あらすじ
カウンター七席、テーブル五つ。下町の片隅にある小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。シェフ三舟は、フランスの田舎のオーベルジュやレストランを転々として修業してきた変人。無精髭を生やし、髪を後ろで束ねた無口なシェフの料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。常連の西田さんが体調を崩したわけは? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか? 絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ!
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ミステリを読みたいけど、殺人のような重い事件はちょっと…と言うあなたに。素敵な料理と「日常の謎」を楽しめる、こちらの一冊はいかがですか?
舞台は下町にある小さなフレンチレストラン。ここに持ち込まれる様々な謎に挑むのは、無精ひげを生やした店長兼料理長の三舟シェフ。フランス修業時代、その名前と風貌からサムライの子孫と呼ばれた強面シェフが、美味しい料理と気の利いた名推理を披露してくれるんです。
作中、聞き慣れない料理の名前も出てきますが、そこは語り手、新人ギャルソンの高築君がお腹の空く描写と共に解説してくれるのでご安心を。なかでもシェフ自慢のヴァン・ショー(ホットワイン)は絶対に飲んでみたくなるはず!
なじみの店に来たかのような雰囲気と、穏やかな結末に「ほっ」とできるステキな短編集。さぁ、どうぞ召し上がれ。
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Posted by ブクログ
事件や出来事の内容は日常的なものが多いため重すぎず、さらっと読むことができるミステリー小説。
登場するフランス料理については調べながら読み進めましたが、文章だけでも食欲を唆るシーンが盛りだくさんで、実際に「パ・マル」へ行き、三舟シェフと志村シェフの作るお料理を頂いてみたくなりました。
「オッソ・イラティをめぐる不和」「ぬけがらのカスレ」「割り切れないチョコレート」の3作が特にお気に入りです。
「オッソ・イラティをめぐる不和」では、
出てくる夫婦喧嘩の原因から、自分も聞く耳半分の時があるな、気をつけなくてはと気が引き締まり…。
「ぬけがらのカスレ」では、
エッセイを書く作家のキャラクターが登場し、一部執筆されたエッセイを作中に読むことができましたが、これがなかなか面白い。
最後の「割り切れないチョコレート」では、
ここまでの短編たちがサクサクと読みやすかったため、良い気分転換になる作品だったと思っていたところ、終盤で胸に突き刺さるお話でした。
登場するショコラティエが作るチョコレートのコンセプト、その想いと、作るきっかけになったであろうお母様の息子の夢を応援したい想いが何とも切ない。
全体を通し、心が満ちる作品でした。
次のシリーズも読み進めたいと思います。