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Posted by ブクログ
これまでに何度となく本能寺の変に関する本は読んできたので、もういいんじゃないかと思っていましたが、作者が「利休にたずねよ」「火天の城」の山本兼一であり、しかも昨年秋か冬に亡くなったということも知っていたので、読んでみました。
長い戦国時代を統一した信長については、その強烈な個性により、多くの人物が「信長死すべし」と願っていたでしょうが、その中でなぜ忠誠心厚く、信長に最も信頼されていた光秀が討ったのか、その動機については諸説あり、ここでは正親町帝(おうぎまちてい)の陰謀説に則った話でした。
つまり、この日の本の国を支配しているのは帝であり、朝廷である。しかるに、信長はその帝からの官位を全く受けず、朝廷の意を組まぬばかりか、自らが神となってこの国を統治せんとしている。しかも日ごろの言動を聞いていると、いずれ朝廷を亡きものにしようと企てているのは明白。誰ぞ帝に替わって成敗せよ!。
という正親町帝の勅を光秀が拝受し、皇軍として信長を討つという話です。
しかしもちろん、光秀が皇軍であったという史実は見つかっておらず、その矛盾を作者の山本兼一は、朝廷側の巧みな光秀説得で、「皇軍」であることを直接言葉にせず、されど皇軍と思わせる工作を行い、見事光秀をその気にさせた、という話で纏めています。
その朝廷の工作が、あの有名な「ときは今、天(雨)が下しる 五月哉」の句で、これは一般的には光秀が本能寺の変の前に詠った連歌の初句とされていますが、これが帝からの勅であったという話になっておりました(光秀の一族である土岐氏が今から、天下を治めよ、との意味)
帝の勅を受けたと確信した光秀は、見事本能寺で信長を討伐しますが、ご存じのように信長の亡骸が見つからない。物的証拠がないため、万が一信長が逃げ延びた場合のことを恐れた朝廷は、光秀と約束していた「征夷大将軍」の官位を与えることをしなかったばかりか、「勅など出していない」と光秀を突き放すことに。
このへんの光秀と朝廷とのやり取りは、朝廷のおとぼけぶりが見事で、「朝廷には鵺がいる。いずれ成敗せねばならん」と言っていた信長が正しかった、と泣く光秀が誠に哀れであります。結局皇軍とは認められなかった光秀の元には、誰も援軍として馳せ参じることもなく、中国大返しで帰ってきた秀吉軍に、あっけなく敗れて散っていきます。
登場人物としては、正親町帝、明智光秀を始め、徳川家康、近衛前久(これが光秀説得の首謀者)、吉田兼和(これが朝廷おとぼけ役)、里村招巴(これが帝からの連歌を光秀に渡す)等が登場し、帝の信長への怒りや、家康の信長への恨みや、前久の光秀へのドキドキ説得工作や、主君を裏切る光秀の心境、朝廷に裏切られた光秀の心境など、見事に描かれていて、読み応え充分。本能寺の変を知り尽くしている人にもお勧めできる内容でした。
Posted by ブクログ
「本能寺の変○○(読めばすぐ分けるけどあえて伏せます)黒幕説」を元にした時代小説。帯には「『利休にたずねよ』を軽々と超えて見せた。」とあるけれど、読んでみてあまり響かなかった。
「黒幕説」に対して懐疑的なこともあるけれど、それ以上に、信長や光秀をはじめとする登場人物たちの描かれ方が平板すぎて感情移入しにくいし、「この説こそ本当かも」と思わせられるだけの迫力を感じなかった。これまで書かれつくしてきた感もある「本能寺の変」に挑戦したくなるのは、時代小説家としての性かもしれないけれど、もっと大胆に斬り込んでほしかったと思う。
Posted by ブクログ
この私がこれを読んだ。
ある意味、自画自賛。
殿が殺される話ということが分かっている前提の本を読むなんて?!
何が起こった?!>じぶん!
えぇと、読みました。
『火天の城』 を書いた筆者ですからね。これは良かったからね。(これも最後は殿の死で終わるんだけどさ……)
興味があったので読んでみました。
率直な意見としては、
内裏が黒幕だったとしても、サルは絡んでいると思うんだよ? (なのにサルが登場しないって?!)
でしょうか。
あ、狸も黒かったです。
でも、狸は事を起こす度胸を持ち合わせていなかった。ここの狸は長男を切腹させられたことを根に持ってる狸だった。
金柑も謀反を起こす度胸はなかったんだけど、内裏に唆されてはね……。
と、言うところ。
ここの殿は傲岸不遜を極めてる。
すごい悪役に徹してる。
もうちょっと優しくても良かったんじゃない? と思わないでもないけれど、この話にはそうじゃなくちゃいけなかったかもね。
まぁ、それなりにおもしろかったですよ。
内裏に注目しているところが。
当時の内裏ってこんなカンジだったのかなぁ? と思わないでもなく。
最近、なんだか、『これを待ってたんだぁ!』と言える本、読んでないな……。