【感想・ネタバレ】あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ


プロレタリア文学の金字塔と言われた
小林多喜二の「蟹工船」を読んで
すっかり打ちのめされたのも束の間

蟹工船が男の世界であるなら
女の世界でも、悲惨な労働環境があったのではないかと
単純に思ったのがきっかけ

そう言えば、昔TVでやってた「あゝ野麦峠」
殆ど内容は覚えてないけど
幼心に、そこはかとなく漂う悲惨さがあったなぁーと



開国間もない、明治から昭和初期にかけて
富国強兵の国策の元
有力な貿易品であった、生糸の生産を支えた
工女達を描いたノンフィクション作品

諏訪湖を中心に、次々と建設された製糸工場
地元である長野を始め、近隣の県からも
多く糸引き工女が集められた

北アルプスの向こう側である
飛騨の貧しい農村からも
口減しの為、多くの若い女達が
野麦峠を越えていった

毎日、10時間を超える労働環境は
時間もさることながら
繭を茹でる釜は、季節を問わず灼熱で
立ち上る蒸気が、水滴となって落ちてくるため
常に、全身びしょ濡れの状態

体調を崩す者が後を絶たず
迎えにくる家族を待たずに
息を引き取る者も多かった

「諏訪湖に工女が飛び込まない日はない」
と言われるぐらい
現状に耐えられない工女も、一定数いた


本書が、ノンフィクションの金字塔と言われる所以は
工女の悲惨な労働環境を描いたのみならず

当時の時代背景や
「製糸業」が「生死業」と言われるぐらい
博打的商売だったのは
アメリカの生糸相場変動が激しく
真面に影響を受けてしまうため

また、工女を監督する検番や
裏方で操業する工男達の仕事環境

低賃金で工女を働かせてる、工場主達も
高額な繭の原価と、生糸相場の変動
工女の確保に如何に苦労していたから
などなど

残された資料だけでなく
5年の歳月を掛けて
実際に製糸工場で働いていた
現存の人々に取材して廻り
多面的な角度から、緻密な作品に仕上がってるところ

映画やドラマでは
工女達の劣悪な労働環境や
使い捨て同然にされるところばかりが
描かれているようですが…

正直、そこを期待して読み始めたものの
途中から様子が違って来て
何だか調子が狂ったまま読み終わって
一体何だったんだ?感が押し寄せて来たけど

この文を書き始めたら
実は、とても完成された作品であるコトに気づく 笑

今まで経験したことがない
読後感を味わった作品だな


#あゝ野麦峠
#ノンフィクションの金字塔
#山本茂実
#読書好き


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2020年08月27日

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