【感想・ネタバレ】創造的福祉社会 ――「成長」後の社会構想と人間・地域・価値のレビュー

あらすじ

「限りない経済成長」を追求する時代は終焉を迎えた。飽和した市場経済のもと、われわれの社会は「平等と持続可能性と効率性」の関係をいかに再定義するべきか。新たな価値原理とは、人間と社会をめぐる根底的思想とは、いかなるものか。再生の時代に実現されるべき社会像を、政策と理念とを結びつけ構想する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は、現代が市場経済の成熟化、飽和化した「第三の定常化の時代」と位置付けた上で、生産への寄与や拡大・成長といったこととは異なる次元での存在そのものの価値が求められるとし、人間一人ひとりが潜在的にもっている可能性や創発性が実現されること=「福祉」であると理解する。

また、「成長」のベクトル(時間優位の時代)から解放され、各地域の風土、伝統、文化といった固有の価値や多様性に関心が向かう時代(空間が全面にでる時代)となり、グローバル化の先にローカル化というより究極的な構造変化が存在するとして、限りない市場経済の拡大や資源消費の無限化という方向ではなく、できる限りローカルなレベルから「地域において循環する経済」を積み上げていくという姿を実現していくべきと主張する。

このような時代において今後求められる新たなセーフティネットとして、①人生前半の社会保障(例えば教育への公的支出増)、②より格差が拡大しやすいストックに関する社会保障(住宅保障の強化や土地課税、公有地の活用等)、③コミュニティそのものにさかのぼった対応(対象者をコミュニティそのものにつないでいくこと…様々なケアやコミュニティ内の生業的な仕事につないでいくこと等)を挙げている。

歴史や哲学にまで話が及び、著者の世界観を理解するのは簡単ではないが、その言わんとするところは何となく自分が感じていることと同じ方向のような気がしており、肯定的に読んだ。

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2011年08月03日

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