あらすじ
作家・荒木スミシを長年の苦悩から蘇らせたのは、テラという少年の手紙だった。しかし、それは同時に新たな苦悩の始まりでもあった。テラこそ、彼をどん底へと誘ったある連続殺人犯の息子だったのだ。――謝罪とは、赦しとはなにかを問いかける、酒鬼薔薇事件の未来を小説化した挑戦作。
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Posted by ブクログ
本屋さんで表紙買い。「酒鬼薔薇事件の未来」という帯の文言に惹かれました。荒木スミシという作者が、ひとりの少年から手紙をもらいます。少年は、作者が以前書いた小説を読み、救われたと書いています。作者は少年と交流を深め、徐々に恢復していきます。少年も傷ついていますが、作者も以前書いた小説――少年が、そのおかげで救われたと書いた小説――が原因で傷ついているのです。読んでいて、カウンセリングセッションを目撃した気分になりました。きわめて私的な、同時に普遍的な、魂の恢復劇だと思います。
作者は少年の中に、失われた過去の自分を見ています。過去の自分を抱きしめることで、未来へ向かって踏み出せる。そういうメッセージが込められているように感じました。
余談ですが、荒木スミシという名前はアラン・スミシーからとったのではと思い、調べたところやはりそのようです。アラン・スミシーは映画製作中に監督が降板した場合や、監督の意図しない編集が行われた場合などに、監督としてクレジットされる偽名でした。荒木スミシという人は、ほかの誰も書かないことを、この名前によって書こうとしているのかもしれません。