【感想・ネタバレ】会社は社会を変えられる ─ 社会問題と事業を〈統合〉するCSR戦略のレビュー

あらすじ

“グーグル”の逆説から見えてきた、未来をつくる企業のかたち。
政府や市民セクターが解決できない社会課題に対して、期待される企業のはたらき。
あなたの会社はいま、何を求められているだろうか!?

日本企業のあいだでも企業の社会的貢献(CSR)は浸透しているが、
その成果は報告書などで紹介されるものの、
多くがマーケティングやリクルーティング、福利厚生の一環にとどまっているのが実情である。

「自らが社会課題をどう設定するかという視点に立たない限り
日本の会社のCSR活動は“実行することに意義がある”というレベルから
脱却できないだろう(小宮山宏)」

「大企業のリソースとCSR的な発想を持った人が結びつくと、
大きなパワー、社会を変える力を発揮できます。
CSR部門にいなくてもCSRは可能です。(岩井克人)」

他社との差別化、自社のイノベーションにつながる「攻めのCSR」につなげるにはどうしたらよいのか。
東京財団「CSR研究プロジェクト」企業調査から得られた知見をもとに、
戦略的にCSRに取り組むことで本業におけるイノベーションにつなげている
「社会を変えていく会社」のあり方を考える。

≪CSRベストプラクティス掲載≫
損保ジャパン、伊藤忠商事、武田薬品工業、キリン、電通、曙ブレーキ工業


【目次より抜粋】
◆第1部 なぜいま、会社の出番なのか
◆第2部 社会を変える会社はどこにいるのか
◇対話型 損保ジャパン
広く社会に「課題」を聞き 保険の持つ「相互扶助」の原点をCSRにいかす
◇ボトムアップ型 伊藤忠商事
何に困っているかまず耳を傾ける 現場主義から生まれるCSR
◇グローバル型 武田薬品工業
最先端の対話に自ら飛び込み「社会課題」を特定 世界標準のCSRを浸透させる
◇戦略型 キリン
ブランド戦略と一体化 「社会課題」の解決が企業価値を高める
◇ラボ型 電通
みんなの思いを集めて「社会課題」を解決する 本業につなげる制度がダイバーシティを実現
◇継続型 曙ブレーキ工業
とにかく続けることで「社会課題」を強みに変える BtoB企業におけるCSR
◆第3部 会社の存在意義とはなにか

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ギリシア、ローマ時代から19世紀末までの世界平均寿命は、25歳。20世紀に入っても31歳。2011年に70歳。



幸せな加齢の5条件

栄養、運動、人との交流、新概念への柔軟性、前向き志向



日本企業のCSRレポートは、「我が社を取り巻く社会にはこういう課題があり、それは我が社のこの事業と関連しているから、こういう事を実践するのだ」という能動的に統合性が語られる事が少ない。



企業調査をしてみると、会議で検討を重ねた企業の数よりも、具体的に実行している企業数の方が多い。これは、各社のCSRが「なぜ、どうして、今我々が?」という検討がないがしろにされている証拠。



5つのCSR重点課題

安心安全の提供
地球環境対応
人権尊重
女性地位向上
貧困対策


ISO26000は、解決すべき社会課題を、あらゆるステークホルダーの観点から、「中核主題」とその細目である「課題」に分けて整理している。



「企業には徳と力が必要。」損保ジャパン後藤康男



損保ジャパンでは、人事考課で使用するシートに「社会的責任への取り組み」の項目があり、上司と部下との対話において必ず採り上げるよう設計されている。



損保ジャパンの策定プロセス

1.ISO26000に基づく分析、アンケートの実施(重点課題分析)

2.有識者ダイアログの開催

3.CSR「5つの重点課題」の特定



検討プロセスを明示する事で、「今後もステークホルダーとの対話を継続して行い、会社の取り組みを見直していきます」と表明している。



社会の課題と解決への期待は常に変動している。



ロングレンジ(5-7年)のロードマップに基づいたKPIを策定する事。KPI作りのポイントは、

1.測れるか公表できるかを問わず、あるべき姿の旗を立てる。

2.データの取り方が判らないため、初めから全て用意できないが、進化するKPIでよい。

3.KPI自体のPDCAを回していく事。1回作ったら終わりではなく、ぶれずにしなやかに時代や社会の要請に応えるものにする事。



CSRは、企業価値を高めるものと守るものに二分できる。



「社会課題の解決への貢献」と「事業活動への貢献」を統合させる。



武田薬品のタケダイズムの中心には、「誠実」「公正」「正直」「不屈」があり、その周りに「ダイバーシティ」「チームワーク」「コミットメント」「透明性」「情熱」「イノベーション」がある。



武田のCSV本部には、1. CSV推進部、2.ブランド戦略部、3.コーポレートコミュニケーション部があり、「ブランドを基軸とした経営の実現」をミッションとしている。



「みんな」の多様な構成

聴覚障害者:36万人

視覚障害者:31.5万人

身体障害者:366.3万人

知的障害者:54.7万人

色覚障害者:319万人 (日本人男性の5%)

外国人登録:213万人

LGBT:666万人(出現率5.2%)

上記合計:1,686.5万人 (総人口の13%)

65歳以上高齢者:2,941万人(人口比41%)



曙ブレーキの統合報告書は、重要な読み手として社員を強く意識している。社員が会社の事を自分事として考え、行動できるよう、その手引きとして作られている。



障害者雇用率について、日本全国の平均実雇用率は1.76%、企業規模1,000人以上の企業でも1.98%。法定雇用率2%を達成している企業割合は42.7%。



法人の人格が社会から与えられている以上、会社はそもそも社会的な存在である。社会が「モノである会社」に人格を与える理由は、社会に何らかのプラスを与えてくれると考えているから。



会社が社会貢献を実現するには、「利益」を狭く、短期的なものとせず、広く、長期的なものと認識する事から始める。

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2015年07月16日

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