あらすじ
初心の方がお稽古場で疑問に感じることなど100項目を掲げました。
「なぜ」という疑問が、「なるほど」という得心に変わる話柄が豊富に盛り込まれています。
【お話の流れ】
入門と初稽古
お茶室拝見
割稽古
風炉の薄茶平点前
炉で炭手前
小習の精神
拝見と千家十職
年中行事とお菓子
口切と点て初め
茶事のお稽古
茶事の心得とおもてなし
見立てのたのしみ
【100項目のなかから】
●畳の縁は身分をあらわす大切なしるしでした。
●畳を四等分して道具の位置を考えます。
●ぎっちょう炭の名前の由来は?
●荘物のお点前は一種のパントマイムです。
●「千家十職」をおぼえておきましょう。
●十一月の炉開きに「亥の子餅」を食べるわけ。
●茶壺のひもは解けないように結びます。
●末客を「詰」、亭主の助手を「半東」という理由。
●濃茶は三口半で頂きます。
●見立てには選んだ人の目があらわれます。
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Posted by ブクログ
著者は昭和3年生まれ。裏千家14代無限斎(淡々斎)、15代鵬雲斎に学び、50年もの間、自身も稽古場を構えて茶道を教えてきた人です。
本書は、『茶の湯稽古場日誌』という別の本に、一部、他からの抜粋を加えて再構成したものです。茶の稽古に役立つあれこれを100の短文で指南します。
裏千家の点前自体の話も含まれるため、他流であったり茶道と関わりがなかったりといった人にはちょっと、と思われる部分もあります。
ただ、全体としては、茶道の歴史や道具について、また、もてなしに向かう心構えといった話も多く、個人的にはとてもおもしろく読みました。茶道具を作る千家十職や、和菓子の話、季節の行事の由来など、知らない話もあって勉強になりました。
稽古にあたって知っておくと便利な豆知識的なものもありますが、もっと深い「知恵」も含まれているようにも感じます。
お茶の「先生」として半世紀を過ごしてきた人の「奥行き」を感じさせつつ、「当たり」が柔らかい。気さくな先生のお話をふむふむと聞いているうちに知識が得られるといった体裁です。
14代宗匠の「お茶は何のために稽古するのか」との問いに、恥をかかないためであり、自分自身の修行であると思っていた著者。宗匠の答えは「人様に恥をかかせないように稽古するのだよ」でした。
人をもてなすためにはまず自身が心身ともに健康でなければならず、人の心に添っていく気遣いが大切というところでしょう。
なかなか一朝一夕ではいかないところではあり、そのための稽古でもあるのでしょうね。
今年3月に出た新刊だったので、読み終わるまで著者が故人とは気づかす、5年前に亡くなっていた旨の添え書きを読んで、何だか胸を突かれました。
凛としつつもどこか慕わしく「かわいらしい」雰囲気もある先生だったのではないかなぁ・・・。
*井伊直弼の『茶湯一会集』の引用があります。井伊直弼といえば安政の大獄・桜田門外の変のイメージが強いですが、茶人としても一流だったようで。こちらは岩波文庫でも出ているようなので、機会があったら手に取ってみたいと思います。