【感想・ネタバレ】文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直すのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に面白かった。
養老氏が若手理系識者4人と対談している本。

「理系と文系」と対比させて対談しているのはしょっぱなの森博嗣氏の対談。
あ~なるほどな~と思ったのは文系の方が理屈っぽい、それは言葉で割り切るからだという表現。氏が意図している所を完全に理解しているかどうかわからないが、理系の人が数字に拘るのはざっくり映像的にイメージしたいからイメージを共有させないと成り立たないというのが理系同士の会話。
続く藤井直敬氏はVRをやっている人。養老氏は多重構造で成り立っているこの世界を認知するためにはVR,SRというのは間違いなく人を進化させると語る。
次の鈴木健氏は複雑系の科学の専門家でありながらプログラマーさらにはニュースアプリ「スマートニュース」まで立ち上げるという偉人。彼の著書である「なめらかな社会とその敵」の内容を中心に対談は進んでいく。印象深いのは次の須田桃子氏の対談の時と同様、養老先生の科学の難しさ、限界について語っておられる。

「サイエンスのルールは笑うべきもの。例えば再現性の担保。それを生き物に当てはめるのは難しい」
「人間とは「同じ」と思う能力を開発した。また「交換」するという事を覚えた」
「あるものはしょうがないという認識が大事」
「「全ての細胞は細胞から生じる」という19世紀のルドルフ・ルイドリッヒ・カール・ウィルヒョーの言葉を忘れ過ぎ。ドーキンス理論なんて最たるもの」

次は氏の「唯脳論」を読んでみたいと思う。

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2016年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「理系の対話で人間社会をとらえ直す」と副題にあるように、各界でそれなりにとんがった理系の人たちと著者が対話をした内容をまとめた本。
いわゆる文系の常識的なものの見方をくつがえすということがテーマになっており、自分のテーマにも沿っている。

最近「知的複眼思考」などを通じて、多面的にものを見ることを意識しているが、よく考えたら誰かの常識をくつがえすというのは、別の視点を導入すればそれで済むことだ。自分の目からうろこを落とすことが何かとてつもなく難しいことのように思っていたが、実はそうでもない。

その意味では、いわゆる「文系的ものの見方」と「理系的ものの見方」をぶつけあわせ、常識的なものの見方を変更した例をこの書籍の中から拾ってくるのがこの本の読み方とするのがよいのではないか。

以下拾った内容。

・方法的には理科も文科もクソもなくなった。むしろ自然と直面するか、実験室にこもるか、その違いの方が大きい
・ディスレクシア(識字障害)
・言葉で考える vs 思考の大部分は映像? 読書をしながら数を数える vs おしゃべりしながら数を数える
・サヴァン症候群とレインマン
・「まず理念から」は理学部、文学部
・数学ができれば理系?
・ストレスを溜めない生き方
・一神教の信者は、神様から相当なストレスをかけられている
・文系は物事を言葉で割り切るからデジタル。理系の方がアナログ
・「言葉」ではなく「論理」で通じ合う
・「透明などんぶり」
・社会や人間など、あやふやでとらえようがないものを、文系の人はどうして理屈で解釈してわかったような気になれるのか不思議
・絶対的な安全
・説明責任。説明というのは後付けの理屈。物語の構造は文化によって異なる。「誰がやったのか」を明確にする。懺悔をしていると絶えず自分のことを考えるように。I が過剰に。私という主体の物語。日本は「空気」による。済んでしまったことは仕方ない。世間並。そういうものだと思っていました。
・わからないことの答えは、検索すればどこかにある。結局は選んでいるだけで自分がつくったわけではない。自分一人で楽しめないのは、工夫して自分で解決していないから
・お互いのことを知らないからこそドラマが生まれる。一つの事件には三通り以上の解釈があって当たり前
・言い訳がきちんとできないと、何を反省すればよいかもわかりません。
・「わからない」は「わかっているけど、賛成できない」
・社会性
・マチュピチュの静止画。自分がそこにいたような気になれる。そのあとで「もっと本当のものを見たい」という気持ちがわいてくる。
・社会脳。社会性を作り出す脳の働き。一回性と再現性。科学的な実験にとって必要な再現性は社会の研究においては不可能。これをSRシステムで行う
・みんな主観的に違う現実を生きている。世の中の理解の仕方って全員違う
・自分の世界はいつでも変わりうる。「人は変わる。バカさ加減は変わらない」どこかでコンシステントな(首尾一貫した)ものがあるということが、世界が崩れたときに大丈夫な人間には必要
・科学者はルールの上に成り立っている仕事。しかし、「前提を問う」ことこそ科学
・ルールは、本来は笑うためにある。「従っている俺たちってバカだよな、アハハ」
・人間は、「同じ」という能力をもってしまった。「同じにする」「概念」「言葉」「抽象」
・視覚と聴覚は等価交換。文字記号も音も、同じ日本語。
・レヴィ・ストロース「人類社会は交換から始まっている」交換の前に贈与がある。
・意識って何なのか。ヒトと動物はどこが違うか。「同じ」という能力
・違うの裏に同じがはりついている。感覚が「違う」と訴えている。「同じ」が壊れるとショック
・社会性の基本は我慢だ。基本的に社会は個人の邪魔をする。でも、個人は世界に適応しないといけない。だから、適応する部分と、しない部分を分けてしない部分はどこかに出口をつくるほうがいい
・突拍子もないことをたくさん思い浮かべ、それをつなげたらどんな価値が生まれるかということをずっと考えるのが「創造」。脳の中で新しい組み合わせをつくること。タネがないと生まれない。タネは感覚から入っている。集中
・原理が違うものをくっつけてもだめ。評価の軸が違う
・人の認識を変えるということは一番難しい。生きている途中で認識が変わったら困る。なので、別の認識があるってことを「あれ?この可能性があるのかな」みたいな感じで、知らないうちにすり込めたらなあと思うんです。「自分で気づいた」
・視点を自由に動かすということが一番大事
・科学って方法的な仕事。方法を相手にぶつけると、結果が勝手に出てくる。「応報」
・学問を研究対象ではなく、研究方法っで分けるようにすればそんなにバラバラにはなりません
・分人民主主義。神経科学の知見にあるように人間は本来分割可能な存在
・いかにして死票が出ないようにするか。株主総会
・あらゆる議題について自分だけで判断できる人はいない
・投票システムより行政システムの方が重要
・入力のセンサー系と出力のモーター系をきちんと循環させるという話は、幼児教育の基本でもある
・「ガバメント2.0」行政はだんだんと自動化、分散化して、減らしていくべきである
・クオリア問題
・身体性の思想とは、中秋神経系を特別なものとして扱わないということ
・生物学じゃなくてフィールドサイエンスにすべき
・「育種」
・ローカルの合理性は、社会という全体の合理性には必ずしも合わない
・思い込みは非常に抜けにくい。嘘学
・科学の実験って実は、感覚世界を重視する。それを「実証」という。頭の中と感覚。イエズス会とガリレオ。イグナチオ・ディ・ロヨラ教会のだまし絵とピサの斜塔の実験
・正しい目的のためならいくら嘘をついても差し支えない?
・僕の世代は昭和二十年八月十五日に世の中がひっくり返ったのを知っている
・間違えないというのは容易なことじゃない
・頭で考えると煮詰まるから、感覚を開かないといけない

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2021年07月25日

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