あらすじ
故郷で悶々とした生活を送るなか、フレデリックに思わぬ遺産がころがりこんできた。パリに舞い戻ったフレデリックは愛をうちあけ、ついにアルヌー夫人から媾曳きの約束をとりつけることに成功する。そして、運命のその日、二月革命が勃発するのだった……。フローベールがみずからの青春時代に材をもとめ、多彩な登場人物を配して時代の精神史を描こうとした、自伝的作品にして歴史小説の傑作。
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Posted by ブクログ
上巻の前書きに書かれていた通り、第三章はすごい勢いで進んだ!
それまでゆるゆる読んでいたのに、最後の100ページは驚きの連続で、読むよりページを捲る指の方が早い!
革命の中で女性たちの本性が表れて、今まで一番最低と思っていたフレデリックの方がまともに見えた。
最後に宝物として残るのは友情ってことなんだろうか。
フランス革命勃発から1830年の七月革命、1848年の二月革命までの、フランスの歴史の流れを何度勉強しても覚えられない。
でも、ここを押さえておいた方が、もっとこの物語を味わうことができそう。
Posted by ブクログ
ついに…読み終えてしまった…!めちゃくちゃにおもしろくて、素晴らしい作品…
①ダンブルーズ氏の葬式における描写。
・フローベールの死に対するあっけない滑稽な描きかた。『ボヴァリー夫人』でも死人の扱いはさっぱり、淡々と扱う。死にゆくまでの肉体的な苦しみは丁寧に描くものの、死そのものに対する厳かな目線はない。
「小石まじりの土がかけられた。これでもう、だれひとりとしてこの男のことなど気にかけないのだろう。」
という文章に見られるように、死んでしまえばおわり、という達観した死生観がみられる。⇔だからこそ、生きている間の滑稽なまでの生にしがみつく動き、がおもしろい
・葬式の「形式」を批判。参列した人はみな葬式のことなんてこれっぽっちもわかっておらず、口ぐちに俗物てきな話ばかりしている。
②フレデリックのアルヌー氏化
フレデリックはアルヌー夫人に恋をし、はじめはそんなアルヌー夫人を妻としてもちながら外で遊び歩いているアルヌー氏を軽蔑している。しかし物語がすすみ、アルヌー夫人と思い通りの関係になれないと、むしゃくしゃして他の女性に手をだしてしまう。
まずフレデリックが手を出すのが、ロザネットだ。ロザネットは、もともとアルヌー氏の愛人だった。フレデリックはアルヌー氏への当てつけの意味もあり、ロザネットと関係を持つ。
その後も故郷のルイーズや、上流階級のダンブルーズ夫人など、さまざまにタイプのちがう女性にあっちへこっちへ気がおもむくままに手を出す。結局、四人の女性の間で身動きが取れなくなるが、フレデリックが最後に出会い、最後まで想いを寄せていた相手はアルヌー夫人であった。これはアルヌー氏も同じである。
しかし決して、フローベールはそんなフレデリックやアルヌー氏を非難しているとは思えない。
「どれほど心を開いたうちあけ話でも、相手にたいする気がね、思いやり、憐憫の情などから、かならず口にだせないことがあるものだ。相手の、もしくは自分の心のなかに懸崖や泥沼を見いだして、それ以上さきへ進むことができなくなる。話したところでとうてい理解してはもらえまいという気持ちになる。どのようなことであれ、それを的確に言いあらわすのは至難のわざだ。人と人との理想的な結びつきがめったに見られないのも、そのためである。」
から見られるように、人と人が一対一で完璧につながり合うことなど不可能であるのだ。フレデリックも、アルヌー夫人に寄せた恋心は本物であるが、相手が既婚者なため理想的な関係にはなれない。ほかの女性でも、ここはよくてもあそこは欠点だというように、完璧に好きになることができない。それが人間関係の当たり前のことだと、フローベールは理解していたのだろう。
それでも、最後にはアルヌー夫人と再度恋心を確認し合う、しかしその時にはアルヌー夫人の白髪をみて、フレデリックは一瞬幻滅してしまう。恋というもののもろさを暴き出し、そして最後にはデローリエとふたり、まだ恋というものを知らなかった、夢見ていたころ、友情こそが第一だったときを思い出して「あのときがいちばんよかった」と語り合うのだった。