【感想・ネタバレ】空旅・船旅・汽車の旅のレビュー

あらすじ

愛車のルノーを駆って都内を走行中、雨やどりをする女子高校生に「乗りませんか?」と声を掛けてしまう著者。デコボコの国道、国鉄の花形・蒸汽機関車、振り袖のスチュワーデス……。1950年代の交通文化が甦る、乗り物の楽しさ満載の爽快なエッセイ。文庫化にあたって、悪路の東北を自動車で一周した「一級国道を往く」の後日談、「二十二年目の東北道」も収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

乗り物好きな阿川弘之氏の、旅のお話集。
紀行文にとどまらず、戦後の日本の交通に関する興味深いレポートも満載。
一章ごとに写真が載っていて、「手前にいるのが著者」などとキャプションが添えられている。
誰が撮ったのかな?編集者でしょうか?奥様でしょうか?
ユーモアあふれる語り口で、昔懐かしくもあり、大変勉強にもなった。

『一級国道を往く』
日本の道路はひどい!
1958年10月、一級国道を使っての東北の自動車旅に、筆者夫妻と編集者カクさん、運転手スケさんの4人でトライ。
あまりの悲惨さに、実体験が書かれているだけなのに、声を出して笑ってしまった。

『機関士三代』
松井さんちの長男3代の国鉄職員のリレー手記という形をとっている。
日本が鉄道にどれだけ力を注いでいたか(だから道路がひどいのだ)、時間通りに運行される鉄道交通の陰に、乗務員のどれだけの苦労があるかを知る。
3代の認識が時代と共に変わっているのも実感。

『スチュワーデスの話』
正確なところはぼかしてあるが、多分、戦後の日本航空第1期のスチュワーデス(当時はこう呼んだ)の話を聞くという形。
そういえば、振袖姿が売りだった。

『おせっかいの戒め』
突然の豪雨が毎日のように襲った時期・・・
自分だけ安穏に車に乗っているのが悪いような気がして、雨宿りの人、ずぶ濡れの人に、つい「乗りませんか」と声をかけてしまう。
しかし、今で言う、モヤモヤした気分になることばかりだった。

『ホノルルまで』
(1955年らしい)
阿川氏夫妻は、アメリカ留学のため、太平洋の定期航路のアメリカ客船でハワイを目指した。
船内では西洋のマナーで振る舞わなくてはいけない。
慣れぬレディーファーストを演じ、疲れる阿川氏。
狭い船室の中だけ「日本帝国」だ。
人間観察が面白い。

『アメリカ大陸を自動車で横断する』
(1956年頃。アメリカでライセンスを取ったらしい)
州ごとに交通ルールが微妙に異なり、お巡りさんに捕まりそうになる。

『ゴア紀行』
一緒に東北自動車の旅をした編集のカクさんから、今度は海外でルポを書きましょうと言われ。
行きは鉄鋼関連企業の商社マンと共にチャーター便で。
帰りは鉄鉱石運搬用のボロ船で、24日かけてゴアから帰国した。
何もすることがなく、ノイローゼになりかける。

『二十二年目の東北道』
一級国道の自動車旅から22年、メンバーを2代目スケさんに入れ替えて、さあどんな変化を遂げたのか、また東北の旅に出た。
全て舗装済みの快適な道路、解説の関川夏央氏も書かれている通り、紀行文は困難な旅であるほど読者の共感を呼びやすい・・・あまり笑うところもない旅であった。
一つだけ、長距離トラックのベテランドライバーのセリフが面白かったので、ネタバレになるけれど載せてしまう。
「昔は道悪ぐて走(はす)れなかった。今は渋滞で走れねえ。走(はす)れねえのは今も昔も変わらねえ」

0
2022年08月13日

Posted by ブクログ

戦後、復興していく時代の日本の交通事情を、いろいろな形から描いた物。今の交通事情と比べながら読むと面白い。

0
2015年01月20日

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