あらすじ
「高度成長期の歪みがヘドロのように
堆積する街・川崎。大事件の背後に横たわる
戦争の影を追う、熱き昭和の刑事たち。
刮目して読め!」
西上心太さん(書評家)
「林立する風俗店、汗と油まみれの労働者。
ヤクザと警官、そして。
泥臭く血なま臭く痛切な人間臭さに痺れる!」
藤田香織さん(書評家)
《暗殺者》は残留日本兵なのか!?
高度経済成長期の日本に紛れ込んだ
ひとつの異物が、裏社会のみならず、
警察、経済界、政治家をも震撼させた――
書評家激賞! 感涙必至!!
\川崎の目利き書店員も大絶賛!/
「昭和の川崎を舞台に戦争の傷跡をめぐって
泥臭い捜査で真犯人を追い詰める刑事たち。
次々に起こる銃殺事件に果敢に挑む
彼らの姿に引き込まれた。」
(有隣堂アトレ川崎店 大嶋慶子さん)
「人と人との絆が今よりもずっと濃厚な時代の
川崎で組長殺害から始まった連続殺人。
謎が謎を呼び、事件収束にいたるまでの
追いつ追われつの手に汗を握る追跡劇。
淡々と、それでいて一人一人の刑事たちの
矜持をもった熱い捜査にしびれます。」
(丸善ラゾーナ川崎店 村尾啓子さん)
グランドキャバレーのプレ・オープンに
不意の闖入者が。
男は瞬く間にボディガード三人を屠り、
暴力団幹部と会長を殺害して逃走した。
プロの犯行だった。
神奈川県警川崎警察刑事一係のデカ長、
車谷一人は捜査への協力要請を受ける。
被害者が同じ期間に
フィリピンへの複数渡航歴があることが
判明する一方、事件は新たな犠牲者を生み、
拡大の一途をたどる。
敗戦から高度経済成長への昭和史の
大きなうねりのなかで取り残された者たちの
怒りと悲しみが、いま噴き出した!
警察小説の名手が、
シリーズ最大のスケールで描き切る
力作長篇ミステリー!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ノスタルジックな昭和の時代を背景にした警察小説シリーズの新作が久々に登場。そう、新刊ほやほやの現代の作品なのだが、しかしこの川崎警察シリーズは、昭和の川崎を背景としたノスタルジック刑事小説なのだ。当時のドラマで言えば『特別機動捜査隊』みたいに。『特捜最前線』みたいに。
シリーズ第三作の本書は、4名の射殺と言う派手なバイオレンスで幕を開ける。いわゆる作品を通して緊張をもたらしている暗殺者ものなのだが、それ以上にもちろんこのシリーズということで、昭和のこの時代に材を取ったその意味が物語に魂として込められている。
戦後昭和という時代の舞台設定というには、そこに何らかの意味があるはずで、その期待を本シリーズはこれまでもそして本作も裏切らない。とうに去って行った昭和の時代に生まれ、長く生きて育ってきた自分(そして作者自身も近似値の年齢)は、その長く深い光と闇の時期を肌感覚で覚えており、およそ忘れ難い記憶が今でもあまた呼び覚まされる。
そんな記憶の一つが悪夢のように蘇るとこんな作品になるのかもしれない。<戦後>という言葉が日常的に使われていた時代。戦争を経験したぼくらの両親の世代。そんな時代と川崎という言わば工場と労働者の土地に焦点を当てつつ、謎の殺人者を追う捜査機関のつわものたちを描いた一作。
今ではその真の姿さえ隠れがちな、本当の意味での悪党たち。その周辺に見え隠れする、戦後から息を吹き返してきた悪党たちや、当時戦争被害に踊らされた者たちの、戦後の身の立て方は、それこそ実に様々だったに違いない。例えば本書のように犯罪の影が見え隠れするかたちで、人と人とが裏切り、恨み、あるいはいとおしむなど、それぞれの未来への矢印に従って、光と影が交差する時代と街とを走り抜けようとしていたに違いない。
ときにはどん底から身を立てた者もいれば、闇の世界に身を投じるしかなかった傷だらけの獣めいた輩も、あまた存在したに違いない。
そんな昭和史に材をとって善悪の魂を重ね描く本書は、川崎警察の捜査官たちを軸にして、戦後犯罪に潜む、戦争との切っても切れぬ繋がりを示唆しつつ、昭和の闇を描き、暴き、裁いてゆく力作となっている。
今のところ、本書で三部作のかたちを成しているが、いずれも優れた作品であるように思う。現代の作家たちがなかなか抉り切れない戦後の闇をどこまでもリアルに描こうと足掻く最後の世代であるかのように、作者のペンは本書でも躍動する。歴史考証を重ねた上での力作と読み取れる努力の塊のような作品である。
昭和後期というあの時代を描くにある意味妥当と思われる世代の作者が、戦争の陰影から相応に遠のいた現代、そこに生きる世代に、今という危機を、ある意味全力でぶつけてみせた観のある本書は相当な力作であると思う。少し前の時代の日本を、犯罪捜査小説という形で振り返りつつ、さらに現代をも照射してみせているこのパワフルな作品に、一人でも多くの若い読者に触れて、知って、そして、読んで頂きたく思う。