【感想・ネタバレ】放射性物質の正体のレビュー

あらすじ

洗い流しても、ゴミとして焼却しても、放射能は消えてくれません。放射能を出す放射性物質は「どのような化学反応」に対してもビクともせず、全く変化しないからです。福島第一原子力発電所の事故によって、ヨウ素やセシウムに代表される大量の放射性物質がばら撒かれてしまった、放射性物質に汚染された土と水、野菜や食べ物……母国・日本のこうした窮状を憂いに思った米国在住の原子力を専門とする物理学者が、放射能のこと、放射性物質のこと、放射線被曝のこと、そして原子力発電所の中でいったい何が起こったのか、今後、放射性物質にどう対処すればよいか、これだけは知っておいてほしい情報を丁寧に解説した本です。テレビやマスコミで流される放射能に関わる情報は一過性で、どれが本当のことか、どれがウソなのか、なかなか見抜けません。いま私たちが持っている「誤解」や「誤った理解」を正し、今後に役立つ情報を提供します。

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Posted by ブクログ

福島第一原発事故によって飛散した放射性物質が問題になっていますが、
その放射性物質について、文系の人間でもわかりやすく説明してくれているのが本書です。
著者はロサンゼルス・ピアース大学物理学科教授。

いったい、被曝とはなんなのか?
放射線とはなにか?
どうして健康被害が生じるのか?
そういった疑問に答えるベく始まるのが、
なんと、原子の構成の説明からなんです。
そんな、ミクロの世界から始めなければ、
放射性物質については説明できない。

ウランを使う原子炉から、なぜ、
放射性物質のヨウ素やセシウムやストロンチウムが飛び出したか。
そして、どうして放射線が出るのか。
アルファ線、ベータ線、ガンマ線とはなにか。
すべてに、わかりやく答えてくれています。
ただ、やはり、本来、物理の難しい言葉でこそ説明がつくような
事象なので、ときどき読みながらもWEB検索してみて、自分なりに
この本の説明の捕捉に充てたりもしました。

それにしても、僕は思いましたよ。
この本に書かれているような説明を事故直後に大々的に国民に説明しなかった政府・東電は、
たぶんに国民のパニックを恐れたのだろう、と。
さらに、今もしないじゃないですか、説明を。
そして、自己努力で知識を得ないといけない。
そういうところが、政治って信用できなくないかなと思ったんです。

憲法の改訂もそうだけれど、「わかるやつだけわかればいい」
「勉強する奴だけついてくればいい」っていうのを、
あんまり都合のよろしくない問題についての政治家の態度に感じたりします。

「政治家に徳目を求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しい」という言葉があります。
「徳目」は「道徳」と考えて近いものだと思いますが、広辞苑に、
道徳は「法律のような外面的強制力を伴うものでなく、個人の内面的な原理。」と書かれている。
政治の世界はつまり、生き馬の目を抜くような世界で、抜け道とかグレーゾーンとかで
駆け引きをやっていくのが多いのかな、と思いました。道徳的な世界ではまったくないんですね。

でも、政治家に対して「わかるやつだけわかればいい」っていう態度を感じるのは、
テレビとかショービズの世界のいたれりつくせりに慣れてしまったがゆえの感じ方なのかもしれない。
してくれて当たり前、してくれない物事は重要ではないという感覚って恐ろしいです。
くれくれ君、してくれ君、それが当たり前君。

まぁ、ショービズに限らないですね、ガソリンスタンドで車の窓を拭いてもらうのが当たり前とか、
過剰なサービスを空気のように当たり前と感じてしまっている感覚があります。
いろいろなところにそういうのがありますよね。

…と、そうはいっても、放射性物質や被曝についての説明に関しては、
エンタメ式に政府がみなに丁寧に説明「してやる」べきだったかなぁと思うのですが。

それがなかったのですから、自分を守るため、自助努力をしないといけません。
それにうってつけの、ありがたさすら感じるのが本書でした。

怖がり過ぎずに怖がろう、というか、
恐怖やリスクはゼロではないし、ゼロにはならないのだけれど、
それらに捉われすぎないでいよう、というか、
そういったスタンスでこれからもいたいと思いました。

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2013年08月11日

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