あらすじ
「アメリカの黒人」はどのようにして誕生したのか?奴隷解放ののち、苦難の道を経て、彼らはアメリカに留まりアメリカ社会の一員たることを選択する。著者はその誕生の時の立ちもどり、黒人たちのさまざまな「物語」のなかに彼らの「共生」の夢を探っていく。しかし真の共生はいまだに実現していない。黒人文化などさまざまな異文化が対等につくりだす「多文化」のアメリカは可能なのだろうか?著者は歴史の声に耳を傾けながら、そう問いかける。
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Posted by ブクログ
アフリカから奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人が、アメリカという国家の中にあるが、白人と同等の権利を得られないことでアメリカ人になることができず、「アメリカの黒人」として存在せざるを得ない、ということについて、「アメリカの黒人」の誕生の様子を南北戦争前後の時代の文学作品から分析したもの。ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』や、ヘイルの『リベリア・またはペイトン氏の実験』などが取り上げられている。
奴隷解放論者は、奴隷を解放することには賛成だが、「アマルガメイション」は望んでいない、という事実が驚きだった。「奴隷を解放すること=黒人と共生すること」とは絶対になっていなかったということがよく分かった。リベリアという国がアメリカの黒人移住計画の地であったことを知ったのも驚きだった。さらに、『ブレイク・またはアメリカの小屋』を書いたディレイニーが、現実の状況に直面しながら活動の方向転換をしていったことや、白人の黒人に対する心理など、興味深い部分がたくさんあった。(10/08/04)