,8を超えるような強い相関があることが知られていた。養子に出されたものとの相関係数も0.7を超えているが、逆に血縁関係のない養子同士が同じ親の元で育てられても知能指数の相関係数は0.3程度の弱いものであったことから遺伝子の影響は大きいと考えられている。
ただし、知能に関する遺伝子は少なくとも数百はあると考えられており、決定的なものはまだ分かっていない。
これらを全て解明し、理想的な遺伝子変異の組み合わせが実現すればIQは1000以上になるという推定もあるらしい。

出生前診断の話題も多い。ダウン症の推定出生率は1989には5633件であったが、実際には4474で、約2割が人工中絶を選んでいたと推計される。高齢出産の増加に伴い、ダウン症の推定出生率も高まっているが、2006の推定出生数が8014件であったのに対し、実際の出生は3989件で1989よりもむしろ減っている。約半分が人工中絶を選んでいることになる。

出生前診断はやはり倫理的にも難しい問題で、仮にダウン症を間引くことが許容されるのであれば、アレルギーはどうか、また、遺伝子改良で病気を治療することが許容されるのであれば性質の改良はなぜだめなのか、明確に一線をひくことは誰もできないだろう。が、先日報道された中国グループによる受精卵の遺伝子改変のニュースのように、技術的に可能なものは誰かがいずれやるのだろう。

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2015年09月14日

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