あらすじ
2014年9月27日午前11時52分、御嶽山が、突然、水蒸気爆発。
9月最後の土曜日、素晴らしい好天と絶好の紅葉のシーズン、そして昼どきの最もゆったりした時間帯、多くの登山者でにぎわっていた御嶽山が、突然、大噴火、多数の死傷者が出るという大惨事となってしまった。今回の噴火とはなんだったのか―。
生還した登山者たちの証言を中心に、救助現場からの報告と研究者による分析を交え緊急出版!
第1章「ドキュメント御嶽山の10日間」
9月27日から10月6日までを時系列にて詳細記述。
第2章「七つの証言」
実際に被災した遭難者たちの話、特に生死を分けたその瞬間を掘り下げた内容。
第3章「科学的考察」
信州大学山岳科学研究所の専門家たち、火山学、防災危機感理学、気象学の分野から分析(降灰、雪崩、土石流等)。
第4章「救助現場からの報告」
自衛隊、岐阜県警山岳警備隊、静岡消防局、災害派遣医療チーム、山小屋オーナー、
そして「サバイバーズ・ギルト」(生存者の重荷感)の対処法を災害心理学の立場からも解説。
電子版では、巻頭に災害現場の口絵が8ページ、続いて地図が掲載されます。
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Posted by ブクログ
昨年秋の「御嶽山噴火」にまつわる証言を『様々な方向』から集めた一冊。
『様々な方向から』と強調したのは、いい意味でも悪い意味でも。地学的な目線から見れば「規模の割には多くの目撃者と被害者のいた自然災害」ですがその割にはその災害の詳細は語られない。一方、にわか登山家の端くれとしてその「語りたくない気持ち」も少なからず理解できる。
その中で、あえて語って下さる人からの証言を、記憶の風化しないうちに記録した。それは非常に価値のあることで、そこで語られていることにどこか統一性というか方向性に欠けることもある意味では利点だとも言える。「こうしておけばよかった」という結論がなかった、少なくとも半年やそこらで正解が見いだせるほど簡単な災害ではなかった、それを間接的に証明する一冊だと思う。
この統一感のない一冊を「サバイバーズ・ギルト」に関する項で締めくくったのは、非常に興味深かった。以下、その項からの引用を以て、このレビューを締めくくります。
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死者への罪の意識を抱くというのは、極めて人間的で健全な精神の働きによるものだと思うんです。自分自身との関わりのなかで亡くなった人を悼む気持ちは誰でも持つものです。あのとき、こうしていればと悔やむ気持ちもあるでしょう。それが時間とともにゆっくりと薄れていくのが自然なのではないでしょうか。ギルト=罪という言葉は、ネガティブなイメージがありますが、私はサバイバーズ・ギルトは一種の哀悼の感情なのだと思っています。
-----以上、p.233より引用-----
Posted by ブクログ
タイトル通り。感情的になることなく、淡々と起こったことを記録している第一章「ドキュメント 御嶽山の十日間」から始まり、「七つの証言」「科学的考察」「救助現場からの報告」の四章で構成されていて、読みごたえあり。何かと言うと犯人探しやスケープゴートを探しがちな報道とは違い、まさに知りたいことをまとめてくれた本だった。生死を分けたのは「運」なんだなー。誰に降りかかるかはわからない。科学的考察の「防災学から考える」で平山教授が書いていた「登山者には登る山の歴史を紐解いてみることをお勧めしたい」はすべての防災に繋がる言葉だなと読み終えてしみじみ感じた。最後にサバイバーズ・ギルトについての対処法まで掲載されていて、感心した。